キャリアデザイン研修は、社員がこれまでの仕事を振り返り、今後の目標と行動計画を立てる研修です。日々の業務に追われがちな社員に、自分のキャリアについて立ち止まって考える機会をつくります。
この記事では、キャリアデザイン研修の年代別の目的と主な内容、カリキュラム例やワークの進め方、企画のポイントを紹介します。研修を企画する際の参考にしてください。
キャリアデザイン研修は、自己理解・社内でのキャリア目標の設定・行動計画の作成という流れで進みます。30代以降を対象とする場合は、目標を決める前に、仕事と生活の両面から働き方を考えるライフプランの検討を加えることもあります。
研修で考えた内容はシートなどの書面に残るため、研修後の面談や育成にも活用できます。
キャリアは本来、社員一人ひとりが考えるものです。それでも企業が研修の場を設けるのには、次のような意義があります。
考えを整理する枠組みがある
フレームワークや講師の問いかけに沿って考えるため、一人では言葉にしにくい思いを整理できる
他者の視点に触れられる
受講者同士で共有することで、自分では気づきにくい強みや考え方を知るきっかけになる
共通の材料で対話できる
全員が同じ流れで考えた内容が手元に残るため、研修後に上司と共通の材料をもとに話し合える
キャリアデザイン研修の目的は、社員が強みと組織での役割を結び付け、主体的にキャリアを築ける状態をつくることです。
ただし、受講者の悩みや課題は年代によって異なるため、重点を置くポイントも変わります。年代ごとの一般的な傾向を目安として紹介します。
| 年代 | よくある状況 | 研修の主な目的 |
|---|---|---|
| 20代 | 強みがまだはっきりしない | 強みを把握し、方向性を仮置きする |
| 30代 | 役割の変化とライフイベントが重なりやすい | 期待される役割を踏まえ、進む道を考える |
| 40代 | ポストや将来に迷いが出やすい | 経験を棚卸しし、活躍の場を考える |
| 50代 | 役職定年や再雇用が視野に入る | 経験を活かした今後の働き方を考える |
「5年後、どうなっていたいですか」と聞かれて、答えに詰まる20代は少なくありません。得意なことややりがいを、まだ言葉にできていないためです。
そこで研修では、入社後の小さな成功体験や意欲が高まった場面を振り返り、強みの手がかりを探します。目標を確定させる必要はなく、3〜5年後の方向性を「仮置き」できれば十分です。仮置きでも言葉にしておくと、目の前の業務と将来のつながりを意識できるようになります。
30代は、後輩の指導を任されたりチームの中心として期待されたりと、担う役割が大きく変わる年代です。
専門性を深めるのか、マネジメントの道に進むのか。こうした分かれ道を、組織から期待される役割と照らし合わせて考えます。結婚や育児といったライフイベントも重なりやすいため、仕事と生活のバランスも検討のテーマに含めます。
40代は、経験が豊富な一方で迷いが生じやすい年代です。管理職のポストに限りがあることを実感したり、この先の伸びしろに不安を感じたりする人もいます。そこで研修では、経験を棚卸しし、自分の強みを確かめ直すことから始めます。
そのうえで、強みを組織の中でどう発揮するかを考えます。周囲の成長への貢献も期待される年代なので、管理職なら部下の育成、専門職なら技術の継承というように、役割を広げると活躍の場が見えてきます。
50代は、役職定年や再雇用など働き方が変わる節目が近づき、立場の変化に戸惑って意欲が下がる人もいます。
研修では、こうした変化を前向きに受け止め、培ってきた経験やノウハウを組織に還元する道を考えます。定年後の再雇用も見据え、健康や家計を含めたセカンドキャリアの働き方もあわせて検討します。
キャリアデザイン研修は、主に次の3つの要素で構成されます。
| 要素 | 研修で考える主な問い | 特に時間をかけたい対象 |
|---|---|---|
| 自己理解 | 自分の強み・価値観は何か | 全年代 |
| 社内でのキャリア目標の設定 | 何を目指し、組織から何を期待されているか | 20代〜30代 |
| 行動計画の作成 | いつまでに何をするか | 全年代 |
自己理解は、研修全体の土台です。成果を出せた場面や意欲が高まった場面を振り返り、自分の強みや大切にしている価値観を探ります。
20代は学生時代を含めた幅広い経験を材料にし、40代以降は豊富な経験の中から強みを絞り込みます。自己理解を深める考え方として、キャリア・アンカーがよく用いられます。
キャリア・アンカーとは
組織心理学者のエドガー・H・シャインが提唱した概念で、キャリアを選ぶ際にどうしても譲れない価値観や欲求のこと。「専門・職能別コンピタンス」「保障・安定」「生活様式」など8つに分類されます。
自己理解をもとに、将来どうありたいかを描きます。ただし本人の希望だけで決めると、組織の中では実現しにくい目標になりがちです。
