営業研修と一口に言っても、新人向けの基礎から管理職向けのチームづくりまで、扱う内容はさまざまです。「営業は現場で覚えるもの」と考えられがちですが、現場任せでは身に付く内容に個人差が出やすく、基本を体系的に押さえる機会も欠かせません。
この記事では、営業研修の基本、目的や身に付くスキル、対象者、種類、実施方法、導入のポイントまでを順に見ていきます。営業研修について初めて調べる方も、全体像をつかむ参考にしてください。
営業研修とは、営業職に必要なスキルや考え方を体系的に身に付け、個人と組織の営業成果を高めるための研修です。商談の機会をつくるアポイントメント獲得から、契約に結びつけるクロージングまで、営業活動の一連の流れを扱うのが一般的です。対象は新人に限らず、経験を積んだ中堅社員や、営業チームを率いる管理職まで幅広い層に及びます。
現場での経験は欠かせませんが、経験だけに頼ると、成長のスピードや到達点に大きな個人差が生まれます。営業研修で基本の型を知ったうえで経験を積めば、誰もが同じ道筋で成長できます。
背景の1つ目は営業の属人化です。売れる担当者のやり方が共有されないまま個人の中にとどまっていると、その人が異動や退職をした途端に成果が落ち込んでしまいます。研修で営業の進め方を共通化することは、属人化を防ぐ有効な手段の一つです。
2つ目は顧客の購買行動の変化です。事前にインターネットで情報を集める顧客が増え、商品説明だけでは選ばれにくくなりました。さらに、オンライン商談やインサイドセールスが広がり、対面とは異なる進め方も求められています。こうした変化に対応するため、営業の基本を組織として見直す機会として営業研修を取り入れる企業が増えています。
インサイドセールスとは
電話やメール、Web会議などを使い、顧客を訪問せずに行う営業活動。訪問営業に比べて移動の時間がかからず、多くの顧客と効率よく接点を持てる。
営業研修を実施する目的は、大きく3つに整理できます。
スキル向上と標準化
営業スキルを高め、誰が担当しても一定の成果を出せる状態をつくる
マインドの醸成
顧客との信頼関係や意欲の維持など、自ら動ける営業の土台を育てる
組織全体の底上げ
早期戦力化を進め、チーム全体の営業力を高める
1つ目の目的は、営業担当者一人ひとりのスキルアップです。ヒアリングや提案といったスキルは、自己流のままでは伸び悩む原因になります。研修で基本を押さえ直すことで、自分の癖や足りない部分に気づけます。さらに、全員が同じ基本を身に付けることで、営業の進め方を組織として標準化できます。属人化を防ぎ、誰もが数字を取れる状態を目指せます。
2つ目は、営業に必要なマインドを育てることです。ヒアリングや提案のスキルは教わる機会があっても、心構えは個人任せにされがちです。しかし、顧客からの信頼獲得・モチベーションの維持と向上・自社の営業理念の共有といったマインドがなければ、スキルは十分に活かされません。研修を通じてこれらを身に付けることで、指示を待たずに自走できる営業担当者が育ちます。
3つ目は、新人や異動者の早期戦力化と、組織全体の営業力の底上げです。現場任せの育成では、配属先の先輩や上司によって身に付く内容に差が出てしまいます。研修で共通の基本を押さえておけば、スタートラインをそろえたうえで現場経験を積めるため、一人前になるまでの期間を短縮できます。中堅社員や管理職も含め、各層がそれぞれの課題に合った研修を受けることで、組織全体の営業力が底上げされます。
営業には幅広いスキルが求められますが、どの業界でも共通する営業の5ステップに沿って整理するとわかりやすくなります。多くの営業研修もこの5ステップを軸に組み立てられているため、研修で何をするのかもイメージしやすくなります。

営業の5ステップと、各ステップで求められる主なスキルは次の通りです。
| ステップ | 主な内容 | 求められる主なスキル |
|---|---|---|
| アポイントメント獲得 | 電話やメールなどで商談の機会をつくる | トークの組み立て / 話法 |
| アイスブレイク | 商談の冒頭で場を和ませ関係性をつくる | 雑談力 / 第一印象づくり |
| ヒアリング | 顧客の状況や課題を聞き出す | 傾聴力 / 質問力 |
| 提案 | 課題を解決する方法を示す | 解決策を組み立てる力 / プレゼンテーション力 |
| クロージング | 契約や購入の意思決定を後押しする | 次の行動を明確にする力 / 反論への対応力 |
なかでも成果を左右しやすいのがヒアリングです。顧客が本当に困っていることを捉えられなければ、どれだけ優れた提案をしても響きません。顧客の本質的なニーズを引き出す力は経験だけでは身に付きにくいため、研修で集中的に強化する価値があります。
