部下への注意が強くなりすぎてハラスメントと受け取られてしまった、感情的なやり取りでチームの雰囲気が悪くなってしまった。こうした相談は、人事担当者の元に年々増えています。アンガーマネジメント研修は、こうした「怒り」にまつわる職場の悩みを解決する手段の一つです。
ただし、アンガーマネジメント研修と一口に言っても、管理職向けの本格的なものから、半日で学べるもの、顧客対応に特化したものまで内容は様々です。この記事では、自社の課題やねらいに合わせてどのパターンの研修を選べばよいか、そしてそれぞれのカリキュラムがどのような構成になっているかを見ていきます。研修選びで迷っている人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
アンガーマネジメント研修とは、自身の怒りという感情を正しく理解し、コントロールする方法を学ぶ研修です。怒りをゼロにすることが目的ではなく、怒りという感情と上手く付き合いながら、周囲との関係を損なわない伝え方を身につけることがねらいです。
近年、管理職や先輩社員からの強い口調での指導が、部下側からパワーハラスメントと受け取られてしまうケースが増えています。感情に任せた発言や態度は、本人にそのつもりがなくても、相手との信頼関係を崩す原因になりかねません。怒りという感情そのものは自然なものであり、悪いことではありません。問題となるのは、その感情をコントロールできずにそのまま相手にぶつけてしまうことです。
感情的な指導や叱責が続くと、部下の離職やハラスメント相談の増加につながります。怒りのコントロール不足は、個人の問題にとどまらず組織全体の生産性やエンゲージメントにも影響します。
「そもそもアンガーマネジメントとは何か」については、下の記事で詳しく解説しているため、ここでは省略させていただきます。
アンガーマネジメント研修 おすすめの探し方で悩んだときは、次の三つの視点で考えると選びやすくなります。「どれくらいの時間をかけられるか」「誰に向けた研修か」「何を目的にするか」という三点です。
研修選びで確認したい3つの視点
例えば、初めてアンガーマネジメントを導入する企業であれば基礎から学べる研修が向いていますし、すでにおおよそ理解をしている管理職層であれば、伝え方や叱り方など、より実践的なテーマに絞った研修の方が学びが深まります。以下では、目的別におすすめの研修を紹介していきます。
部下を持つ管理職や先輩社員に、時間をかけて基礎から実践までを身につけさせたい場合におすすめなのが、こちらの研修です。怒りの正しい理解から、コントロール方法、上手い伝え方まで一通り確認できる内容になっています。
対象者
全社員(特に管理職や先輩社員)
想定研修時間
約6時間
| 章 | テーマ | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 怒りへの正しい理解 | 怒りという感情の仕組みを知り、無理に抑え込まずコントロールする考え方を学びます。あわせて自身の怒りの強さや現れ方の傾向についても理解を深めます。 |
| 2 | 感情のコントロール方法 | 怒りをそのまま行動や言動に移すことで生じるトラブルを防ぐため、明日から使えるセルフコントロールの手法をワーク形式で試します。複数の方法を体験し、自分に合ったやり方を見つけます。 |
| 3 | 上手い感情の伝え方 | アサーティブコミュニケーションという手法を用い、相手にも自分にもマイナスにならない伝え方を習得します。言いづらいことを伝える場面を想定した実践を行います。 |
| 4 | 相手に合わせた伝え方 | 一通りの伝え方だけでは相手の感情を逆なでしてしまうことがあるため、相手のタイプに応じた伝え方の使い分けを把握します。 |
時間を十分に取り、ケースワークを通じた実践で、頭で理解するだけでなく行動につなげられる点が特徴です。
自身の怒りの傾向や分類に気づくことができて、受けてよかった。
研修に長い時間を割けない企業や、まずはお試しで導入したい場合には、半日で完結する研修が向いています。怒りの基礎知識からセルフコントロールの手法までを、3時間の中でコンパクトに学びます。
対象者
若手社員 中堅社員 管理職
想定研修時間
約3時間
| 章 | テーマ | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 怒りの原因となる「べき」の洗い出し | 自身の中にある固定観念、いわゆる「べき」という思い込みが怒りの発生と結びついていることを理解し、自分の「べき」を書き出すワークに取り組みます。 |
