アサーティブコミュニケーション研修を企画する際は、どのような内容を扱い、どこまで演習を取り入れるかを考える必要があります。
アサーティブコミュニケーションは、講義で考え方を伝えるだけでは職場の行動につながりにくいテーマです。聴き方・伝え方のスキルに加え、ケーススタディやロールプレイをどう組み合わせるかが、研修の手応えを分けるポイントになります。
この記事では、研修で扱う主な内容とカリキュラム例、職場ケースの選び方を紹介します。あわせて、研修時間に応じた考え方や企画時のポイントも整理します。
目次
アサーティブコミュニケーションとは、自分も相手も尊重しながら、意見や気持ちを率直に伝えるコミュニケーションです。研修では一般的に、次の4つの内容を組み合わせます。ここでは、それぞれが研修の中でどのような役割を持つかに絞って整理します。
受講者の中には、「アサーティブ=はっきり言うこと」と捉えている人もいます。そこで研修の冒頭では、攻撃的・受動的な伝え方との違いや、誠実・率直・対等・自己責任といった基本姿勢を共有します。
この段階で考え方をそろえておくと、後の演習でフィードバックするときの基準が明確になります。講義が中心のパートですが、時間をかけすぎず、演習の時間を確保できる配分にしましょう。
基本を確認したら、自己チェックなどを使って自分の伝え方の傾向を把握します。このパートは、受講者が研修を自分ごととして捉えるための入口です。
ポイントは、結果を性格の診断として扱わないことです。同じ人でも、相手や場面によって傾向は変わります。たとえば、上司の前では受動的になる一方で、後輩には強く言ってしまう人もいます。受講者に自分の苦手な場面を意識してもらうと、後半の演習で扱うケースとも結びつけやすくなります。
アサーティブ研修というと伝え方の練習を想像しがちですが、聴き方も欠かせない要素です。相手の考えを受け止めてから意見を伝えることで、主張が一方的な押し付けになりにくくなるためです。
研修では、相手に身体を向けるなどの基本姿勢や、うなずき・あいづち、質問の使い分けなどを扱います。講義で要点を示したあと、ペアで実際に聴く練習を行う流れが一般的です。
伝え方のパートでは、言いにくいことを整理して伝えるための型を使います。代表的なのがDESC(デスク)法で、伝える内容を次の4段階で組み立てます。
「私は〜と思う」と自分を主語にして伝えるアイメッセージも、DESC法とあわせて扱われることの多い手法です。
型を覚えたあとは、依頼する・断る・異なる意見を伝えるといった職場の場面に当てはめて練習します。具体的な場面で使ってみることが、研修後の実践につながります。
前章の4つの内容を「理解→自己把握→スキル→実践」の順に並べると、受講者は段階を踏んで取り組めます。以下は、1日(6時間程度)の研修を想定したカリキュラム例です。半日で実施する場合の構成例は、後の「研修時間に応じたカリキュラムの考え方」で紹介します。
| ステップ | ねらい | 主な演習の例 |
|---|---|---|
| 1. 基本理解 | 研修の目的と基本の考え方を共有する | 自分のコミュニケーション課題の書き出し |
| 2. コミュニケーションタイプの確認 | 自分の傾向を客観的に把握する | 自己チェック、タイプの比較 |
| 3. 聴き方の実践 | 相手を受け止める聴き方を身に付ける | 2人1組の傾聴ワーク |
| 4. 伝え方の実践 | 伝えたいことを型で整理する | DESC法の個人ワーク、グループ共有 |
| 5. ケーススタディ・ロールプレイ | 職場の場面で使えるようにする | 役割を決めたロールプレイ、相互フィードバック |
| 6. 振り返り・職場での実践計画 | 研修後の行動につなげる | 気づきの整理、行動計画の作成 |
研修の冒頭では、いきなり講義に入るよりも、日頃のコミュニケーションの困りごとを書き出すワークから始めるのが効果的です。グループで共有すると「同じ悩みを持つ人がいる」と分かり、発言しやすい雰囲気が生まれます。
そのうえでアサーティブの考え方を紹介し、書き出した課題との関わりを確認します。
チェックリストを使い、自分が攻撃的・受動的・アサーティブのどれに近いかを確認します。結果に優劣はなく、場面によって変わる傾向として扱うことが大切です。
「どのような相手や状況で、どのタイプが出やすいか」まで考えてもらうと、自分の課題がより具体的になります。
