リスキルラボ アサーティブコミュニケーションの実践例|職場での伝え方と聴き方

アサーティブコミュニケーション研修
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アサーティブコミュニケーションの考え方を理解していても、実際の場面では言葉が出てこないという人は沢山います。例えば、部下に注意するときや、上司に反対意見を伝えるときなどは、つい強く言いすぎたり、言いたいことを飲み込んだりするなどは意識していても起きがちです。

この記事では、職場でよくある6つの場面を取り上げ、アサーティブでない言い方と言い換え例を並べて紹介します。あわせて、言い換えのコツや、実践例を社内で活用する方法も整理します。研修の教材づくりの参考としても、研修を受けた社員が読み返す資料としても活用できる内容です。

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実践例を見る前に押さえたい3つの視点

アサーティブコミュニケーションとは、自分も相手も尊重しながら、意見や気持ちを率直に伝えるコミュニケーションです。ただ、職場では「相手を尊重して伝えられているか」だけでなく、「仕事を進めるために必要なことが伝わっているか」も重要になります。

そこでこの記事では、アサーティブコミュニケーションの考え方に加えて、職場でのコミュニケーションとして機能しているかという観点から、次の3つの視点で言い方を見直していきます。

1

要望が具体的か

相手に何を、いつまでに、どの程度してほしいのかが伝わっているか

2

相手の事情に触れているか

相手の状況や考えを確認し、受け止める言葉が入っているか

3

次の行動が決まるか

会話のあと、お互いに何をするかがはっきりしているか

1と2は、相手への配慮と自分の考えを率直に伝えるという、アサーティブコミュニケーションの基本に関わる視点です。3は、それに加えて、職場でのコミュニケーションとして仕事を前に進められるかを見る視点です。自分の意見を伝えるだけでなく、相手を尊重しながら、必要な行動までつなげることが職場では重要です。

攻撃的・受動的な伝え方との違いや、アサーティブの基本姿勢については、次の記事で整理しています。

職場で使えるアサーティブコミュニケーションの実践例

ここからは、職場でよくある6つの場面について、アサーティブでない言い方(Before)とアサーティブな言い方(After)を並べて紹介します。Beforeには、攻撃的な例と受動的な例の両方を取り上げています。

部下に新しい仕事を任せるとき

毎月の売上データの集計を、入社2年目の部下に引き継ぎたい場面です。部下は、すでに別の案件も担当しています。

Before

「来月から売上集計はあなたの担当だから、やっておいて。やり方は前のファイルを見れば分かるでしょう」

→

After

「来月から、毎月の売上集計をお願いしたいと考えています。結果は部の会議資料に使うので、毎月5営業日目までに共有してください。初回は一緒に進めましょう。今の案件と重なって難しい点があれば、先に相談してください」

Beforeは、一方的に押し付ける攻撃的な言い方です。何のための仕事なのか、いつまでに何をすればよいのかが部下に伝わりません。Afterでは、目的・期限・相談できる余地をセットで伝えています。目的が分かれば、部下は集計の重要度を判断できます。相談の余地を示しておくと、ほかの業務との調整も早い段階で話し合えるでしょう。

一方で、「もし余裕があればでいいんだけど……」と遠慮しすぎるのは受動的な言い方です。任せたい仕事は、依頼としてはっきり伝えることが大切です。

他部署からの依頼を断るとき

自分は今週金曜締め切りの提案書を作成しています。そこへ他部署の担当者から、展示会資料の作成を手伝ってほしいと頼まれました。展示会資料は、来週水曜までに仕上げる必要があるそうです。

Before

「あ、はい……大丈夫です。なんとかやってみます」

→

After

「声をかけていただき、ありがとうございます。今週は金曜締め切りの提案書を優先する必要があり、今週中のお手伝いは難しい状況です。来週月曜からであれば資料の確認をお手伝いできますが、いかがでしょうか」

Beforeのようにその場で引き受けると、提案書と展示会資料の両方が遅れるおそれがあります。そうなれば、依頼した相手にも迷惑がかかります。Afterでは、引き受けられない理由を事実で伝え、できる範囲を提案しています。

「今は無理です」と突き放すのは攻撃的な断り方です。相手の期限に間に合う代替案を出せば、断りながらも協力する姿勢が伝わります。どちらを優先すべきか判断に迷う場合は、上司に確認してから返答するのも一つの方法です。

部下に改善を求めるとき

部下が担当する資料の進捗報告が、毎回期限の直前まで上がってきません。今月も作業の遅れが分かったのは提出の前日で、ほかのメンバーに急ぎで対応してもらうことになりました。

Before

「なんでいつも報告が遅いの? もっと早く言ってくれないと困るよ」

→

After

「今回の資料は、遅れていると分かったのが提出の前日でした。そのため、ほかのメンバーに急ぎで対応してもらうことになりました。今後は、遅れそうだと分かった時点で、その日のうちに一言伝えてもらえますか」

