「営業研修を任されたが、どんなカリキュラムを扱うべきかわからない」。研修担当者からよく聞く悩みです。営業研修のカリキュラムは、アポイントからクロージングまでの営業の流れが土台です。そこに対象者や研修時間、自社の課題を掛け合わせて組み立てると、筋の通った内容になります。
この記事では、営業研修の基本のカリキュラム例を紹介します。あわせて、テーマ別に追加できる内容や、対象者と時間に応じた組み方も見ていきます。自社の営業研修を設計する際の参考にしてください。
目次
営業研修のカリキュラムとは、研修で扱うテーマと順番、時間配分をまとめた設計図です。営業研修では、営業に必要な知識・スキル・マインドを体系的に身に付けます。目指すのは、誰もが再現性をもって成果を出せる状態です。そのため、個別のテクニックを並べるのではなく、営業活動の流れに沿って組むのが基本になります。
営業活動は、大きく5つのステップに分けられます。カリキュラムを組むときは、まずこの流れを押さえておくと全体像がつかみやすくなります。
| ステップ | 扱う内容 |
|---|---|
| アポイントメント | 顧客と会う機会をつくる電話のかけ方 / 改善方法 |
| アイスブレイク | 顧客が話しやすい雰囲気のつくり方 |
| ヒアリング | 顧客のニーズを引き出す質問の仕方 |
| 提案 | 課題解決につながる提案 / 資料作成の方法 |
| クロージング | 商談を契約につなげる進め方 |
この5ステップの前に土台となる「営業マインド」を置きます。最後に実践で定着させる「ロールプレイング」を加えると、基本カリキュラムの骨組みができます。
テーマを選ぶ前に、次の3つを決めておきます。
目的
研修後に何ができるようになってほしいかを決める
対象者
経験年数や役割から受講者像を決める
研修時間
数時間・半日・1日など使える時間を決める
この3つが決まると、どのテーマをどの深さで扱うかが自然に絞れます。反対に、目的があいまいだと、どのテーマを優先すべきか判断できません。その結果、あれもこれもと盛り込み、どのテーマも浅く終わりがちです。
営業の流れに沿った6章構成の例です。1章1時間、合計6時間の1日研修を想定しています。外部研修を活用する場合は、この流れに近い内容の研修を選ぶと実施しやすくなります。
対象者
新入社員〜中堅社員
所要時間
約6時間
| 章 | テーマ | ゴール |
|---|---|---|
| 1 | 営業マインド | 営業の役割を理解し顧客起点と数字への意識を持つ |
| 2 | 営業の基本 | 第一印象・話し方・アポイント獲得の基本を押さえる |
| 3 | ヒアリング | 顧客の本質的なニーズを引き出す |
| 4 | 提案・プレゼン | 課題解決につながる提案を組み立てる |
| 5 | クロージング | 商談を契約や次の行動につなげる |
| 6 | ロールプレイング | 一連の流れを実践し 改善点を洗い出す |
最初にマインドを扱うのは、スキルを使う前提をそろえるためです。営業の役割を「売ること」だけと捉えていると、ヒアリングや提案も自分本位になりがちです。この章では、顧客の課題解決を通じて成果を出すという営業の役割と、目標数字を自分ごととして捉える姿勢を確認します。断られても折れない考え方にもふれておくと、新人が最初の壁を越える支えになります。
第一印象と話し方、アポイント獲得の基本を扱います。顧客は話の中身より先に、身だしなみや話し方で相手を判断します。信頼されない状態では、良い提案をしても聞いてもらえません。後半では、電話でアポイントを取る流れや、断られたときの対応を押さえます。
営業研修の中核となる章です。顧客の本質的なニーズをつかめるかどうかで、その後の提案の質が決まるからです。傾聴の基本に加え、状況を確認する質問と問題を掘り下げる質問の使い分けを扱います。ワークでは、担当顧客を想定して質問を書き出すと、現場で使いやすくなります。
ヒアリング内容を、顧客の課題解決につながる提案にまとめる章です。よくあるつまずきは、商品説明ばかりで提案になっていないケースです。そこで、顧客の「現状」と「目指す姿」の差を課題として整理し、その解決策として自社の商品を位置づける流れを押さえます。提案資料の構成や、伝わる説明の順番もこの章で扱います。