聴き方のポイントを示したあと、2人1組で話し手・聴き手を交代しながら練習します。話すテーマは「最近、仕事で困っていること」など、誰でも話しやすいものを選びます。
終了後に、話しやすかった点・話しにくかった点を伝え合うと、自分では気づきにくい聴き方の癖が見えてきます。
DESC法などの型を使い、提示された場面について伝える内容を書き出します。いきなり口頭で練習するよりも、まず紙の上で整理する段階を挟むと、受講者の負担が軽くなります。
個人ワークのあとにグループで共有すると、他の受講者の表現に触れ、自分の言い回しの幅を広げられます。
研修の山場となるパートです。2〜3人1組で、伝える役・相手役・観察役を交代しながら、職場を想定した場面を演じます。
相手役にあえて反論や言い訳をしてもらうと、思いどおりに進まない職場の会話に近い練習になります。観察役は、伝える役が型を使えていたか、相手の反応にどう対応したかをフィードバックします。
最後に研修全体の気づきを整理し、「いつまでに」「何をするか」を行動計画として書き出します。
計画は、いきなり難しい相手や場面を選ぶよりも、日常の小さなやり取りから試せる内容にすると実行しやすくなります。
カリキュラムを組むときは、講義と演習を交互に配置しましょう。「講義で型を示す→演習で使う→振り返る」という短いサイクルを繰り返すと、知識が行動に結びつきやすくなります。講義が長く続く構成は避け、演習に十分な時間を割くことを意識すると、受講者の集中も保ちやすくなります。
ロールプレイやケーススタディの題材は、研修の効果を大きく左右します。ここでは、研修で扱いやすい5つの場面について、ケースの設定のしかたと振り返りの観点を紹介します。
たとえば「業務が立て込んでいる同僚に、急ぎの資料作成を頼む」といった場面です。相手に納得してもらうことを目的にするのではなく、自分の状況や要望を率直に伝え、相手の意見も確認しながら話し合うことを目指します。
ケースでは、相手の状況や依頼の期限、なぜその人に頼みたいのかを設定に入れておきます。振り返りでは、依頼の目的や相手にとってのメリットを伝えられたか、謝罪の言葉から切り出していないかを見ていきます。
自分の意見を抑えがちな受講者にとって、特に練習の価値が高い場面です。断る側が抱えている業務と期限、相手からの依頼内容を具体的に設定しておくと、断る理由を事実で伝える練習になります。
振り返りでは、引き受けられない理由を客観的に伝えられたか、相手を責めるような言い方になっていないかを確認します。業務上、代わりにできることがある場合は、代替案を示せているかも確認するとよいでしょう。
「提出物の期限がたびたび遅れる後輩」「会議に準備不足で臨むことが多いメンバー」など、行動の改善を求める場面です。管理職やリーダー層の研修では、特に扱う価値があります。
相手役に言い訳や反発をしてもらうと、より実践的な練習になります。振り返りでは、人格ではなく行動に焦点を当てられたか、事実と自分の気持ちを分けて伝えられたかを確認しましょう。
上司への提案や、年上の部下への依頼、他部署への相談などが当てはまります。立場に差があると、遠慮して受動的になったり、反対に強い言い方になったりしがちです。
対象者に合わせて、若手社員なら上司への進言、管理職なら年上の部下への依頼のように設定を変えます。振り返りでは、対等な姿勢を保てたか、遠慮によって要点がぼやけていないかに注目します。
会議で反対意見を述べる、顧客の要望にそのままは応えられないことを伝えるといった場面です。相手の意見をいったん受け止めたうえで、自分の考えやその理由を伝える練習をします。
振り返りでは、相手の意見を最後まで聴いて受け止めたか、自分の意見の根拠を示せたかを確認します。
ケースは5つすべてを扱う必要はありません。受講者の階層や職場の課題に合わせて1〜3つに絞ると、限られた時間でも1つひとつを深く扱えます。
同じテーマでも、研修時間によって扱える範囲や演習の深さは変わります。基本は、時間が短い場合は内容を絞り込み、長い場合は実践の比重を高めるという考え方です。
| 研修時間の目安 | 扱う範囲 | 演習の比重 |
|---|---|---|
| 短時間(1〜2時間程度) | 基本理解+伝え方の型 | 短い個人ワーク中心 |
| 半日(3時間程度) | 基本理解・聴き方・伝え方 | 個人ワーク・ペアワーク |
