「接遇マナー」という言葉は知っていても、具体的に何を指すのか、うまく説明できない方は多いのではないでしょうか。接遇マナーは、顧客満足度や企業のイメージにも直結する重要な要素です。
本記事では、接遇マナーの基本となる考え方から、聴く力や伝える力といった身につけ方、社内全体に浸透させていくためのポイントまで、まとめて紹介します。日々の顧客対応を見直すきっかけとして、ぜひ参考にしてください。
目次
接遇マナーとは、決められた対応だけにとどまらず、相手の立場に立ちながら、思いやりの気持ちをおもてなしとして形にしていく礼儀作法を指す言葉です。挨拶や言葉遣いといった基本的なマナーだけでなく、相手の状況を汲み取り、寄り添った対応をすることまでを含みます。
接遇マナーが身についている社員が多い企業ほど、顧客からの信頼を得やすくなります。単に商品やサービスを提供するだけでなく、「この人に対応してもらえてよかった」と思ってもらえるかどうかが、リピートや評価につながっていきます。
接遇マナーと似た言葉に「接客マナー」があります。接客マナーは、来店した顧客に対して必要最低限のサービスを提供するための対応を指すのに対し、接遇マナーは一歩進んで、相手の立場や状況を踏まえたアプローチを行うことが求められます。
たとえば、同じ「案内をする」という行動でも、マニュアル通りに説明するだけなら接客マナーの範囲です。一方、相手の理解度や気持ちを汲み取りながら、伝え方を工夫して案内するのが接遇マナーだといえます。
近年、消費のあり方は「モノ消費」から「コト消費」へと変化しています。
モノ消費とコト消費
モノ消費とは、製品やサービスが持つ機能的な価値を消費すること。コト消費とは、モノを所有すること以上に、体験や満足感といった精神的な価値を求める消費行動のことです。
商品やサービスが溢れ、機能だけで選ばれることが難しくなった今、顧客は「何を買うか」だけでなく「どう対応してもらえるか」も重視するようになりました。顧客が「また利用したい」と感じるかどうかは、対応する社員一人ひとりの接遇マナーにかかっているといっても過言ではありません。
モノ消費の例
コーヒーが飲みたいので、豆を買って家で淹れる。「コーヒーを買うこと」に価値を感じる。
コト消費の例
焙煎の話を聞きながら一杯淹れてもらう。「その店で過ごす時間」に価値を感じ、その体験を目的に店へ通う。
顧客満足は、感じた価値が期待値を上回ったときに生まれます。どれほど良い商品を扱っていても、接遇マナーが伴っていなければ、期待を超える満足は生まれにくいのです。接遇マナーは、接客業や販売職に限らず、受付、営業、コールセンターなど、顧客や取引先と接するあらゆる職種に求められる考え方です。業種や職種を問わず、根底にある「相手の立場に立つ」という考え方は共通しています。
接遇マナーの土台となるのが、「マナーの5原則」と呼ばれる5つの項目です。
挨拶・笑顔・身だしなみ・態度・言葉遣いの5つは、どの業種であっても接遇マナーの基本として押さえておきたい要素です。
| 項目 | 意識したいポイント |
|---|---|
| 挨拶 | 自分から、相手に届く声で行う |
| 笑顔 | 口角と目もとの両方で自然な表情をつくる |
| 身だしなみ | 清潔感を意識し、相手がどう感じるかを基準にする |
| 態度 | 立ち方、お辞儀、物の渡し方に気を配る |
| 言葉遣い | 敬語を正しく使い分け、クッション言葉を活用する |
5原則それぞれの具体的な意識ポイントについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
5原則のうち、特に挨拶と笑顔、身だしなみは、相手と接した最初の数秒で伝わる要素です。第一印象は、その後のコミュニケーション全体の印象を左右するため、態度や言葉遣い以上に意識しておきたいポイントだといえます。
5原則を実践するにあたっての大前提となるのが、相手の状況を見て、それに合わせたアプローチをすることです。忙しさや目の前の作業に追われていると、つい見落としがちなポイントですが、相手を主語にした対応ができているかどうかが、接遇マナーの質を左右します。
