会議を円滑に進めるうえで、ファシリテーションが重要だということは、すでにご存知の人が多いでしょう。一方で、具体的に何をする必要があるのかを言葉で説明しようとすると、意外と曖昧なままになっていることも多いはずです。
この記事を読むと、ファシリテーションの基本的な意味や目的、会議で実際に使える基本スキルがわかります。あわせて、会議で起こりやすいトラブルへの対応方法や、社内にファシリテーションを浸透させる方法も紹介します。明日の会議からすぐに試せるヒントも持ち帰れる記事にしたいと思っています。
目次
ファシリテーションとは組織が目的に向かって次の行動に進めるよう支援することを指します。会議を滞りなく進める司会進行のイメージを持たれることが多いのですが、それだけがファシリテーションではありません。
支援の中身は大きく二つに分けられます。一つは会議という場の進行を管理することです。もう一つは、参加者の心理面や関係性に働きかけ、意見の違いを価値に変えていく働きかけです。かっこよく言えば、この二つを組み合わせ、意見の違いすらも組織の推進力に変えるスキルがファシリテーションだといえます。
前述の二つの働きかけを行う人のことをファシリテーターと呼びます。ファシリテーターが適切に役割を果たすと、多様な意見が引き出され、合意形成もスムーズに進みます。反対に役割を果たせないと、発言が一部の人に偏り、対立が解消されないまま話し合いが終わってしまいます。
ここで押さえておきたいのは、ファシリテーションは進行役やリーダーだけが担うものではないという点です。会議の進行役という立場でないときも「隠れたファシリテーターだ」という意識を持つことが重要です。
これはとても大切な考え方で、会議というのは「議長だけがコントロールできる」わけではありません。誰でも会議をスムーズにできます。自身が進行役でなくても会議のファシリテーションはできるというスタンスは必要です。
多くの企業で、日々何らかの会議が開催されています。その会議の質が低いままだと、決定事項が曖昧になったり、行動に繋がらなかったりして、組織全体の生産性はもちろん、そこに参加する一人ひとりの時間や気持ちにも影響を及ぼします。
ファシリテーションはこれらの問題を解決していきます。
会議そのものに会議の価値はないというのはとても大切です。会議をしただけで仕事をした気になってはいけません。会議はそのものではなく、その後の行動によって初めて決まるという考え方は、重要です。
これまで多くの会議は、経験豊富な上司や役職者が場を仕切ることで何とか収まってきました。しかし、顧客ニーズや技術の変化の大きい時代において、経験や立場の上下だけに頼った会議運営には限界があります。声の大きい人や役職者の判断に委ねる進め方では、次のような問題が繰り返し起こりやすくなります。
経験や立場だけに頼った会議で起こりがちなこと
こうした問題は、経験や勘、立場の上下だけに頼って会議を進めている限り、何度でも同じ形で繰り返されます。だからこそ、経験や立場に依存せず、誰もが発言し、納得して次のステップに行けるファシリテーションの技術が求められています。
後に出てくる会議の種類によって途中の促しは変わりますが、基本的には共通の型があります。以下の4つのステップを押さえることで、会議の質を安定させることができます。
目的を明確にする
何のために話すのかを全員の共通認識にする
終了条件を決める
どうなれば話し合いを終えるかを共有する
本題(から脱線しない)
本題に集中し、話が逸れたらすぐに本題へ戻す
決定事項とタスクを確認する
誰が、いつまでに、何をするかを最後に確認する
会議において最も重要な準備は、目的を明確にすることです。目的が全員の共通認識になっていない会議は、話が本筋からずれていき、結論も曖昧なまま終わってしまいがちです。自身が進行役の立場であれば、冒頭で一言目的について触れるだけでも効果があります。
進行役でなくとも、「的はずれな発言をしたくはなくて、会議の目的だけ再度確認しても良いでしょうか? ○○だと私は認識していますが合っていますか?」などと確認をすることで場に共通理解が産まれます。