Beforeの「なんで」「いつも」は、理由を尋ねているようで、実際には相手を責める言葉として受け取られます。Afterでは、起きた事実、その影響、今後してほしい行動の順に伝えています。人ではなく行動に焦点を当てているため、部下は何を変えればよいかが分かります。

注意したあと、部下から「ほかの案件が忙しくて、報告する余裕がなかったんです」と返ってくることもあるでしょう。ここで「言い訳はいいから」と打ち切ると、部下は本音を話さなくなります。次のように、事情を受け止めたうえで、依頼の内容は変えずに伝え直します。

「そうだったんですね。忙しいときほど、早めに知らせてもらえると調整がしやすくなります。案件が重なっているなら、優先順位も一緒に確認しましょう」

上司に意見を伝えるとき

上司が、新サービスのリリース日を1か月前倒しする方針を決めました。担当者である自分は、テスト期間が足りなくなるのではないかと懸念しています。

Before

「……分かりました。なんとか間に合わせます」

→

After

「前倒しの背景を教えていただけますか」
(上司の説明を聞いたうえで)
「事情は理解しました。ただ、今の計画のままだとテスト期間が2週間から1週間に縮まり、不具合を見逃すおそれがあります。主要な機能だけを先にリリースする方法はいかがでしょうか」

Beforeのように黙って従うと、懸念が共有されないまま計画が進みます。問題が表面化した時点では、取れる対策が限られてしまうかもしれません。Afterでは、まず方針の意図を確認しています。そのうえで、懸念を根拠とともに伝え、代案を示しています。

上司の判断を否定するのではなく、目的を達成するための選択肢を増やす姿勢で伝えることがポイントです。反対に、「その日程では無理です」と即座に否定すると、攻撃的な言い方になってしまいます。

同僚と意見が分かれたとき

社内アンケートの実施方法について、同僚と打ち合わせをしています。同僚は全社員を対象にしたいと考え、自分は対象部署を絞ったほうがよいと考えています。

Before

「いや、全社員は無理だよ。集計が大変になるだけだと思う」

→

After

「全社員に聞けば部署ごとの違いも比べられる、という点はそのとおりだと思います。ただ、今回の目的は来月の施策を決めることなので、集計に時間がかかると間に合わないかもしれません。まず対象部署に絞って実施し、必要があれば全社に広げる進め方はどうでしょうか。どちらが目的に合うか、一緒に整理しませんか」

「いや」「無理」から始めると、相手は意見を否定されたと感じ、反論で応じたくなるものです。Afterでは、同意できる点を先に示し、そのうえで懸念と提案を伝えています。さらに「目的」という共通の基準を持ち出しています。これにより、どちらの意見が正しいかではなく、目的に合うのはどちらかという話し合いに変わります。

なお、相手に合わせて自分の意見を言わずに終えるのは、受動的な対応です。打ち合わせのあとに不満を残さないよう、懸念はその場で伝えましょう。

部下から相談や反対意見を受けたとき

この場面では、聴く側の実践例を取り上げます。自分の部署で、新しい日報フォーマットを導入しました。すると部下から、「この形式だと記入に時間がかかって、かえって業務が回らない」と言われました。

Before

「それは慣れの問題だよ。最初はみんなそう言うから、しばらく続けてみて」

→

After

「記入に時間がかかっているんですね。具体的には、どの項目に時間がかかっていますか」
(部下の説明を聞いたうえで)
「つまり、案件ごとに同じ内容を何度も書く部分が負担になっている、ということですね。進捗を早めに共有するという目的を保てる範囲で、項目をまとめられないか検討します」

Beforeは、部下の話を詳しく聞かないまま、上司の結論を返しています。これでは、部下は「言っても無駄だ」と感じ、次から意見を言わなくなるおそれがあります。Afterでは、具体的に質問し、要約して確認してから自分の考えを伝えています。

聴くことは、相手の要望をすべて受け入れることではありません。要望に応えられない場合でも、話を理解したことを示し、理由を添えて伝えれば、相手も結論を受け止めやすくなります。

ポイント

6つの場面に共通しているのは、相手の事情を受け止める言葉と、自分の考えや要望を具体的に伝える言葉の両方が入っていることです。どちらか一方が欠けると、攻撃的または受動的な言い方に寄ってしまいます。言い方に迷ったときは、最初に紹介した3つの視点で見直してみましょう。

アサーティブな言い方に変える4つのコツ

6つの実践例で使った言い換えには、共通するコツがあります。ここでは、すぐに使えるフレーズ単位で整理します。事実と気持ちを分けて伝えるDESC法や、自分を主語にして伝えるアイメッセージについては、アサーティブコミュニケーションとはの記事で紹介しています。