| 2 | 怒りの自己コントロール力の強化 | 相手への期待値を調整する考え方を含め、怒りをコントロールするための具体的なノウハウを身につけます。 |
| 3 | アサーティブな伝え方 | 部下などに対して怒りのままに伝えるのではなく、アサーティブに、つまり相手を尊重しながら自分の意見も伝える方法を理解します。 |
Before
感情のままに部下を叱責してしまう
After
一呼吸おいて、事実と感謝を伝えながら指導できる
半日という比較的短い時間でも、怒りが発生する仕組みを理解し、自分の傾向を知ることで、明日からの行動を変えるきっかけになります。
怒りのコントロールだけではなく、必要なときには自分の意見をきちんと相手に伝えられるようになってもらいたいという企業には、この研修が適しています。怒りを禁じるのではなく「上手く付き合っていく」という考え方をベースに、円滑なコミュニケーションを目指します。
対象者
若手社員 中堅社員 管理職 全職員
想定研修時間
約3時間
| 章 | テーマ | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 怒りの理解とコントロールのメリット | 怒りは他の感情よりエネルギーが強く、誤って発信すると後悔を招くことを理解します。怒りとの付き合い方を知ることで、感情に振り回されずに仕事を進められるようになります。 |
| 2 | 思考の癖や傾向を知るワーク | 怒りは自然に発生する感情であるという前提のもと、自身の思考の癖や傾向をあらかじめ把握し、発生の予防や発生時の対処につなげます。 |
| 3 | 波風を立てない意見の伝え方 | 怒りを感じた場合でもそれをコントロールした上で、自身の主張や意見を相手に上手く伝える方法を実践します。 |
全社員を対象にできる汎用性の高い内容のため、部署や役職を問わず導入しやすい研修です。
顧客からの理不尽な要望やクレームにさらされやすい部署には、顧客対応に特化したこちらの研修が向いています。自身の感情をコントロールしながら、過剰な要求にも冷静に対応するスキルを養います。
対象者
新入社員 若手社員 中堅社員 管理職
想定研修時間
約3時間
| 章 | テーマ | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 怒りやストレスとの向き合い方 | 怒りやストレスは無理に抑え込むとかえって増長してしまうため、感じること自体は悪いことではないと理解した上で、適切な向き合い方を確認します。 |
| 2 | 怒りのセルフコントロール | 自身の怒りの傾向性とその対処方法を理解し、お客様に対して落ち着いた対応ができるようになることを目指します。 |
| 3 | 過剰な要望やクレームへの対応 | 顧客からの要望が行き過ぎたものとなった場合に、クレームとして冷静に線引きをして対応する考え方を身につけます。 |

顧客志向が高まる一方で、過度な要求への対応に悩む現場は少なくありません。感情に振り回されずに顧客満足を実現したい企業に向いている内容です。
怒りのコントロールと同時に、部下への具体的な指導方法まで身につけさせたい企業には、褒め方・叱り方研修が適しています。感情的にならずに、部下のモチベーションを引き出す褒め方や、行動改善につながる叱り方を学びます。
対象者
中堅社員 管理職
想定研修時間
約3時間
| 章 | テーマ | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 褒める・叱ることの重要性 | ジェネレーションギャップや価値観の違いから部下との接し方に悩む上司が増えている背景を踏まえ、褒めることと叱ることがなぜ部下育成に必要なのかを理解します。 |
| 2 | 効果的な叱り方 | 部下の望ましい行動を引き出す叱り方を理解し、実際に叱られた際にどのような印象を抱くかをロールプレイングで体感しながらケースワークで習得します。 |
| 3 | 実践につながる褒め方 | 部下の自発的な行動を促す褒め方を理解し、現場ですぐに実践できる形で身につけます。 |
叱ると褒めるの考え方を具体例とともに学ぶことができました。
アンガーマネジメントと組み合わせることで、感情のコントロールから実際の指導行動までを一気通貫で学ばせたい企業に向いています。
怒りだけでなく、自分や他者の感情全般への理解を深めたいという場合には、エモーショナルリテラシー研修がおすすめです。感情の基本概念から、感情に気づき適切に表現する方法、共感的に聴く技術までを幅広く学びます。
対象者
新入社員 若手社員 中堅社員 管理職
想定研修時間
約3時間
