在宅勤務やハイブリッドワークが定着し、Web会議に変わった会議も多くなりました。また、他企業との打ち合わせでもオンラインの割合は高まっています。
その一方で「発言が少なく議論が深まらない」「一方通行感を感じる」といった悩みを抱える現場は少なくありません。オンラインファシリテーション研修は、こうしたWeb会議特有の課題に対応するために設計された研修です。本記事では、研修で扱われる具体的な内容と、会議の現場ですぐに活かせる進行のポイントを、人事担当者の方に向けてまとめました。
目次
オンラインファシリテーション研修は通常のファシリテーションスキルに加えて、画面越しならではの進行技術を身に付ける研修です。オンライン会議は対面の会議と大きくは変わらないものの、いくつかの特徴的な違いがあり、その違いを理解しないまま進行すると会議の生産性が落ちてしまいます。
Web会議には、対面にはない次のような特徴があります。
オンライン会議ならではの特徴
こうした特徴により、参加者の集中力が落ちやすく、発言も引き出しにくくなります。画面の向こうにいる参加者の様子を意識しながら会議を進める力が、オンラインならではのファシリテーションスキルと言えます。
ファシリテーションの基本的な役割そのものは、対面でもオンラインでも変わりません。中立的な立場で会議を管理し、参加者から発言を引き出し、合意形成を支援するという点は共通しています。
違うのは、その役割を果たすための具体的な手段です。対面であれば表情や場の空気から参加者の状態を読み取れますが、オンラインでは画面越しの限られた情報から判断する必要があります。そのため、意識的に反応を示したり、発言のルールを事前に決めておいたりする工夫が求められます。
オンラインファシリテーション研修では、会議の事前準備から進行中の対応、会議後のフォローまで一連の流れに沿ってスキルを身に付けていきます。
対象者
Web会議で進行役を担う社員全般
研修で扱う範囲
準備・進行・フォローの一連の流れ
オンラインファシリテーションでは、通常のファシリテーション研修と同様の内容も多く含まれているのが一般的です。下記に詳しいので、情報を確認したい方はご覧ください。
会議の出発点と到達点を明確にすること、参加者の認識レベルを把握すること、論点を洗い出しておくことなど、合意形成に至るための準備の考え方を学びます。あわせて、Web会議システムの選定やデータ共有方法の確認といった、オンラインならではの準備項目も扱います。
発言を引き出す質問の仕方、発言を受け止めていることを画面越しに示す方法、議論を広げる・深める・止めるといった方向づけの技術を、ワークを通じて身に付けます。加えて、対立が起きたときの対応や、発言しにくい参加者への働きかけ方など、進行中に起こりやすい事例への対応方法も含まれます。
議事録の共有方法やタスクの管理方法、会議自体を振り返って次に活かす方法についても研修の範囲です。会議は終わった後のフォローまで含めて、はじめて成果につながります。
会議の生産性を左右する要素の中でも、特に重要なのが事前準備です。「どこから話をはじめて、どこまで到達するのか」を最低限決めておくことが、オンライン会議を成果につなげる第一歩になります。通常の会議でも重要ですが、集中力が散逸しがちなオンラインでは特に重要となります。
事前準備で押さえておきたい視点は、次の3つです。
出発点と到達点
今回の会議はどこから始め、どこまでの結論を目指すのかをあらかじめ定めておきます
参加者の状況
参加者が議題についてどこまで理解しているかを予測し、フォローの方法を考えます
議論すべき論点
合意形成に必要な論点を広く洗い出し、絞り込み、深めるべき点を整理します
この3つをあらかじめ考えておくと、会議の当日に慌てることがなくなり、議論すべき点が漏れることもなくなります。準備シートを用意し、目的や出発点、到達点、参加者の状況などを書き出しておく方法も、研修の中で扱われる実践的な手法のひとつです。

より詳細なアジェンダを作成するのも良いことですが、それが習慣化されていない企業だと長続きしません。最低限の準備だけする方が、継続できます。
Web会議では、その場にいないぶん注意がしづらく、進行のコントロールが難しいという事情があります。そのため事前にグランドルールを決めておくことが、対面会議以上に重要になります。
グランドルールとは
会議を進めるにあたり、参加者全員が自由に議論を行うための前提となるルールのことです。起こりそうな問題をあらかじめ見越して設定し、会議の冒頭で目的の共有と合わせて説明します。
グランドルールは、基本的に1つ、多くても3つまでに絞っておきます。数が多くなると、かえって発言しにくくなり、会議が不活性なものになってしまうためです。人は後出しのルールよりも、事前に示されたグランドルールには従いやすい傾向があるため、開始前にきちんと周知しておくことが効果を発揮します。
