コーチング研修の導入を検討する際、「実際にどんなことをするのか」「講義を聞くだけで終わらないか」が見えにくく、社内で説明しにくいと感じる方もいるのではないでしょうか。コーチング研修の内容は、大きく「知識」「スキル」「実践」の3つで構成され、講義だけでなく演習に多くの時間を割くのが一般的です。
この記事では、一般的なカリキュラム例をもとに、各テーマで何をするのか、職場でどう活かすのかを見ていきます。対象者による違いや定着のポイントも紹介します。
目次
コーチング研修の内容は、考え方を理解する「知識」、部下の考えを引き出す「スキル」、実際の会話で試す「実践」の3つに分けられます。知識からスキル、実践へと進む流れが基本になっています。まずは前提となる用語を押さえておきましょう。
コーチングとは
相手に答えを教えるのではなく、問いかけや対話を通じて相手自身に考えてもらい、目標に向けて自ら行動できるよう支援するコミュニケーションの手法のこと。
| 区分 | 主な内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 知識 | コーチングの定義 / ティーチングとの違い / 会話の進め方 | コーチングを使う場面と使わない場面を判断できるようにする |
| スキル | 傾聴 / 質問 / 承認 / 相手のタイプに合わせた関わり方 | 部下の考えを引き出す会話ができるようにする |
| 実践 | ロールプレイ / ケーススタディ / 振り返り | 自分の話し方の癖に気づき職場で使える形にする |
なかでも傾聴・質問・承認は「コーチングの3大スキル」と呼ばれ、多くのコーチング研修で中心に置かれています。なお、質問は傾聴の一部として同じテーマで扱われることもあります。
「部下の話を最後まで聴く」ことの大切さを知っていても、忙しいとつい途中で結論を言ってしまいがちです。こうした癖は自分では気づきにくいため、研修ではロールプレイで実際に話し、周りから指摘をもらう時間を多く取ります。「知っている」を「できる」に変えることが、コーチング研修の大きな役割です。
1日(6時間程度)で実施する一般的な例を見ていきます。研修会社によって名称や順番は異なりますが、「考え方を理解する」→「スキルを身に付ける」→「実践する」という流れは共通しています。
| テーマ | 主な内容 |
|---|---|
| 1. コーチングの理解 | コーチングの定義 / ティーチングとの使い分け / 上司の2つの役割 |
| 2. コーチングプロセス | 目標の明確化 / 現状の把握 / 行動の振り返り / 行動計画の作成 / フォローアップ |
| 3. 傾聴と質問 | 聴く姿勢 / かかわり行動 / 傾聴技法 / 質問の使い分け |
| 4. 承認 | 3つの承認 / 褒め方 / シェイピング / リフレーミング |
| 5. 部下に合わせた対応 | コミュニケーションの傾向で分けた4タイプ / タイプ別の関わり方 / 自チームのメンバーの傾向分析 |
| 6. コーチング実践 | ロールプレイ / チェックリストによるフィードバック |
最初に、ティーチングとの違いを整理します。ティーチングとは、知識ややり方を教えて相手に身に付けてもらう関わり方のことです。どちらが優れているというものではなく、相手の経験や状況に応じて使い分けることが大切です。
| 項目 | ティーチング | コーチング |
|---|---|---|
| 関わり方 | 答えややり方を教える | 問いかけて答えを引き出す |
| 向いている相手 | 経験が浅い新人 / 業務知識が少ない人 | 一定の経験がある部下 / 自分で考える材料を持つ人 |
| 向いている場面 | 緊急時 / ルールや手順の伝達 | 目標設定 / 業務改善 / キャリアの相談 |
あわせて、上司には「チームの成果を出す役割」と「部下を育てる役割」の2つがあることを確認します。コーチングは後者を担う手段です。自分がどちらに偏っているかを振り返るワークを行うことで、受講者が研修の目的を自分ごととして捉えやすくなります。
思いつくまま質問するだけでは話が散らかるため、会話の「型」となるプロセスを扱います。一般的には次の5段階で整理されます。
GROWモデルとは
目標(Goal)、現状(Reality)、選択肢(Options)、意志(Will)の頭文字をとった、コーチングの会話を進めるための代表的な枠組み。
研修では、自分の業務を題材にプロセスに沿って目標や現状を書き出すワークを行うのが一般的です。このプロセスは、1on1ミーティングや目標設定面談の進め方としてそのまま活用できます。1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行う対話の場のことです。
