コスト高やミスマッチを防いで組織を成長させるには、外部採用だけに頼らず、現場の熱意を理解する人材を集める必要がある。
それを打破する手法として注目されているのが、社内の繋がりを最大限に活用する「リファラル採用」だ。
本記事では、リファラル採用制度を形骸化させない準備の秘訣を解説する。
目次

はじめに、リファラル採用の本質について整理する。
リファラル採用とは、自社の社員から知人や友人を紹介・推薦してもらう採用手法のことだ。しかし、単なる「知人の紹介」や、選考基準が甘くなりがちなかつての「縁故採用(コネ)」とは異なる。
最大の特徴は、自社の理念や現場の空気をよく知る社員が間に入ることで、企業と候補者の「情報のズレ」を解消できる点だ。通常の求人票では伝わらないリアルな社風を事前に共有したうえで、通常の採用と同じ厳格な選考を行うため、入社後のミスマッチを未然に防ぎやすい。
リファラル採用が注目されている理由は、大きく分けて以下の通りだ。
現在の採用市場は、広告を出せばすぐ人が集まるという形ではなくなりつつある。優秀な人材ほど多くのスカウトに埋もれ、企業からの直接の連絡を無視することも少なくない。
一方で、「信頼できる知人からの誘い」であれば話を聞いてもらいやすい。もちろん全員が誘いに乗るわけではないが、「採用の間口を広げる」という意味では良い手法だ。
今は転職を考えていない層は、求人サイトへの登録はほぼしない。リファラル採用であれば、彼らが転職活動を始める前に接点を持てることも利点の一つだ。
リファラル採用では、原則外部サービスを介さない。そのため、高額な紹介手数料や広告費を大幅にカットできる。
また、現場をよく知る社員が「自社に合う」と判断して紹介することが多いため、社風への適合性(カルチャーフィット)が高く、入社後のギャップによる早期離職の危険が少なくなる。

リファラル採用にはメリットとデメリットがある。それぞれ解説する。
リファラル採用のメリットを3つ紹介する。
現場社員は、そのポジションで活躍するために必要なスキルや、チームに馴染むために必要な気質を誰よりも理解している。社員による「一次選考(スクリーニング)」が行われることで、書類上では評価しづらい「ソフトスキル」の合致度が極めて高い候補者が集まりやすくなるだろう。
リファラル経由で入社した社員は、求人サイト経由の社員よりも定着率が高くなるケースもある。紹介者が「社内メンター」のような心理的支柱となることで、入社直後の孤独感を解消しやすいためだ。知人が同じ職場で働いていれば、相談しやすい。そのため、早期離職防止につながる。
リファラル採用を推奨することは、経営陣が社員を「会社の顔」として信頼しているというメッセージになる。また、友人に会社を勧めるプロセスで、社員自身が自社の強みを再確認し、組織への帰属意識が高まるという副次的な効果(セルフ・エンゲージメント)も期待できるだろう。
一方で、運用にあたっては次のようなデメリットもある。
「類は友を呼ぶ」の言葉通り、似たようなバックグラウンドや価値観を持つ人が集まりすぎてしまうリスクがある。これが過度に進むと「思考の硬直化」が起き、新しいアイデアや批判的な視点が生まれにくい組織、いわゆる「ぬるま湯」状態を招きかねない。
対策としては、リファラル以外のチャネル(公募・ダイレクトリクルーティング等)を一定割合維持し、多様な視点が混ざり合う設計にすることが大切だ。
「せっかく友人を連れてきたのに不採用にされた」という不満は、紹介した社員のエンゲージメントを著しく下げる。また、友人との関係に亀裂が入ることを恐れ、社員が紹介を躊躇する原因にもなるだろう。
対策としては、「不採用通知の前に、紹介者へ人事が直接フィードバックを行うステップ」を踏むことだ。なぜ見送りになったのかを、紹介した社員が友人に納得感を持って説明できるよう、人事が説明する。
また、「今回はポジションが合わなかっただけで、将来的な可能性は否定しない」というタレントプール(候補者名簿)への登録を提案するなど、友人関係に配慮した丁寧な出口設計が不可欠だ。
リファラル採用を社内で習慣化させるには、社員が感じる「手間」と「不安」を取り除く必要がある。具体的なコツを見ていこう。
人事が現場に対して「会社の魅力を友達に伝えて」と抽象的に丸投げするのは、制度が失速する典型的な原因である。自社の強みを言語化するのは、本来人事の役割だ。
人事がまず行うべきは、EVP(Employee Value Proposition)の再定義だ。給与や福利厚生といった条件面だけでなく、『このチームでしか得られない経験』を言語化し、社員に『語るための武器』として渡すことが、丸投げを防ぐ第一歩となる。
社員に説明を任せきりにすると、人によって伝える内容がバラバラになってしまう。結果として候補者に誤った期待を抱かせ、入社後のミスマッチを招くリスクが高まるため、人事が「刺さるキーワード」を整えて提供すべきだ。
会社のビジョンや募集要項をまとめた資料があれば、社員の手間を大幅に減らせる。「残業代」や「リモートワークの可否」など、よくある質問へのQ&A集も用意しておくと、声かけがよりスムーズに進むだろう。
制度を定着させるには、「友達に不快な思いをさせないか」「自分の評価が下がらないか」という社員の不安を払拭する設計が求められる。まずは、リファラルを一般の選考ルートとは切り離し、独立した優先窓口として確立させることが重要である。
通常の採用フローに混ぜ込むのではなく、専用の「ファストトラック(優先ルート)」を設定する。書類選考を省いたり、一次面接前に人事とのチャットを設けたりと、候補者が「特別に扱われている」と感じる設計が必要だ。
転職潜在層にとって、履歴書や職務経歴書の準備は手間に感じられ、応募をためらう要因になる。そのため、「まずは履歴書なしでカジュアルに話しませんか」というスタンスを貫き、物理的なハードルを下げることが大切だ。
リファラル採用を「全社活動」にするには、現場社員の心理的な抵抗感をなくす教育機会が不可欠である。採用は人事の仕事と思われがちだが、「理想のチームを自分たちで創る権利」であることを伝え、意識を変革する必要がある。
たとえば、人事が一方的に頼むのではなく研修を実施して社内で共有することが挙げられる。現場の声を反映させながら共に組織を育てる土壌を作れば、制度は生きた仕組みとして機能し始めるはずだ。
十分な知識がない状態での声掛けは、社員の大切な友人関係を壊すリスクすら孕んでいる。人事が研修を通じて『断り方のマナー』や『期待値調整の術』を伝えることは、社員のプライベートを守るための防波堤となる。
自力でこれら全ての仕組みを構築し、全社員の意識を変えるのは容易ではない。まずはプロの視点を取り入れたリファラル採用促進研修を検討してみてはどうだろうか。
リファラル採用を成功させる鍵は、単なる「制度の有無」ではなく、現場が自走できる「仕組み」と、社員の「当事者意識」の融合にある。この3つのステップを順番に進めることが、形骸化を防ぐ最大の術となるだろう。
・「自社の魅力」を人事が言語化し、社員の手間を減らす
・「友達を紹介して損」と言わせない制度・採用フローを確立する
・現場の抵抗をなくし当事者意識を高める「研修」を実施する
これらのポイントを確実に実行することで、リファラル採用は単なる「欠員補充の手段」から、組織のエンゲージメントを高める「経営戦略」へと昇華させやすくなる。人事が現場の負担を徹底的に排除し、研修を通じて社員一人ひとりに「自分たちの手で最高のチームを作る」という当事者意識を持たせることが重要だ。
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