使う場面 避けたい言い方 言い換えの例
意見が違うとき 「いや、それは違うと思います」 「〜という点は同感です。そのうえで……」
期限を伝えるとき 「なるべく早くお願いします」 「明日の15時までにお願いできますか」
依頼するとき 「本当に申し訳ないのですが、もしよければ……」 「〜をお願いしたいのですが、可能ですか」
話を締めくくるとき 「では、そういうことで」 「この方法で進めてよいでしょうか」

否定の前に「受け止めの一言」を入れる

相手の意見に反対するとき、「でも」「いや」から話し始めていないでしょうか。最初の一言が否定だと、相手はその後の内容を聞く前に身構えてしまいます。

反対意見を伝える前に、「なるほど、〜ということですね」「〜という点は同感です」と、相手の発言を受け止める一言を入れましょう。相手の意見を理解したことが伝われば、こちらの意見にも耳を傾けてもらいやすくなります。

あいまいな言葉を具体的にする

「なるべく早く」「ちゃんと確認して」といった言葉は、人によって受け取り方が異なります。依頼した側は今日中のつもりでも、相手は今週中と受け取っているかもしれません。

期限は日時で、品質は基準で示します。たとえば「ちゃんと確認して」は、「数字が元データと一致しているか確認してください」と言い換えられます。具体的に伝えることは、相手が迷わずに動けるようにするための配慮でもあります。

前置きや謝罪を重ねすぎない

依頼の前に、「お忙しいところ本当に申し訳ないのですが」「もしご迷惑でなければ」と前置きを重ねていないでしょうか。丁寧に見えても、前置きが長いと、何を頼みたいのかが相手に伝わりにくくなります。

相手への配慮を示す言葉は、一言で十分です。「お忙しいところすみません。〜をお願いできますか」のように、前置きのあとはすぐに用件に入ります。謝罪を重ねる言い方は、自分を必要以上に低い立場に置く受動的な伝え方につながる点にも注意が必要です。

最後は質問で相手に返す

自分の考えを伝えたら、「〜でいかがでしょうか」「〜で間に合いますか」と、相手に意見を求める形で締めくくります。一方的に言い切って終えると、相手は反論や補足をしにくくなるためです。

実践例でも、他部署からの依頼を断る場面では「いかがでしょうか」と相手に判断を委ねていました。同僚と意見が分かれた場面では、「一緒に整理しませんか」と投げかけています。伝えて終わりではなく、相手の反応を聞くところまでがアサーティブなコミュニケーションです。

実践例を社内で活用するには

実践例は、読んで理解するだけでは職場の言動につながりにくいものです。ここでは、研修担当者が実践例を社内で活用するときの工夫を2つ紹介します。

自社版の言い換え例を集める

この記事の実践例は、どの職場でも起こりやすい場面を想定しています。社内で活用するなら、自社の現場で実際に使われている言い回しを集めて、言い換え例とセットで一覧にする方法があります。

たとえば、管理職や各部署に「言われて困った言葉」「言いたかったのに言えなかったこと」を尋ねます。研修の事前課題として、受講者自身に集めてもらうのもよいでしょう。完成した一覧は研修後も手元に残るため、職場で言い方に迷ったときの参照資料になります。

研修で扱うケースの選び方や、カリキュラムの組み立て方は次の記事で紹介しています。

会議や1on1で使う場面を決める

言い換えのフレーズを知っていても、使う場面が決まっていなければ、日々の忙しさの中で後回しになってしまいます。「会議で反対意見を言う前には受け止めの一言を入れる」「1on1の最後は質問で締める」などと決めておきましょう。どの場面で何を試すかが具体的であるほど、実践に移すきっかけをつかめます。

管理職が率先して使うことも大切です。上司が部下の意見を最後まで聴き、要約して確認する姿を見せれば、部下もそのやり取りを手本にできます。職場で試す前に、相手役のいる場で練習しておきたい場合は、研修を活用する方法もあります。

まとめ

アサーティブコミュニケーションの実践では、相手の事情を受け止めることと、自分の要望を具体的に伝えることの両立が欠かせません。依頼や断り、注意、意見の相違など、どの場面でも、この2つを意識すると相手への伝わり方が変わってきます。

言い換えに迷ったときは、4つのコツを試してみてください。受け止めの一言を入れる、あいまいな言葉を具体的にする、前置きを重ねすぎない、質問で相手に返す、の4つです。

社内で活用する場合は、自社の現場でよく使われる言い回しを集め、使う場面を決めておきましょう。日常のやり取りの中で少しずつ試していくことが、アサーティブな伝え方を職場に根づかせる第一歩になります。

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この記事の監修者
リスキル事務局

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会社名:株式会社リスキル
(「リスキル」は株式会社リスキルの登録商標です。)
設立:2022年5月2日
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