つまり、対応する前に「今、相手は何を求めているか」を一瞬立ち止まって考えるということです。決まった動作をただこなすのではなく、目の前の相手に合わせて微調整する。その積み重ねが、接遇マナーの土台になります。
マナーや振る舞いが整っていても、それだけで顧客満足が高まるわけではありません。顧客に寄り添ったコミュニケーションが取れているかどうかが、接遇マナーの質を大きく左右します。ここでは、特に重要な「聴く力」と「伝える力」について見ていきます。
顧客のニーズを正しく理解するために欠かせないのが、アクティブリスニング(積極的傾聴)です。相手やその話に興味関心を持ち、積極的に聴く姿勢のことで、次の3つの基本的な姿勢から成り立っています。
アクティブリスニングの3つの基本姿勢
加えて重要なのが質問力です。相手の話を遮らず、話が途切れたタイミングを見計らって質問することで、「話を聴いてくれている」という信頼感につながります。質問には、はい・いいえで答えられるクローズド・クエスチョンと、自由に答えられるオープン・クエスチョンの2種類があり、まずクローズド・クエスチョンで会話の糸口をつくり、そこからオープン・クエスチョンでニーズを引き出していくのが効果的です。
うまく傾聴できないときは、いくつかの要因が隠れていることがあります。自分の考えを理解させようとする気持ちが先行していたり、相手のためと思い込んで対応を押し付けてしまっていたりするケースです。忙しさから心に余裕がなくなり、相手の話を早く終わらせたいと感じてしまうことも、傾聴を妨げる原因のひとつです。自身がどのようなときに傾聴が難しくなるのかを知っておくことも、接遇マナーを高めるうえで役立ちます。
聴くことができたら、次に必要なのが伝える力です。「伝えた」ではなく「伝わった」を目指すことが、伝え方における最大のポイントです。伝えたは主語が自分、伝わったは主語が相手であり、相手が行動を起こしてくれて初めて、伝える目的が達成されたといえます。
わかりやすく伝えるためには、まず要点を先に伝え、そのあとに理由や根拠を添えるという順番を意識します。下記は、ホテルのチェックイン時刻より早い14時頃に到着されたお客様から「もう部屋に入れますか」と尋ねられた場面の例です。
伝えた例(自分が話したいことを話す)
恐れ入ります。清掃スタッフも順番に回っている状況でございます。なるべく早くご案内できるよう進めておりますので、もう少々お待ちいただけますでしょうか。
伝わった例(相手が知りたいことを話す)
恐れ入ります。お部屋へのご案内は15時からの予定ですが、整い次第お呼びすることも可能です。お荷物はお預かりいたしましょうか。
どちらも丁寧な言葉づかいですし、「入れますか?」という質問にはNOで答えられています。 しかし、「もう少々」と言われたお客様は10分~15分程度を想像する可能性があります。丁寧さは、相手の判断材料を減らしてまで優先するものではありません。
このほか、一文を短くする、具体的な表現を使う、重要なことは繰り返し伝えるといった工夫も、伝わりやすさを高めるポイントです。人は、伝えられた内容の大部分を聞き流していると言われています。だからこそ、わかりやすさを意識した伝え方を、日頃から心がけておく必要があります。
対面だけでなく、電話応対も接遇マナーが強く問われる場面です。相手の表情が見えない分、声や言葉遣いだけで印象が決まってしまうため、対面以上に注意が必要です。
電話を受けるときは、2コール以内に出ることが基本です。3コール以上待たせた場合は「お待たせいたしました」と一言添えます。応対の流れは、オープニングトーク、内容の確認、説明、クロージングトークの順に進め、相づちや復唱を挟みながら、正確に用件を把握することを意識します。