傾聴とは、相手の話に関心を持ち、言葉の裏にある気持ちや考えまで受け止めようとする聴き方のことです。研修ではまず「話をさえぎらない」「すぐにアドバイスをしない」といった基本姿勢を確認し、聴いていることを相手に伝える行動を練習します。
かかわり行動とは
視線、表情や身ぶり、声の調子、相手の話題についていく姿勢などを通じて、「あなたの話を聴いています」と相手に示す行動のこと。
かかわり行動に加えて、相手の言葉をくり返す、要点を言い換える、話をまとめる、相手の気持ちを言葉にして返すといった基本的な傾聴技法も扱います。こうした技法を使うと、部下は「わかってもらえた」と感じやすくなり、本音を話しやすくなります。
質問では、2種類を目的に応じて使い分けます。
| 質問の種類 | 特徴 | 例 | 使う場面 |
|---|---|---|---|
| オープン質問 | 相手が自由に答えられる | 「どう進めたいと考えていますか」 | 考えを広げたいとき |
| クローズド質問 | はい / いいえで答えられる | 「期限は金曜日で合っていますか」 | 事実を確認したいとき |
また、「なぜできなかったのか」のような問いは責められていると受け取られやすいため、「何があればできそうか」と先に目を向ける聞き方に変える練習もします。最後はペアで聴き手と話し手を交代しながらロールプレイを行います。
承認とは、相手の存在や行動、成果を認め、言葉や態度で伝えることです。承認された部下は安心して考えを話せるようになり、主体的に動きやすくなります。一般的には次の3つの承認を扱います。
存在承認
挨拶や名前を呼ぶなど相手の存在そのものを認める
行動承認
結果が出る前の努力や工夫など過程を認める
結果承認
達成した成果や数字を認める
褒め方では、何がどう良かったのかを具体的に伝える練習をします。さらに2つの考え方も扱います。シェイピングとは、目標とする行動をいきなり求めるのではなく、小さなステップに分け、できた段階ごとに認めていく方法です。リフレーミングとは、物事を見る枠組みを変え、別の角度から捉え直すことを指します。
Before
あの部下は慎重すぎて仕事が遅い
After
あの部下は確認を怠らずミスが少ない
同じ言葉でも受け取り方は部下によって異なるため、タイプ別の関わり方を考えます。代表的なのは、「自分の意見を主張する度合い」と「感情を表に出す度合い」の2つの軸で4つのタイプに分ける方法です。
| タイプ | 特徴 | 関わり方のポイント |
|---|---|---|
| 行動重視タイプ | 結論を急ぐ / 決断が早い | 結論から話す / 任せる範囲を明確にする |
| 感覚重視タイプ | 話好き / アイデアが豊富 | 意見を歓迎する / 注目していることを伝える |
| 協調重視タイプ | 周囲に気を配る / 争いを好まない | 安心できる雰囲気をつくる / じっくり聴く |
| 分析重視タイプ | 慎重 / 根拠を大切にする | 情報やデータをそろえる / 考える時間を渡す |
研修では、自チームのメンバーにタイプを当てはめ、関わり方を見直すワークを行います。タイプ分けは部下にレッテルを貼るためではなく、関わり方の引き出しを増やすためのものです。
最後に、扱ったスキルをすべて使ってロールプレイを行います。一般的には3人1組になり、上司役、部下役、オブザーバーの3つの役を交代しながら進めます。オブザーバーとは、会話には加わらず横で観察し、気づいたことを伝える役割です。
ロールプレイで使うチェックリストの例
題材には実際の部下とのやりとりを使うことが多いです。チェックリストをもとに第三者から指摘を受けることで、「質問のつもりが誘導になっていた」など、自分では気づけない癖が見えてきます。
コーチング研修では、目的の異なる3つの演習形式を組み合わせます。研修を選ぶ際は、どの形式がどのくらい含まれているかを確認しておくと安心です。
| 形式 | 進め方 | 身に付くこと |
|---|---|---|
| ロールプレイ | 上司役と部下役に分かれて会話を再現する | 実際の会話で使える話し方 / 自分の癖への気づき |
| ケーススタディ | 職場で起こりそうな事例を読んで対応を考える | 状況に応じた判断力 / 考え方の引き出し |
| グループワーク | 受講者同士で課題や工夫を話し合う | ほかの受講者の視点 / 職場で試すアイデア |
特にロールプレイは、コーチング研修の効果を左右する中心的な演習です。形だけにならないよう、冒頭で「失敗してよい場」であることを共有してから取り組みます。