目的が「何のために話すか」を示すのに対し、終了条件は「どうなれば話し合いを終えるか」という到達点を示します。たとえば新規施策を検討する会議であれば、候補を3つに絞り担当者を決めるといった具体的な状態を、終了条件として設定できます。
目的が達成できればよいですが、ひとつの会議では難しいことが多く、「当会議の目的を決める」というようなイメージです。
会議が長引く要因の多くは、話題が本題から逸れていくことにあります。時間に余裕がある会議ほど、こうした脱線が起こりやすくなる傾向もあります。終了時刻をあらかじめ決めておき、話が逸れた際にはすぐ本題へ戻すという対応を徹底する必要があります。
会議の最後に必要なのは、決定事項とタスクを確認する工程です。何も決まらず、誰の行動にもつながらない会議は、開催した意味を失います。確認すべきは、誰が、いつまでに、何をするかという三点です。決定事項とタスクは、その場の共有だけで終わらせず、議事録やメールなど記録に残る形で共有しましょう。

共通の流れは上記のとおりですが、会議と一口に言っても、目的によっていくつかの種類に分けられます。
共有・整理・決定・発散という4つの目的のうち、どれに該当する会議なのかを見極めることが、良いファシリテーションに繋がります。
| 会議の種類 | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| 共有する会議 | 情報を伝える | 発信側から受信側への一方通行になりやすい |
| 整理する会議 | 業務状況を確認し合う | 参加者同士で認識のずれをそろえる |
| 決定する会議 | 意思決定を行う | 話し合いを重ねて合意形成に至る必要がある |
| 発散する会議 | アイデアを出す | その場でアイデアを出すことが求められる |
会議に何を求めるのかによって、必要な進め方は変わります。まずこの4つのうちどれに当たるのかを整理した上で、下の基本スキルを使いながら、必要な促しを行っていきます。
会議の型を理解したうえで、実際の議論の場で必要になるのが、参加者から意見を引き出し適切に導いていく技術です。代表的な4つの技術を見ていきます。
参加者が発言しない理由は、大きく分けて三つあります。発言する意欲が低い、立場や関係性を考慮して発言しない、何を発言すれば良いかわからない、という理由です。
クローズドクエスチョン
オープンクエスチョン
問いが大きすぎて何を発言すれば良いかわからない場合には、抽象度を下げて、問題を分割するスキルが役立ちます。「チームの現状についてどう思いますか」という問いより、「今日は認識を揃えることが目的なので、考えられる可能性をざっと挙げてみましょう」という問いのほうが、発言のハードルが下がります。
全員が発言を正しく理解することも重要です。日本語では最終的な主張をはっきり表現しないことも多く、何が結論かわからない発言もよく見られます。
| 発言の状態 | 対応 |
|---|---|
| 何について話しているかわからない | 論点を明らかにする質問を投げかける |
| 発言が長い、要領を得ない | 主語と述語の文章でポイントをまとめて言い換える |
| 発言が曖昧でわからない | 具体的な発言を促す質問を投げかける |
ホワイトボードや画面共有を使って意見を見える化することも効果的です。会議に置いていかれる人を出さないためにも、ファシリテーターがわかりやすいように発信することが求められます。
発言を理解した後は、議論をどの方向に向かわせるべきかを明確に示していきます。広げる、深める、止めるという3つの動きを使い分けて調整するイメージです。たとえば「他に考えることはないですか」という問いかけは論点を広げる働きかけになりますし、「反対意見の方はいらっしゃいませんか」という問いかけは意見の幅を広げる働きかけになります。
最後に結論づけていきます。問題やアイデアを出し切った後に絞り込みを行うのは、会議の有効な手法です。ただし、絞り込みを行う前に必要なのが合意を取るという行為です。基準を先に話し合って決め、その上で案や問題点を確認していくことで、合意形成が容易になります。