電話をかける際は、相手が忙しい時間帯を避け、話す内容を事前に整理してからかけることが大切です。第一声は電話の印象を左右するため、明るく爽やかな声で名乗り、要件を一言で伝えるようにします。否定的な表現を避け、肯定的な言い回しに置き換える「肯定話法」も、印象を柔らかくするうえで役立ちます。
否定的な表現
今日中は対応できません
肯定話法
明日の午前中でしたら対応可能です
電話は対面よりもクレームに発展しやすい対応です。お詫び、傾聴、心情理解、事実確認、解決策の提示、お詫び・感謝という基本のステップを押さえておくことで、初期対応での悪化を防げます。
謝罪は「不快な思いをさせたこと」など対象を限定した部分謝罪から始め、まずは相手の話をひたすら聴くことに徹します。解決策を提示する際は、いつまでに対応するかを具体的に伝えることが大切です。
接遇マナーは、日々の業務の中で自己流のまま身につけていくのは意外と難しいものです。自分では正しくできているつもりでも、実際には顧客に伝わっていないケースは少なくありません。たとえば敬語の使い方は、一度間違った形で覚えてしまうと、自分では気づきにくく、修正するのにも時間がかかります。表情や態度についても、鏡や周囲からのフィードバックがなければ、客観的に振り返る機会はなかなか持てません。
また、接遇マナーは「知っている」ことと「実践できる」ことの間に差が生まれやすい領域でもあります。挨拶や敬語の知識があっても、実際の対応の場面でとっさに使いこなせるかどうかは別の話です。まずは自分自身の対応を振り返り、できていない点に気づくところから始めてみましょう。
一人ひとりが自己流のまま身につけていくと、対応の質にばらつきが生まれやすくなります。個人の気づきにとどめず、部署や店舗全体で同じ基準の接遇マナーを実践できるようにしたいと考える方に向けて、ロールプレイを通して実践しながら講師のフィードバックを受けられる研修もリスキルでは用意しています。
挨拶から電話応対まで、接遇マナーの基本を一通り身につけさせたい場合は、基礎的な内容を扱う研修が向いています。
障がいのある方への対応など、基本の接遇マナーだけでは対応しきれない場面が想定される場合は、対応編として用意された研修を組み合わせるとよいでしょう。
アルバイトスタッフが多い現場では、短時間でも実践しやすい研修が求められます。飲食店での接客に特化した内容で、CS向上を図りたい場合に向いています。
インバウンド需要の高まりとともに、言葉や文化の違いを踏まえた対応が求められる場面も増えています。異文化理解の視点を現場に取り入れたい場合は、インバウンド対応に特化した研修が向いています。
このほかにも、リスキルではさまざまな接遇マナー研修をご用意しています。
接遇マナーとは、マニュアル通りの対応にとどまらず、相手の状況を汲み取りながら、心のこもったおもてなしを形にする対応力のことです挨拶・笑顔・身だしなみ・態度・言葉遣いという基本の5原則を土台としながら、聴く力・伝える力などを身につけることで、顧客満足度の向上につながっていきます。
接遇マナーは、特別なテクニックではなく、日々の対応の積み重ねによって磨かれていくものです。今日の対応から、まずは一つだけでも意識してみることが、接遇マナーを身につける第一歩になります。
リスキル事務局が記事の執筆・監修をしています。人材育成にまつわるお役立ち情報を分かりやすく解説します。
■社員研修のリスキルとは?
社員研修のリスキルは、一人でも多くの人に人材育成を届けるために、利便性の高い研修サービスを提供しています。検索をすれば、一社で実施する研修、日程が決まっている参加型公開講座、eラーニング動画講座などをすぐに見つけ、簡単に申込みや見積書を作成することができます。
■プロフィール
会社名:株式会社リスキル
(「リスキル」は株式会社リスキルの登録商標です。)
設立:2022年5月2日
上場市場:東京証券取引所グロース市場
■研修実績
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・年間受講者数 前年比157%
・プロフェッショナルの講師陣300名以上在籍