ここまで見てきたカリキュラムは、コーチングの基本を1日で一通り体験できる構成になっている点が特徴です。プロセス・スキル・実践をつなげて扱うため、初めての方でも全体像をつかみやすくなっています。
導入を検討したい職場の状況
研修後は、上司の関わり方が「指示する」中心から「問いかけて引き出す」方向へ少しずつ変わっていきます。部下との会話で意識すべきポイントが明確になるため、日々の関わりを見直すきっかけになります。
コーチング研修の基本的な内容は共通していますが、対象者によって重点の置き方が変わります。受講者の立場に合わせて題材や演習の比重を調整することで、研修の内容を職場で使いやすくなります。
管理職向けでは、目標管理や評価面談と結びつけて扱うことが多いです。目標管理とは、上司と部下で目標を決め、達成度をもとに評価や育成を行う仕組みです。部下自身に目標を考えてもらう場面や、評価を伝えたあとに次の行動を一緒に考える場面で、コーチングのプロセスがそのまま役立ちます。
リーダーや中堅社員向けでは、日常の声かけや相談対応での使い方が中心です。傾聴と承認を軸に、意見を言いやすいチームづくりにつなげます。
OJTとは、職場で実際の業務を通じて先輩が新人や後輩を指導する育成方法です。相手は経験の浅い新人が多いため、ティーチングの比重も大きくなります。教える場面と考えさせる場面をどう切り替えるかが、研修の中心的なテーマになります。
コーチング研修は、受講して終わりにすると効果が薄れやすいテーマです。研修の前後に職場での取り組みを組み合わせることで、研修の内容が習慣として根づきやすくなります。研修担当者が押さえておきたいポイントは次の3つです。
事前に課題を集める
受講者が部下との関わりで困っていることを聞き取り研修会社との打ち合わせで共有する
直後に試す場をつくる
研修後1〜2週間以内に1on1を設定し身に付けたスキルを実際に使う
振り返りの機会を設ける
数か月後にフォローアップ研修などでうまくいったことと課題を共有する
受講者の上司にも研修の内容を共有しておくと、職場で試しやすい雰囲気が生まれます。
最後に、研修担当者がよく抱える課題ごとに、リスキルのコーチング研修を紹介します。時間や対象者、目的に合わせて選べるよう、内容の異なる研修を用意しています。実施形式ごとの費用感も先に把握しておくと、社内での予算申請も進めやすくなります。
業務の都合で長い時間を確保しにくい場合は、半日で受講できる研修が向いています。コーチングの理解、傾聴、部下のタイプに合わせた対応に絞り、基本を効率よく押さえられます。
管理職に受講させる場合は、管理職の役割を確認したうえでコーチングのプロセスやスキルを一通り扱う研修が合っています。最後にロールプレイで実践するため、面談ですぐに試せる状態を目指せます。
基本は理解しているものの職場で使いこなせていない場合は、演習中心の研修が選択肢になります。基本的な場面に加え、難易度の高い場面での対応も練習します。
上司と部下の関係だけでなく、メンバー同士で成長を支え合いたい場合は、相互コーチングを扱う研修があります。相互コーチングとは、立場の近いメンバー同士が互いにコーチ役となって問いかけ合う方法で、ピア・コーチングとも呼ばれます。
コーチング研修の内容は、知識、傾聴・質問・承認などのスキル、ロールプレイを中心とした実践の3つで構成されています。一般的なカリキュラムでは、コーチングプロセスを押さえたうえで各スキルを練習し、最後のロールプレイで自分の癖に気づく流れになっています。
研修を選ぶ際は、受講者の立場に合った題材や演習が含まれているかを確認しましょう。研修の前後に課題の収集や実践の場を用意することで、内容が職場に根づきやすくなります。自社の課題を整理したうえで、目的に合ったコーチング研修を検討してみてください。
リスキル事務局が記事の執筆・監修をしています。人材育成にまつわるお役立ち情報を分かりやすく解説します。
■社員研修のリスキルとは?
社員研修のリスキルは、一人でも多くの人に人材育成を届けるために、利便性の高い研修サービスを提供しています。検索をすれば、一社で実施する研修、日程が決まっている参加型公開講座、eラーニング動画講座などをすぐに見つけ、簡単に申込みや見積書を作成することができます。
■プロフィール
会社名:株式会社リスキル
(「リスキル」は株式会社リスキルの登録商標です。)
設立:2022年5月2日
上場市場:東京証券取引所グロース市場
■研修実績
・利用社数は年間3900社以上
・年間受講者数 前年比157%
・プロフェッショナルの講師陣300名以上在籍