5ステップのスキルを活かすには、それを支えるマインドも欠かせません。代表的なのは、顧客の立場で価値を考える顧客起点の考え方です。売上目標を自分ごととして捉える数字への意識や、断られても次の行動に移れる姿勢も大切になります。スキルとマインドは、両方がそろって初めて安定した成果につながります。
また、営業には5ステップのどの場面でも土台となる周辺スキルがあります。代表的なものは次の4つです。
情報収集力
商談の前に顧客や業界の情報を集め、課題の仮説を立てる
説明力
商品やサービスの価値を筋道立てて相手に伝わるように話す
提案資料の作成力
顧客が判断しやすい資料をわかりやすくまとめる
営業マナー
メールや訪問時の振る舞いで信頼を損なわない
自社の営業スタイルや課題に応じて、5ステップの基本に周辺スキルを組み合わせることで、より実務に即した研修になります。
営業研修は、新入社員から管理職まで、キャリアの段階に応じて幅広い層が対象です。立場によって、研修で目指す状態も変わります。
| 対象者 | よくある課題 | 研修で目指す状態 |
|---|---|---|
| 新入社員 / 営業未経験者 | 営業の流れがわからない / 商談に自信がない | 基本を理解し自信を持って商談に臨める |
| 若手〜中堅の営業担当者 | 自己流で伸び悩む / 提案の幅が狭い | 顧客の課題を捉え成果につながる提案ができる |
| 管理職 / 営業リーダー | 部下が育たない / チームの成績が安定しない | チーム全体で成果を出す仕組みをつくれる |
営業職に配属されたばかりの新入社員や、他職種から営業に移った社員が対象です。この段階では、高度なテクニックよりも営業の役割や基本的な流れを理解することが優先されます。顧客と向き合うための土台を固めることで、配属後の不安を和らげ、早い段階で現場になじめます。
一定の経験を積み、ひと通りの営業活動をこなせるようになった層です。自分なりのやり方が固まる一方で、自己流のまま成果が頭打ちになりやすい時期でもあります。この段階では、課題を深く捉えるヒアリングや課題解決型の提案、価格交渉への対応など、一段上のスキルを身に付けます。これにより、さらなる成果の向上を目指します。
管理職やリーダーには、個人の成績からチーム全体の成果へと視点を切り替えることが求められます。目標の立て方や進捗の管理、部下への指導方法など、チームを動かすためのスキルを身に付けることが中心になります。
営業研修にはさまざまな種類があり、大きくは対象者の段階やテーマによって分けられます。自社の課題や対象者に合わせて種類を選ぶことが、研修の効果を高める第一歩です。主な種類とカリキュラムの方向性を整理すると次の通りです。
| 種類 | 主な対象 | カリキュラムの方向性 |
|---|---|---|
| 営業新人研修 | 新入社員 / 営業未経験者 | 営業の心構えや基本的な流れを押さえる |
| 営業力強化研修 | 若手〜中堅社員 | 法人営業や個人営業など実務に即した営業力を伸ばす |
| テーマ別の研修 | 特定の場面に課題がある営業担当者 | テレアポやヒアリングなど特定の場面を強化する |
| 営業マネジメント研修 | 管理職 / 営業リーダー | チームづくりや部下育成で組織の成果を高める |
営業新人研修は、初めて営業職として働く人に向けて、成果を出すために必要な基礎を身に付けてもらう研修です。営業の心構えや基本的な流れ、顧客に好印象を与える話し方などを扱い、実践を通して基本を身に付けていく内容が中心です。
営業力強化研修は、ある程度の経験を持つ営業担当者が、さらに成果を伸ばすための研修です。法人営業と個人営業では商談の進め方や意思決定の仕組みが異なるため、自社の営業スタイルに合った内容を選べるのが特徴です。営業の基本を見直しながら、提案の質や顧客との関係を築く力を高めていきます。
営業活動の中でも特定の場面に課題がある場合は、テーマを絞った研修が向いています。ピンポイントで弱点を補強できるのがテーマ別研修の強みです。代表的なものは次の通りです。
| 研修 | 強化する場面 | 向いているケース |
|---|---|---|
| テレアポ研修 | アポイントメント獲得 | 商談の機会が増えない |
| ヒアリング研修 | ヒアリング | 顧客の本当のニーズをつかめない |
| ソリューション営業研修 | 提案 | 商品説明だけで終わり選ばれない |
| オンライン営業研修 | 商談全般 | Web会議での商談に慣れていない |
ソリューション営業とは
商品やサービスを売り込むのではなく、顧客が抱える課題を捉え、その解決策として自社の商品やサービスを提案する営業手法のこと。課題解決型営業とも呼ばれる。
営業マネジメント研修は、営業チームを率いる管理職やリーダー向けの研修です。売れる営業チームのつくり方や、部下の指導方法、目標達成に向けた進捗管理などを扱います。個人の力に頼らず、チームとして成果を出し続ける仕組みをつくることが大きな狙いです。