| 章 | テーマ | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 基本概念とエモーショナルリテラシーの要素 | 感情の定義や特徴、感情が仕事に与える影響を理解し、エモーショナルリテラシーを構成する4つの要素を見ていきます。 |
| 2 | 感情への気づきと表現 | 感情認識のステップやラベリング技法を学び、Iメッセージを活用しながら事実と感情を区別して伝える方法を習得します。 |
| 3 | 共感的に聴く技術 | アクティブリスニングの基本を学んだ上で、ペアワークによる共感トレーニングを通じて、他者に共感的に関わるスキルを養います。 |
エモーショナルリテラシーとは
自分や他者の感情を認識し、適切に表現・調整しながら、相手に共感的に関わっていく力のこと。怒りのコントロールだけでなく、感情全般への理解を土台にしている点が特徴です。
チーム内のコミュニケーションの質そのものを底上げしたい企業に向いている研修です。
怒りへの対処にとどまらず、感情知性(EQ)そのものを体系的に高めたいという企業には、EQ研修がおすすめです。自己認識、自己管理、社会的認識、関係管理という4領域を軸に、自分と他者の感情を理解し、望ましい行動を選択する力を養います。
対象者
新入社員 若手社員 中堅社員 管理職
想定研修時間
約6時間
| 章 | テーマ | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 自分の感情への気づき | 感情の言語化、いわゆるラベリングを実践し、自分がどのような場面で感情のトリガーが働くのかを特定します。感情が自身の行動に与える影響を深く理解します。 |
| 2 | 衝動的な反応のコントロール | 「反応」と「対応」の違いを理解し、リフレーミングをはじめとしたすぐに使えるテクニックを用いて、衝動的な行動を防ぎ望ましい行動を選択できるようにします。 |
| 3 | 他者理解と関係構築 | 他者の感情を読み取る方法や共感力を高める実践法、組織文化を理解する社会的認識を深めます。対立を建設的に解消する方法やSBI法を使ったフィードバックも身に付けます。 |
メリット
デメリット
管理職研修や次世代リーダー研修の一環として導入する企業も多い研修です。
ここまで七つの研修を紹介してきましたが、内容を見ていくと共通するカリキュラムの流れがあることに気づきます。「怒りの理解」「セルフコントロール」「伝え方」という三段階は、多くのアンガーマネジメント研修に共通する基本構成です。
怒りの理解
怒りの仕組みや自分の傾向を知ることから始める
セルフコントロール
明日から使える対処法をワークで身につける
伝え方の実践
アサーティブな伝え方をケースワークで練習する
この流れを踏まえたうえで、対象者や目的に応じてカスタマイズされているのが、それぞれの研修の違いです。自社の課題がどの段階にあるかを整理してから比較すると、選びやすくなります。
研修を選ぶだけでなく、実施の仕方によっても効果は大きく変わります。人事担当者として押さえておきたいポイントを改めて、整理します。
特に、管理職だけに受講させると「自分だけが指導された」という受け止め方をされてしまうことがあります。全社員が対象になり得るテーマだと伝えることで、前向きに参加してもらいやすくなります。
アンガーマネジメント研修のおすすめは、企業ごとの課題や対象者によって変わります。管理職にじっくり学ばせたいのか、まずは半日で試したいのか、あるいは顧客対応やEQといった特定のテーマに絞りたいのか。目的を整理したうえで比較することが、研修選びの近道です。
怒りという感情への向き合い方を学ぶことは、ハラスメントの防止やチームの信頼関係の構築だけではなく、個人のストレス軽減にも繋がります。この記事で紹介した7つの研修を参考に、自社に合ったカリキュラムを見つけてもらえれば幸いです。まずは各研修の詳細ページから、カリキュラムや対象者を見比べてみることをおすすめします。また、その他にもアンガーマネジメントに類する研修を用意しています。詳細は下記から。
リスキル事務局が記事の執筆・監修をしています。人材育成にまつわるお役立ち情報を分かりやすく解説します。
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■プロフィール
会社名:株式会社リスキル
(「リスキル」は株式会社リスキルの登録商標です。)
設立:2022年5月2日
上場市場:東京証券取引所グロース市場
■研修実績
・利用社数は年間3900社以上
・年間受講者数 前年比157%
・プロフェッショナルの講師陣300名以上在籍