そこでよく使われるのが、キャリア・アンカーと期待される役割を結び付ける方法や、Will・Can・Mustのフレームワークです。Will・Can・Mustでは、やりたいこと(Will)、できること(Can)、組織から求められること(Must)を書き出し、その重なりから本人の意欲と組織の期待が両立する方向性を探ります。
目標が決まったら、現状との差を埋めるための行動を考えます。その際は、「スキルを高める」のような抽象的な表現で終わらせず、「いつまでに・何を・どの程度行うか」まで具体化しましょう。具体的であれば研修後に上司と進み具合を確かめやすく、実行に移りやすくなります。
30代以降を対象とする場合は、社内でのキャリア目標を設定する前に、ライフプランの検討を加えることがあります。育児や介護、定年後の生活など、生活面の変化も働き方に大きく影響するためです。
30代〜40代では仕事と育児などとの両立、50代では再雇用後の働き方や老後の資金、健康の維持が主なテーマになります。目標を決める前に仕事と生活の両方を見渡しておくと、無理の生じにくい現実的な目標を立てられます。
半日・1日研修の構成例と、主なワークの進め方を紹介します。
半日研修(3時間)は、自己理解と明日からの行動に絞った構成です。まとまった時間を確保しにくい場合や、キャリアを考えるきっかけづくりに向いています。
| 章 | 主な内容・ワーク | ゴール |
|---|---|---|
| 1. キャリアとは | キャリアデザインの基本とメリット | キャリアについての基本を理解する |
| 2. 自分を深掘りして考える | 【ワーク】過去を棚卸しする/自分の価値観を知る/自分の能力を知る/キャリア・アンカーをアウトプットする | 自己理解を深め、キャリア・アンカーを見つける |
| 3. 目指すべき姿と、現状の課題理解 | 【ワーク】As is・To beでギャップを把握する/身に付けるべき能力や知識を具体化する | 目指すべき姿と現状のギャップから課題を洗い出し、明日からやるべきことを明確にする |
1日研修(6時間)は、組織の中での役割を踏まえた目標設定と行動計画の作成まで扱う構成です。
| 章 | 主な内容・ワーク | ゴール |
|---|---|---|
| 1. キャリアとは | 社会を取り巻く環境の変化、キャリアデザインを考える | キャリアデザインの重要性を理解する |
| 2. 自分を深掘りして考える | 【ワーク】過去を棚卸しする/自分の価値観を知る/自分の能力を知る/キャリア・アンカーをアウトプットする | キャリア・アンカーを見つける |
| 3. 組織の中でのキャリア | 【ワーク】組織から期待される役割/将来、どのように活躍したいのか考える | 自分のアンカーと期待されている役割を結び付ける |
| 4. 目指すべき姿への課題を考える | 【ワーク】As is・To beでギャップを把握する/身に付けるべき能力や知識を具体化する | 目指すべき姿へのプロセスから想定される課題を考える |
| 5. 今後の行動計画を立てる | 【ワーク】キャリアデザインシートの作成 | 総まとめとしてキャリアデザインシートを作成する |
半日研修との主な違いは、第3章と第5章が加わる点です。第3章では、個人の希望だけでなく組織の中で求められる役割と結び付けて将来像を描きます。
なお、上記の構成例は仕事に関するキャリアに絞った内容のため、ライフプランの検討は含まれていません。ライフプランも扱う場合は、自己理解の後、目指す姿を描く前に組み込むと、生活面を踏まえた目標を立てやすくなります。リスキルでは、キャリアデザイン研修 30~40代のライフプラン編のようにライフプランを中心に扱う研修も用意しており、他の研修と組み合わせて実施することもできます。
よく用いられる5つのワークを、研修の流れに沿って紹介します。各ワークの後には、ペアやグループで共有する時間を設けるのが一般的です。
①過去を棚卸しする(ライフラインチャート)
最初に、これまでの経験を振り返ります。代表的な手法がライフラインチャートで、横軸に時間、縦軸にモチベーションの高低をとって浮き沈みを曲線で描きます。
曲線を描いたら、山と谷のそれぞれに「何があったのか」「なぜそう感じたのか」を書き込みます。講師が「山の時期に共通していることは何ですか」と問いかけると、受講者はやりがいの源泉に気づきやすくなります。谷の時期を書くことに抵抗を感じる人もいるため、共有する範囲は本人が選べるようにします。
受講者からは、次の感想が寄せられています。
ライフラインチャートの作成が非常に良かったです。
②キャリア・アンカーを見つける
次に、仕事で譲れない価値観と発揮できる能力を整理します。価値観の候補に優先順位をつけ、仕事の振り返りから「できること」を書き出したうえで、キャリア・アンカーの8分類から自分に近いものを選び、理由を言葉にします。
価値観を絞り込めない受講者には、2つずつ比べてもらい、「1つしか選べないとしたら、どちらを優先しますか」と問いかけると優先順位が見えてきます。
③期待される役割と結び付ける
自分の軸が見えたら、組織から期待されている役割を書き出し、将来どのように活躍したいかを考えます。役割を想像しにくい受講者もいるため、等級ごとの要件や評価項目を事前に共有しておくと考えやすくなります。