すべての論点で合意できない場合もあります。その際は、合意できている部分と合意できていない部分を分けて確認し、決まっていない論点については今後の決め方を決めるという条件付きの合意を会議の結論とします。
会議では対立が頻繁に起こります。対立が必ずしも悪いわけではなく、問題を先送りにしても解決には結びつきません。対立が起きた場合はWin-Winとなる状態を目指すのが基本姿勢です。誤解を解く、一息入れる、どちらも間違っていないことを確認する、上位目的を考えるという流れで対応していきます。
対立が続いて話が進まなくなったら、「そもそも我々は何をしにここに集まっているのか」と上位目的に立ち返ってみましょう。個別最適ではない議論に戻しやすくなります。
対立への対応に加えて、評論家タイプ、暴君タイプ、そもそも/なぜなぜタイプ、マイペースタイプといった、会議でよく見られるタイプへの対処法を押さえておくと、突発的な場面にも落ち着いて対応できるようになります。
顕在化した問題はファシリテーションで切り抜けられますが、そもそも顕在化しないほうが望ましいものです。そこで役立つのがグランドルールです。会議を進めるにあたっての前提ルールを、会議の冒頭で目的とあわせて共有することで、想定できる問題をあらかじめ防ぎやすくなります。
グランドルールとは
会議の中で起こりがちな問題をあらかじめ想定し、参加者全員が守るべき前提ルールとして事前に設定しておくもの。
グランドルールは基本的に一つ、多くても三つまでに抑えることがポイントです。数が多くなると、かえって発言しにくくなり会議が不活性になってしまいます。起こりそうな問題を先読みして決めておくことが、グランドルール設定の考え方です。
ここまで紹介してきたファシリテーションの考え方やスキルは、知識として知るだけでなく、実際の会議で繰り返し使うことで身についていきます。まずは自分自身が次の会議で目的や終了条件を一言確認してみるところから始めてみましょう。
社内の複数のメンバーが同じ型を共有していれば、誰が進行役になっても一定の質の会議を再現しやすくなります。個人のスキルアップにとどめず、チームや部署全体に浸透させたいと考える人事担当者の方に向けて、体系的に身に付ける研修もリスキルでは用意しています。
こんな人におすすめ:初めてファシリテーションを学ぶ人、会議運営の基本を体系的に押さえたい組織
こんな人におすすめ:基礎を押さえたうえで、実際の会議に近い演習を繰り返し実践力を高めたい組織
こんな人におすすめ:ロジカルシンキングとあわせて学び、納得感のある合意形成を目指したい組織
こんな人におすすめ:少人数から気軽に、個人単位でも申し込みたい人
自社の課題や、育成したい層に合わせて、基礎から身に付ける研修と、実践を繰り返す研修を組み合わせるのも一つの方法です。研修の一覧はファシリテーション研修のカテゴリページからも確認できます。
ファシリテーションとは、組織が目的に向かって次の行動に進めるよう支援することです。会議の進行管理だけでなく、参加者の心理面や関係性への働きかけも含めたスキルであり、進行役やリーダーでなくても発揮できるものです。
会議には共有、整理、決定、発散という4つの種類があり、それぞれに合わせて目的と終了条件を明確にすることが、良い会議の土台になります。そのうえで、発言を引き出す、理解し共有する、方向づける、結論づけるという4つのステップを押さえることで、議論を行動につなげやすくなります。
対立やグランドルールへの対応も含めて、こうしたスキルは実践の場数を踏むことで着実に身についていきます。まずは次回の会議で、目的と終了条件を確認するところから試してみることをおすすめします。
リスキル事務局が記事の執筆・監修をしています。人材育成にまつわるお役立ち情報を分かりやすく解説します。
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■プロフィール
会社名:株式会社リスキル
(「リスキル」は株式会社リスキルの登録商標です。)
設立:2022年5月2日
上場市場:東京証券取引所グロース市場
■研修実績
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・プロフェッショナルの講師陣300名以上在籍