新入社員研修で報連相やビジネスマナーを身に付けたはずなのに、配属後の現場ではうまく使えていない。人事担当者から、こうした声が聞かれることがあります。その差を埋めるために行われるのが、新入社員フォローアップ研修です。
この記事では、新入社員フォローアップ研修とは何かを見ていきます。新入社員研修やOJTとの違い、対象者の決め方、実施時期の考え方もあわせて整理します。ぜひ参考にしてください。
目次
新入社員フォローアップ研修とは、一定期間働いた新入社員が、実務での経験や課題を振り返り、次の成長に生かすための研修です。「新人フォローアップ研修」と呼ばれることもあります。入社時の研修で身に付けた基本を、現場で実際に使える力へと変えていくことがねらいです。
対象者
実務を経験した新入社員
研修時間の目安
半日〜1日
フォローアップとは、一度行ったことの後を追い、補強することを指します。この研修で補強するのは、入社時の研修で身に付けた基本です。ただし、新入社員研修と同じ内容を一から扱い直すわけではありません。受講者自身の実務経験を材料に、基本が現場で生かせているかを確かめます。
入社時の研修は、業務を経験する前に行われます。そのため、研修で「わかった」ことが、現場でそのまま「できる」とは限りません。両者の間には、次のような違いがあります。
| 入社時の研修 | 配属後の現場 |
|---|---|
| 決まった例で練習する | 相手や状況が毎回違う |
| 全員が同じ基本の型を知る | 配属先ごとに仕事の進め方やルールがある |
| 演習でできると身に付いたと感じる | 環境に合わせるうちに自己流になる |
例えば、上司が忙しそうで報告のタイミングに迷う場面は、研修では想定しきれません。しかも本人は問題ないと思っているため、「わかっている」と「現場でできる」のずれに自分では気付きにくいのです。このずれに気付き、埋めていく場がフォローアップ研修です。
新入社員研修とフォローアップ研修は、扱うテーマが重なる部分もあります。大きな違いは、同じテーマでも扱い方が異なる点です。新入社員研修は基本の型を知る場です。フォローアップ研修は、自分の経験をその型に照らして見直す場です。
| テーマ | 新入社員研修での扱い方 | フォローアップ研修での扱い方 |
|---|---|---|
| 報連相 | 報告の順序や相談のタイミングの基本を知る | 自分の報告が遅れた場面を振り返り原因を考える |
| 優先順位 | 重要度と緊急度で仕事を整理する考え方を知る | 実際に抱えている仕事を並べて順番を見直す |
| 伝え方 | 結論から話す型を知る | 上司への報告を例に伝わらなかった理由を探す |
| 目標設定 | 社会人1年目の目標を立てる | 実務で見えた課題をもとに目標を立て直す |
入社時は業務経験がないため、一般的な事例を使うしかありません。フォローアップ研修では、受講者自身の失敗や迷いが教材になります。自分の経験を題材にするため、自己流になっている部分に気付きやすくなります。
2つの研修は、一続きの育成として設計すると効果的です。新入社員研修の内容を踏まえてフォローアップ研修を組めば、1年目を通して段階的に育成できます。
配属後は、OJTや上司との面談を通じて、実際の仕事をしながら成長していきます。ただ、配属後の経験を振り返ったり、同期と共有したりする機会は日々の業務の中では限られます。フォローアップ研修は、配属後の経験を整理し、次の成長につなげるための機会になります。
| 職場(OJT・面談)だけだと | フォローアップ研修なら | |
|---|---|---|
| 仕事の基本 | 配属先によって教え方に差が出る | 全員が同じ基準で確認できる |
| 自分の進め方 | 同期と比べる機会が少ない | 同期の工夫を知り、自分を客観的に見られる |
| 悩みの相談 | 評価する上司には弱みを出しにくい | 同じ立場の同期なので本音を出しやすい |
報連相を丁寧に指導する部署もあれば、ある程度任せる部署もあります。どちらが正しいわけではありませんが、新入社員の間に差が生まれます。差が大きいまま2年目を迎えると、同期の間で仕事の進め方に開きが出ます。研修で全員が同じ基準で基本を確認すれば、配属先による差を埋めやすくなります。
配属先によっては、同じ年次の社員が近くにいないこともあります。同期の工夫やつまずきを聞くと、自分のやり方を客観的に見られます。「その進め方もあるのか」という発見は、同じ立場の相手と話すからこそ得られるものです。
自分を評価する立場の上司には、弱みや迷いを打ち明けにくいものです。同期と話し合うと、同じ壁にぶつかっているのは自分だけではないと感じられます。会社側も、研修での発言から新入社員の状況をつかみ、配属先へのフィードバックやOJTの見直しに生かせます。
新入社員フォローアップ研修の主な対象は、配属先で一定期間実務を経験した新入社員です。基本は、同じ年度に入社した新卒社員全員を対象にします。そのうえで、企画の段階で迷いやすいのが次の2点です。
対象を課題がありそうな人だけに絞ると、「できていない人が受ける研修」という印象を与えてしまいます。受講者が身構え、本音を話しにくくなります。全員で受けることで、順調に成長している新入社員にとっても、基本を固め直し、次のステップへ進む土台をつくる機会になります。順調な新入社員の工夫は、ほかの同期の参考にもなります。
第二新卒や中途入社者を含めるかは、会社によって判断が分かれます。迷ったときは、次の3点が判断の目安になります。
第二新卒や中途入社者を含めるかの判断材料