④As is・To beでギャップを把握する
続いて、目指す姿(To be)と現状(As is)を並べて書き、その差を洗い出します。差を埋める方向性は、課題と向き合う「対課題能力」、自分と向き合う「対自己能力」、周囲を理解する「対人能力」の3つに分けて整理し、身に付けるべき知識や能力を具体化します。
To beが抽象的だと差を特定できないため、「3年後のある1日」を描いてもらうなど、具体的な場面に落とし込みます。
⑤今後の行動計画を立てる
最後に、④で描いたTo beに近づくために、研修後にどう行動するかを考えます。具体的な行動を書き出し、その中から実際に取り組めそうなものを見極めておくと、研修後の実行につながります。
大きな行動ばかり挙げる受講者には、最初の一歩は小さくてもよいと伝えます。小さな行動でも実行できれば、次の行動への弾みになるからです。
企画にあたっては、次の項目を事前に確認しておきましょう。
企画時に確認したいこと
企画の第一歩は、「誰を対象に」「研修後にどうなってほしいか」を決めることです。ゴールは、「入社3年目の社員が、強みと3年後の目標を言葉にし、上司と共有できる状態になる」のように、研修後の受講者の状態として一文で書いておきます。ゴールが具体的になるほど、扱うワークや研修時間を決める基準が明確になります。
年代別の目的で見たように、年代によって経験や課題は異なるため、対象者に合わせてワークの比重やテーマを調整します。リスキルの研修を例にすると、次のとおりです。
| 研修の例 | カリキュラムの流れ | 重点を置く内容 |
|---|---|---|
| キャリアデザイン研修 若手社員編 | Will→Can→Must→目標設定 | やりたいこと・できることの言語化と、具体的な目標設定 |
| キャリアデザイン研修 中堅社員編 | Will→Can→Must→目指すべき姿への課題 | 求められる役割の理解と、目指す姿への課題の把握 |
| キャリアデザイン研修 30~40代のライフプラン編 | ありたい姿→現状把握→ライフキャリアプラン | 仕事と生活の両面から描く「ありたい姿」と、ライフキャリアプラン |
| ミドル・シニア層活躍研修 | やりがい→ノウハウの仕組み化→健康→今後の生き方 | 経験の還元と、長く健康で働き続けるための準備 |
昇格や役職変更のタイミングで実施する場合は、新しい役割で求められることを考える時間を厚くすると、研修の内容をすぐ実務に活かせます。
自社で活躍している社員をロールモデルとして紹介するのも有効です。受講者が自社での将来像を具体的に描けるためです。リスキルの一社研修でも、こうしたカスタマイズに対応しています。
なお、キャリアを考える研修が転職を後押ししないかと心配になる担当者もいるかと思います。企業が実施する研修である以上、転職や離職につながるような話は取り上げるべきではありません。外部の研修機関に依頼する場合は、研修の方針を事前に確認しておくと安心です。
リスキルのキャリアデザイン研修でも、現在の会社でより活躍するという文脈で話を進めます。
研修で作成したシートやワークの記入内容は、研修後に活用してこそ意味を持ちます。面談では、上司が評価する立場ではなく支援する立場で話を聞くことが重要です。評価の場だと感じると、受講者は本音の希望や不安を話しにくくなるからです。「この目標を選んだ理由は何ですか」「私が手伝えることはありますか」といった問いかけが、本人の考えを引き出します。
上司向けの研修で、キャリア支援の考え方を身に付けてもらう方法もあります。
キャリアデザイン研修は、自己理解・社内でのキャリア目標の設定・行動計画の作成が軸です。30代以降は、ライフプランの検討も加えると計画の実現性が高まります。重点を置くポイントは年代や役職、キャリアの節目によって変わるため、「誰に」「研修後どうなってほしいか」を先に決め、その目的から内容を設計することが重要です。研修後の面談まで含めて計画すると、成果を日々の行動につなげやすくなります。
リスキルでは半日・1日の研修に加え、若手社員編や中堅社員編、30~40代のライフプラン編、ミドル・シニア層向けの研修も用意しています。研修を検討する際の参考にしてください。
リスキル事務局が記事の執筆・監修をしています。人材育成にまつわるお役立ち情報を分かりやすく解説します。
■社員研修のリスキルとは?
社員研修のリスキルは、一人でも多くの人に人材育成を届けるために、利便性の高い研修サービスを提供しています。検索をすれば、一社で実施する研修、日程が決まっている参加型公開講座、eラーニング動画講座などをすぐに見つけ、簡単に申込みや見積書を作成することができます。
■プロフィール
会社名:株式会社リスキル
(「リスキル」は株式会社リスキルの登録商標です。)
設立:2022年5月2日
上場市場:東京証券取引所グロース市場
■研修実績
・利用社数は年間3900社以上
・年間受講者数 前年比157%
・プロフェッショナルの講師陣300名以上在籍