対象者ごとのおすすめの研修は、次の記事で紹介しています。
営業研修の実施方法は、主に一社研修・公開講座・eラーニングの3つです。それぞれ特徴や費用が異なるため、受講人数や目的、予算に合わせて選びましょう。
| 実施方法 | 主な特徴 | 向いているケース | 費用相場の目安 |
|---|---|---|---|
| 一社研修 | 自社の社員だけで実施 / 内容を調整しやすい | 部署単位でまとめて受講させたい | 20〜50万円 / 1日 |
| 公開講座 | 他社の受講者と一緒に参加 | 少人数だけ受講させたい | 2〜8万円 / 1人 |
| eラーニング | 動画で好きな時間に受講 | 拠点や勤務時間がばらばら | 1,000〜2,500円 / 1人(レンタル) |
一社研修は、自社の社員だけを対象に講師を招いて実施する研修です。対面のほか、オンラインや、両方を組み合わせたハイブリッド形式でも実施できます。自社の商材や営業スタイルに合わせて内容を調整しやすいのが大きな利点です。同じ職場のメンバーで受講するため、研修後も共通の言葉で振り返れます。
公開講座は、日程とテーマがあらかじめ決まっている研修に、複数の企業の受講者が参加する形式です。1人から申し込めるため、少人数だけを受講させたい場合や、まずは内容を試してみたい場合に向いています。他社の営業担当者から新たな視点を得られる点も魅力です。
eラーニングは、動画教材を使って好きな時間に受講できる形式です。拠点が分散している企業や、営業担当者の外出が多く日程を合わせにくい企業でも導入しやすく、繰り返し視聴して復習できます。一方で、ロールプレイングのような実践の機会は不足しがちです。基礎の理解はeラーニング、実践は一社研修や公開講座というように、組み合わせて活用するのも一つの方法です。
営業研修は、実施して終わりでは効果が定着しません。研修担当者からは、次のような声がよく聞かれます。
研修を実施しても、現場に戻るといつものやり方に戻ってしまう。
こうした悩みを解消するには、研修の前後も含めて設計することが大切です。ここでは、営業研修を実施する際に押さえておきたい4つのポイントを見ていきます。
まずは、自社の営業にどのような課題があるのかを明確にしましょう。アポイントが取れないのか、商談は進むのに成約に至らないのか、特定の人だけが売れているのかによって、必要な研修は変わります。5ステップのどこでつまずいているか、個人とチームのどちらの課題かを整理すると、選ぶべき研修が見えてきます。
課題が見えたら、研修の目的と対象者を決め、それに合ったカリキュラムを選びます。新人に応用的な内容を詰め込んでも消化しきれません。反対に経験者には、課題と関係のない基礎的な内容ばかりでは物足りなく感じられます。受講者の経験やレベルに合った内容かどうかを必ず確認しましょう。
営業スキルは、知識として理解するだけでは身に付きません。ロールプレイングとは、顧客役と営業役に分かれて商談を再現する練習です。こうした実際に話して試す機会がある研修を選ぶと、現場でそのまま実践できます。
研修の効果を定着させるには、研修後のフォローが欠かせません。受講者が研修で得たことを現場で試し、上司と振り返る機会を設けることで、行動の変化につながります。研修を一度きりのイベントで終わらせないことが、成果につなげるうえで重要です。
営業研修を実施する流れのチェックポイント
営業研修とは、営業職に必要なスキルや考え方を体系的に身に付け、個人と組織の営業成果を高めるための研修です。営業の5ステップを土台に、新入社員から管理職まで段階に応じた種類があります。実施方法も、一社研修・公開講座・eラーニングから選べます。
研修の効果を高めるには、自社の課題と対象者に合った研修を選び、研修後の活用まで見据えることが欠かせません。営業の属人化や若手の伸び悩みに課題を感じている場合は、まず自社の課題を整理し、合う営業研修の種類を検討してみてください。
リスキル事務局が記事の執筆・監修をしています。人材育成にまつわるお役立ち情報を分かりやすく解説します。
■社員研修のリスキルとは?
社員研修のリスキルは、一人でも多くの人に人材育成を届けるために、利便性の高い研修サービスを提供しています。検索をすれば、一社で実施する研修、日程が決まっている参加型公開講座、eラーニング動画講座などをすぐに見つけ、簡単に申込みや見積書を作成することができます。
■プロフィール
会社名:株式会社リスキル
(「リスキル」は株式会社リスキルの登録商標です。)
設立:2022年5月2日
上場市場:東京証券取引所グロース市場
■研修実績
・利用社数は年間3900社以上
・年間受講者数 前年比157%
・プロフェッショナルの講師陣300名以上在籍