商談を契約や次の行動に結びつける章です。クロージングは最後に押し切る場面ではありません。顧客が決断しやすい状態を整えるプロセスとして扱います。決断をためらう理由の確認や、次のアクションを具体的に示す方法が中心です。
このカリキュラムの強みは、営業の流れを一通り押さえられることです。どんな場面で使いやすく、どんな変化が期待できるかを見ていきます。
基本カリキュラムが合うケース
特に「何を扱えばよいかわからない」ときに役立ちます。全体を一通り扱うため、大きな抜けが出にくいからです。受講者自身も、自分がどのステップで弱いのかに気づけます。
Before
担当者ごとに進め方がバラバラで成果が人に依存している
After
共通の営業の型ができ全員が同じ流れで商談を進められる
営業の流れを共通の型としてそろえると、若手が早く戦力になりやすくなります。上司と部下が同じ基準で商談を振り返れるため、OJTでの指導にも活かせます。さらに、営業のノウハウが組織内で共有され、営業の属人化を防ぐことにもつながります。
強化したい課題がはっきりしている場合は、基本カリキュラムではなく、その課題に絞ったテーマ別の研修を選ぶ方法もあります。テーマ別の研修は「営業の流れのどこを強くしたいか」で選ぶと迷いません。
| テーマ | 扱う内容 | 向いている課題 |
|---|---|---|
| テレアポ / インサイドセールス | アポ獲得の話法 / 電話やメールでの接点づくり | 新規の商談数が足りない |
| オンライン営業 | オンライン商談の準備 / 進め方 | 非対面の商談が増えている |
| 提案資料作成 / 説明力 | 資料の構成 / 論理的な説明 | 提案資料や説明が伝わりにくい |
| ソリューション営業 | 仮説づくり / 潜在ニーズを探る質問 / 課題解決型の提案 | 提案が顧客に響かず選ばれない |
| 価格交渉 / 反論対応 | 値引き要求への対応 / 反論の切り返し | 値引きや反論で商談がまとまらない |
| アフターフォロー / 取引拡大 | 導入後のフォロー / 追加提案 | 既存顧客からの売上が伸びない |
新規の商談数が足りない場合は、入口であるアポイント獲得を強化します。テレアポ研修では、アポイントの取得方法や獲得の確度を上げるポイントを扱い、ロールプレイングで話法を練習します。非対面の商談が多い企業は、インサイドセールスやオンライン営業を組み合わせると、今の営業スタイルに合った内容になります。
「商品説明で終わってしまう」という悩みには、提案資料作成や説明力のテーマが合います。資料の構成を決めてから中身を書く手順や、結論から伝える説明の型を押さえます。担当者ごとの提案の質をそろえやすくなります。価格競争に巻き込まれやすい場合は、顧客の潜在ニーズから提案を組み立てるソリューション営業も選択肢になります。
商談の終盤で値引きを求められたり、反論を受けたりして成約を逃すケースもあります。この場合は、法人営業向け 価格交渉力強化研修やオブジェクションハンドリング研修のような研修が合います。値引きに応じる前に、顧客にとっての価値を改めて示すという考え方を押さえると、利益を守りやすくなります。
オブジェクションハンドリングとは
商談中に顧客から出る反論や懸念に適切に対応し、商談を前に進めるスキルのこと。
新規開拓だけでなく、既存顧客との関係を深めることも営業の大切な役割です。導入後のアフターフォローや定期訪問を通じて新たな課題を見つけ、追加の提案につなげる流れを扱います。顧客企業の別の部署へ取引を広げる方法もテーマになります。
同じ営業研修でも、対象者によって重点を置くテーマは変わります。経験が浅いほど「型」を、経験を積むほど「応用」と「仕組み」を扱うのが基本的な考え方です。
| 対象者 | 重点テーマ | ゴール |
|---|---|---|
| 新入社員 / 営業未経験者 | 営業マインド / 営業の基本 / 営業の流れ | 営業の基本の型を身に付ける |
| 若手 / 中堅社員 | ヒアリング / 提案 / 交渉 | 商談の質を高め成果を安定させる |
| 管理職 / リーダー | チームづくり / 部下指導 / 案件管理 | チームで成果を出す仕組みをつくる |