| 1日(6時間程度) | 半日の内容+関係づくり・ケーススタディ・ロールプレイ | ロールプレイまで十分に実施 |
セミナー形式や、会議後の空き時間などを使って実施する場合です。扱う内容を欲張らず、アサーティブの考え方と、DESC法など伝え方の型1つに絞ります。
演習は短い個人ワーク程度になるため、意識づけの機会として位置づけるとよいでしょう。後日のフォローアップや、他の研修との組み合わせも検討できます。
基本理解・聴き方・伝え方をひと通り扱える時間です。先に紹介した1日の構成から、独立したロールプレイのパートを省く形です。ケースを使った演習は、伝え方のパートで1〜2題に絞って扱います。
3時間程度で実施する場合の構成例は、次のとおりです。
| 時間の目安 | 内容 | 主な演習の例 |
|---|---|---|
| 約35分 | 基本理解・コミュニケーションタイプの確認 | 課題の書き出し、自己チェック |
| 約60分 | 聴き方の実践 | 2人1組の傾聴ワーク |
| 約75分 | 伝え方の実践 | DESC法の個人ワーク、グループ共有 |
| 約15分 | 振り返り・職場での実践計画 | 気づきの整理、行動計画の作成 |
時間配分は休憩を含めて調整します。伝え方の演習に最も多くの時間を割き、最後は行動計画の作成で締めくくると、短い時間でも職場での実践につなげやすくなります。
初めてアサーティブコミュニケーション研修を導入する場合や、全社員に基本をそろえたい場合に検討しやすい長さです。
半日の内容に加え、ケーススタディやロールプレイに十分な時間を取れます。上司・部下など相手との関係に応じた関わり方まで扱うことも可能です。
難しい場面への対応が求められる管理職やリーダー層、すでに基本を理解している層の研修に向いています。
リスキルでは、基本・聴き方・伝え方を扱う半日研修を用意しています。関係の質の向上や実践まで扱う場合は、1日研修も選べます。どちらも研修時間は変更可能です。
研修内容を決めるときは、テーマを網羅することよりも、受講者が職場でどう行動を変えるかから逆算することが大切です。ここでは、カリキュラムを具体化する段階で押さえたい3つのポイントを紹介します。
対象者の傾向によって、カリキュラムの比重は変わります。言いたいことを言えない人が多い場合は、断る・異なる意見を伝えるといった伝え方の演習を厚くします。一方、強い言い方が目立つ場合は、聴き方やアイメッセージの比重を高めるのが効果的です。
事前アンケートで「苦手な場面」を尋ねておくと、重点を置く内容を判断する材料になります。
演習を入れる場合は、進め方の細部まで設計しておくことが大切です。たとえば、ロールプレイは2〜3人の少人数で行うと、全員が話す機会を確保できます。
また、観察役にはフィードバックの観点をあらかじめ示しておくと、振り返りの質が上がります。冒頭で「うまくいかなくても問題ない場である」と伝え、受講者が安心して試せる雰囲気をつくることも欠かせません。
一般的なケースだけでなく、自社で実際に起こりやすい場面を題材にすると、受講者が研修内容を職場に持ち帰りやすくなります。現場の管理職などから、よくある場面を事前に集めておきましょう。
ケースにするときは、個人が特定されないよう名前や状況を置き換える配慮が必要です。集めた場面は講師と共有し、演習の内容に反映してもらいます。
カリキュラムを企画するときの確認事項
アサーティブコミュニケーション研修では、基本の理解と自分の傾向の振り返り、聴き方、伝え方の4つを組み合わせます。カリキュラムは「理解→自己把握→スキル→実践」の順に組み立て、最後に職場での行動計画につなげます。
研修の効果を高めるには、依頼・断り・改善要求など、受講者が実際に直面する場面をケースとして扱うことが重要です。研修時間に応じて内容を絞り込み、講義と演習のバランスを意識しましょう。
まずは対象者の課題を明確にし、研修後にどのような行動を目指すかを決めるところから企画を始めてみてください。
リスキル事務局が記事の執筆・監修をしています。人材育成にまつわるお役立ち情報を分かりやすく解説します。
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設立:2022年5月2日
上場市場:東京証券取引所グロース市場
■研修実績
・利用社数は年間3900社以上
・年間受講者数 前年比157%
・プロフェッショナルの講師陣300名以上在籍