ジョブ・クラフティングは、従業員が仕事の進め方や捉え方を主体的に工夫することで、エンゲージメントや定着率の向上につなげられる考え方として、多くの企業で注目されています。この記事では、人事担当者向けに、ジョブ・クラフティングのメリットを確認したうえで、社内に浸透させるための具体的な実践方法を見ていきます。
目次
「ジョブ・クラフティングがエンゲージメント向上に効くらしいと聞いたが、自社でどう活かせばいいのかわからない」「とりあえず研修を実施してほしい」─人事担当者から、こうした声をよく聞きます。概念はわかりやすくとも、社内に浸透させ、実際の成果につなげるのが難しいのがジョブ・クラフティングです。
本記事ではメリットを改めて言語化しながら、人事が社内で実践していくための方法について、次の内容を見ていきます。
結論から言いますと、ジョブ・クラフティングのメリットは、従業員個人の満足度向上だけではありません。エンゲージメント・定着率・生産性という、人事が日頃追いかけている複数の指標に横断的に効いてきます。ただし、効果を出すには「社員に任せきり」にせず、人事が仕組みとして設計・後押しすることが欠かせません。

なお、ジョブ・クラフティングの定義や3つの要素(タスク・リレーショナル・コグニティブ)そのものを詳しく知りたい方は、ジョブクラフティングとは? 意味・3つの要素・メリットと実践方法を解説で基礎から解説していますので、あわせてご覧ください。本記事では、そのメリットを人事としてどう活かし、どう実践に落とし込むかという点に絞って解説します。
まずは、ジョブ・クラフティングのメリットを、人事担当者が普段扱う指標に沿って整理してみます。
| 人事指標 | ジョブ・クラフティングによる効果 |
|---|---|
| エンゲージメントスコア | 仕事への当事者意識が高まり、会社への貢献意欲が向上しやすくなる |
| 離職率・定着率 | 「やらされ感」が減ることで、離職の主要因のひとつが緩和される |
| 生産性・業務効率 | 自分なりの工夫が業務効率の改善につながりやすくなる |
| 従業員満足度調査(ES) | 所有感・達成感・成長実感のスコアが向上しやすくなる |
| 社内提案・改善件数 | 現場発の業務改善提案が増え、ボトムアップの改善文化が育ちやすくなる |
こうしたメリットは、いずれも「一過性の取り組み」ではなく「継続的な仕組み」として設計して初めて発揮されます。
特に押さえておきたい注意点は次です。
ジョブ・クラフティングは従業員の主体性に基づく取り組みですが、何をどう工夫すればよいかの視点や具体例を示すサポートがなければ、多くの現場では取り組みが広がりません。人事による後押しが成否を分けます。
促したり、研修を実施するだけではなかなか効果はでません。従業員のそれぞれが頑張っても、そこに障壁があれば、努力が霧散霧消してしまうのがジョブ・クラフティングの特徴です。また、時間のも特徴です。すぐには効果が発揮されません。改めてメリットと注意点を比較すると、人事の介入の重要性がわかります。
メリット
注意点
上記を考えると、次の3点は必須です。
これらを考えると、人事担当者は次のようなロードマップがわかりやすいでしょう。
(必要であれば)現状の可視化
エンゲージメントサーベイ等で「やらされ感」の所在を把握する
理解の浸透
研修や勉強会で、管理職・従業員に考え方と具体例を伝える
仕組み化
1on1や振り返りの場に組み込み、継続できる仕組みにする
そもそも実施するべきかということを確認するフェーズです。
エンゲージメントサーベイや従業員満足度調査を活用し、部署ごと・階層ごとに「やらされ感」を感じやすいポイントを可視化します。数値だけでなく、現場ヒアリングで具体的な業務の声を拾っておくと、後の伝え方や研修の設計に活かせます。
サーベイ等の結果を見て、必要であると考えられたら、研修や勉強会を実施します。