新人や営業職への異動者には、前述の基本カリキュラムがそのまま使えます。高度なテクニックより先に、営業の基本の流れを一通り体験してもらうことが大切です。ロールプレイングの時間を多めに取ると、配属後の不安を減らしやすくなります。
ある程度の経験がある層は、自己流の進め方が固まりつつある段階です。ヒアリングや提案など、成果の差が出やすいステップを深掘りします。自分の商談を振り返るワークを入れると、改善点に気づきやすくなります。
営業チームを率いる立場では、個人の営業力よりもチームで成果を出す仕組みづくりが中心になります。目標設定や案件管理、部下へのティーチングとコーチングなどを扱う営業マネジメント系の研修が合います。
営業研修は、半日(3時間程度)か1日(6時間程度)で実施するのが一般的です。同じテーマでも、時間によって扱える深さが変わります。まず「営業の流れを一通り扱うか」「1つのテーマを深めるか」を決め、それに合う時間を選ぶと組みやすくなります。
| 研修時間 | 向いている組み方 |
|---|---|
| 半日(3時間程度) | 1つのテーマの要点を押さえる |
| 1日(6時間程度) | 1つのテーマを実践まで深める / 営業の流れを一通り扱う |
最後に、自社に合ったカリキュラムを組むための考え方を見ていきます。出発点は「研修で何を教えたいか」ではなく「現場で何に困っているか」です。
営業現場でよくある悩みと、強化したいスキル、合うテーマの対応は次のとおりです。
| よくある悩み | 強化したいスキル | 合うテーマ |
|---|---|---|
| 顧客の課題を深く聞き出せない | 仮説構築力 / 質問力 / 相手の意図をくみ取る力 | ヒアリング |
| 商品の説明ばかりになってしまう | 提案力 / 自社の強みを価値に変える力 | 提案 / 提案資料作成 |
| 言われたことに応えるだけの御用聞きになっている | 課題提起力 / 商談をリードする力 | ソリューション営業 / 取引拡大 |
| 目標達成への意識が低い | 行動計画力 / 改善力 / セルフマネジメント力 | 営業マインド / 数字への意識 |
悩みを特定するには、営業責任者に「どの場面でつまずいているか」を聞くのが近道です。つまずいているステップがわかれば、強化すべきテーマが明確になります。
強化したいテーマが1つに収まらない場合は、1回の研修で複数のテーマを扱います。このとき、つながりの強いテーマを組み合わせるのがポイントです。たとえば、ヒアリングと提案は一続きの流れなので、同じ研修で扱うと理解しやすくなります。
BtoB(法人営業)とBtoC(個人営業)では、重点が変わります。法人営業は購買の意思決定に複数の人が関わるため、事前のリサーチや仮説づくりが重要です。個人営業では、信頼関係づくりや、お客様の決断を後押しするクロージングの比重が高くなります。
研修の効果を高めるには、受講者が「自分の仕事に使える」と感じられることが大切です。外部研修を使う場合でも、ケースワークやロールプレイングの題材に自社の商材や商談場面を反映できます。そうすると、研修の翌日から使える内容になります。
営業研修のカリキュラムは、アポイントからクロージングまでの営業の5ステップを土台に組みます。基本は、営業マインドからロールプレイングまでの6章構成です。課題がはっきりしている場合は、強くしたいステップに絞ったテーマ別の研修も選択肢になります。対象者と研修時間によって、扱うテーマの数と深さを調整することも大切です。
営業研修のカリキュラムに、唯一の正解はありません。目的と対象者を明確にし、現場の課題から逆算してテーマを選ぶことが、成果につながる研修への近道です。まずは自社の営業がどのステップでつまずいているかを確認するところから始めてみてください。
リスキル事務局が記事の執筆・監修をしています。人材育成にまつわるお役立ち情報を分かりやすく解説します。
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設立:2022年5月2日
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