同じ新入社員研修を受けていれば、振り返りの基準が共通なので含めやすくなります。一方、社会人経験の長い中途入社者には、フォローアップ研修とは別の形でフォローするほうが合う場合もあります。
新入社員フォローアップ研修は、配属先の業務をある程度経験した後に行います。4月入社であれば、入社2〜3か月後と1年目の終わりが代表的なタイミングです。どちらを選ぶかは、研修で何を確かめたいかによって決まります。
| 実施時期の目安 | 確かめたいこと | テーマの例 |
|---|---|---|
| 入社2〜3か月後(6〜7月頃) | 基本が現場で使えているか | 主体性の発揮 / コミュニケーション / 仕事への取り組み方 |
| 1年目の終わり(2〜3月頃) | 1年間でどこまで成長したか | 1年間の振り返り / キャリアデザイン |
業務の流れがつかめてきた一方で、自己流のやり方が出始める時期です。まだやり方を修正しやすいため、基本が現場で使えているかを早めに確かめたい場合に適しています。
1年間の仕事を振り返り、2年目に向けた目標を立てる時期です。2年目になると、後輩の手本になる場面も増えます。後輩が入ってくる前に、自分の役割を見つめ直す機会にもなります。キャリアの考え方を扱うと、2年目以降の成長の方向性を描きやすくなります。
実施時期が早すぎても遅すぎても、研修の効果は薄れます。それぞれ次のような問題が起きやすくなります。
| 実施時期 | 起きやすい問題 |
|---|---|
| 早すぎる場合 | 振り返る経験が少なく新入社員研修の繰り返しになりがち |
| 遅すぎる場合 | 自己流が習慣になり修正に時間がかかる |
新入社員フォローアップ研修の主な目的は、「ビジネススキルの再確認」「現場で生じた課題の整理」「仕事への取り組み方の見直し」「今後の目標設定」の4つです。
ビジネススキルの再確認
現場で崩れた基本の型を早い段階で立て直す
現場で生じた課題の整理
一人で抱えている悩みを言葉にし、打ち手を考える
仕事への取り組み方の見直し
仕事の目的を意識し、時間の使い方を改める
今後の目標設定
実務で見えた課題をもとに2年目の目標を描く
これらの目的を果たすことで、新入社員と会社の双方に次のような効果が期待できます。
| 対象 | 期待される効果 |
|---|---|
| 新入社員 | 身に付けた基本が現場での行動として定着する / 配属後の不安が和らぐ |
| 会社 | 新入社員の状況をつかめる / 配属先へのフィードバックやOJTの見直しに生かせる / 早期離職の防止につながる |
新入社員フォローアップ研修のテーマは、配属後に起きやすいつまずきから逆算して選ぶと、受講者にとって身近な内容になります。代表的なつまずきと、対応するテーマは次のとおりです。
| 配属後によくあるつまずき | 対応するテーマ |
|---|---|
| 報告が遅れる / 要点が抜ける | 報連相 / コミュニケーション |
| 話があちこちに飛び何を伝えたいのか伝わらない | ロジカルシンキング |
| 仕事が重なると順番を決められない | タイムマネジメント / 仕事の進め方 |
| 指示を待ってしまう / 目標があいまい | 主体性 / 目標設定 |
実際の研修では、1つのつまずきに対して複数のテーマを組み合わせることもあります。例えば報告のつまずきには、報連相の基本に加えて、要点を整理して伝えるロジカルシンキングも役立ちます。
報連相やロジカルシンキングなど、仕事の基本を見直したい場合はビジネススキル編が合います。
タイムマネジメントなど、仕事の進め方や取り組む姿勢を見直したい場合は仕事への取り組み方を中心とした内容が合います。
指示待ちの状態から抜け出し、自ら動く力を高めたい場合は主体性発揮をメインに扱う研修が合います。
新入社員フォローアップ研修の効果は、研修当日の内容だけでは決まりません。研修前の準備と、研修後に職場へつなぐ流れまで設計しておくことが大切です。
新入社員には、実務を経験した今だからこそ研修を受ける意味があると伝えましょう。目的に納得していれば、受講者は自分事として研修に向き合えます。
評価の場だと感じると、受講者はできていない部分を隠そうとします。本音で振り返れるよう、配属先の上司は同席しない形が向いています。
アンケートなどで課題や悩みを集めておくと、研修内容を調整できます。どのテーマに時間をかけるべきかも判断しやすくなります。自社で実際にあった事例を題材にすると、より実務に即した研修になります。
研修で立てた目標は、職場で実践して初めて意味を持ちます。上司に共有しておけば、日々のOJTや面談で目標の進み具合を確かめられます。研修で気付いた課題を上司も把握していれば、日々の声かけも具体的になります。
新入社員フォローアップ研修は、一定期間働いた新入社員が、実務での経験や課題を振り返り、次の成長に生かすための研修です。新入社員研修と同じテーマでも、受講者自身の経験を材料にする点が大きな違いです。OJTでは補いにくい配属先ごとの差を埋め、同期と悩みを共有する場にもなります。
実施時期は、4月入社なら入社2〜3か月後や1年目の終わりが代表的です。研修時間は半日〜1日が一般的です。効果を高めるには、事前に目的を伝え、研修後は配属先の上司と内容を共有しましょう。新入社員フォローアップ研修を、入社時の研修から2年目までをつなぐ育成の一部として位置づけてみてください。
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