人事が「工夫してください」と発信するだけでは、多くの社員は何から手をつければよいかわかりません。業務の工夫・人間関係の工夫・意味づけの工夫という3つの視点を、具体例とともに学べる場を用意することが効果的です。特に管理職には、部下の工夫を後押しする立場としての理解を先に深めてもらう必要があります。部下の工夫を止めてしまっては、ジョブ・クラフティングは確実にうまくいきません。

社内浸透の第一歩として、体系化されたカリキュラムを活用したい場合は、ジョブ・クラフティング研修【指示待ち社員が自ら動き出す】のような研修も選択肢のひとつです。
研修で学んだ内容を一過性にしないためには、日常業務の中に振り返りの機会を組み込むことが重要です。上司との1on1で「最近工夫したこと」を話す時間を設けたり、月次でチーム内の工夫を共有する場を設けたりすることで、取り組みが定着しやすくなります。
1on1で確認したい問い(例)
毎回工夫がなければいけないわけではありません。聞くだけでもそれを後押ししている効果があり、継続することが大切です。
エンゲージメントスコアや離職率といった定量指標に加え、現場から出てきた工夫の好事例を集めて社内で共有することも効果的です。他部署の成功事例は、次の実践者にとって具体的なヒントになります。
ジョブ・クラフティングの浸透は、階層や課題によって適したアプローチが異なります。自社の状況に応じて、関連する研修を組み合わせて検討するのもひとつの方法です。
| 課題・対象 | 検討したい研修の方向性 |
|---|---|
| 中堅社員のモチベーション低下 | 業務経験を積んだ中堅層向けの意識づけ研修 |
| ベテラン社員のマンネリ化 | 長年の経験を活かした役割の再定義を促す研修 |
| キャリアの見通しが持てない社員が多い | 仕事の意味づけとキャリアを結びつける研修 |
たとえば、中堅層の意識づけには中堅社員モチベーションアップ研修、ベテラン層の役割再定義にはベテラン社員モチベーションアップ研修、仕事の意味づけとキャリアの結びつけにはキャリアデザイン研修【キャリアを考える導入研修】といった研修を組み合わせることで、ジョブ・クラフティングの3つの視点をより多面的に補強できます。
制度や研修だけでなく、日々の声かけも定着を左右する要素です。
部下が業務のやり方を工夫して提案してきたときは、まず「なぜそうしたのか」を聞くようにしています。理由を聞くだけで、部下の主体性がぐっと引き出される感覚があります。
小さな改善でも「いいね」と一言伝えるだけで、次の工夫につながりやすくなると感じています。
こうしたコミュニケーションの姿勢を管理職層に広げていくうえでは、部下との対話の質そのものを底上げする研修をあわせて検討するのも有効です。
ジョブ・クラフティングのメリットは、従業員個人のやりがい向上にとどまらず、エンゲージメント・定着率・生産性・改善提案の増加といった、人事が日頃追いかけている複数の指標に横断的に効いてきます。一方で、社員任せにするだけでは形骸化しやすく、効果が数値に表れるまでには一定の時間もかかります。
人事担当者としては、現状の可視化、研修による理解浸透、1on1や振り返りへの組み込み、成果測定と好事例の横展開という一連の流れを、階層や課題に応じた研修と組み合わせながら設計することが、メリットを実際の成果につなげるポイントです。
自社での導入を検討される際は、まず対象者や課題を明確にしたうえで、研修や導入説明会を開催することをおすすめします。リスキルの研修ジョブ・クラフティング研修もご参考ください。
リスキル事務局が記事の執筆・監修をしています。人材育成にまつわるお役立ち情報を分かりやすく解説します。
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■プロフィール
会社名:株式会社リスキル
(「リスキル」は株式会社リスキルの登録商標です。)
設立:2022年5月2日
上場市場:東京証券取引所グロース市場
■研修実績
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