取引先を交えた会議では、先方の規定によって利用できるシステムが決まっている場合もあるため、事前の確認が欠かせません。また、資料をその場で共同編集できるデータ共有ツールを決めておくと、会議の進行がスムーズになります。
ファシリテーター自身がWeb会議システムの操作に慣れていない場合は、本番前に必ず練習をしておくことも欠かせません。特に「チャット」と「画面共有」の2つの機能は進行中に使う頻度が高いため、当日操作に戸惑わないよう事前に確認しておきましょう。
グループを分けてブレストしたいときなどのために、ブレイクアウトルームの使い方も必要であれば練習しておきます。
以下は、最低限確認しておきたいルールの例です。自社や部署の状況に合わせて調整して活用できます。
| カテゴリ | ルールの例 |
|---|---|
| 会議環境 | 雑音が入らない環境で参加する |
| 会議環境 | 全員カメラをONにする |
| 会議環境 | アジェンダは事前に共有しておく |
| 会議の進め方 | 予定の3分前には終了する |
| 会議の進め方 | 資料は画面共有し、全員が同じものを見て話す |
| 参加者が気を付けること | 発言の際は名前を名乗る |
| 参加者が気を付けること | 発言するとき以外はマイクをミュートにする |
| 参加者が気を付けること | 同意はサムズアップマークや挙手などで示す |
| 参加者が気を付けること | チャット機能を使い質問をためておく |
これらはグランドルールというほどではないですが、会議の冒頭で目的の共有と合わせて参加者へ説明しておくことが大切です。
次は会議当日の進行です。オンライン会議の進行は、「発言を引き出す」「発言を理解する」「議論を方向づける」「結論づける」という4つのステップで捉えると整理しやすくなります。
参加者が発言しない理由は、大きく分けて「発言する意欲が低い」「立場や関係性を気にして発言しない」「何を発言すればよいか分からない」の3つに整理できます。問いかけには、はいかいいえで答えられるクローズドクエスチョンと、5W1Hで答えを広げるオープンクエスチョンがあり、論点を確認したいときと議論を広げたいときとで使い分けます。
オンラインで特に大事なのは、なるべき名指しで声をかけることです。意識が引っ張られますし、発言するために集中が継続します。
対面であれば自然に伝わる相づきやうなずきも、オンラインでは意識して大きく示す必要があります。カメラや画面を見ながら聴く、はっきりと相づちを入れる、発言を要約して返すといった行動が、参加者に「聴いてもらえている」という安心感を与えます。画面に映る範囲での反応を意識することが、オンラインならではのポイントです。具体的には、「1つ目」「2つ目」と数えながら指を画面に映すなど、小さなジェスチャーを大きめに示すことも、理解が伝わっているという安心感につながります。
オンラインでは対面のようにホワイトボードを使えないぶん、意見を見える化する代わりの手段を用意しておくことが効果的です。画面に映る範囲でメモを取りながら共有する、画面共有をしながら議事録をリアルタイムで更新するといった方法があります。意見を聞き取れなかった参加者も議論に置いていかれずに済み、会議全体の理解度を保つことができます。
発言を理解した後は、その議論をどの方向に導くかを判断します。他に考えるべき論点がないかを尋ねて広げる、根拠や論点の対立を整理して深める、関係の薄い議論を「問いかけ」によって止めるという3つの働きかけを、状況に応じて使い分けます。
議論の最後には、到達点に至ったかどうかを確認します。合意できた部分は行動につなげ、合意できていない部分は無理に結論を出さず、次に何が決まれば合意に至るのかという条件を明確にしておきます。この積み重ねが、会議を「成果を出せる場」に変えていきます。
会議の進行では、対立や発言のしづらさといったトラブルが起こることも珍しくありません。トラブルへの対応方法をあらかじめ知っておくことで、進行中に慌てずに対処できるようになります。
対立が起きたときに大切なのは、問題を先送りにせず、双方が納得できる状態を目指す姿勢です。ファシリテーターが一方の主張に加担すると、会議はかえってネガティブな方向に進んでしまいます。
対立が起きた際は、誤解を解く、一息入れる、双方の意見を確認したうえでどちらも間違っていないことを伝える、上位の目的に立ち返るといった方法が有効です。特にオンラインでは感情の機微が伝わりにくいため、早めに休憩を挟むなど、対立がこじれる前の対応が重要になります。
会議には、細かな指摘が多い評論家タイプ、強い言葉で自分の意見を押し通す暴君タイプ、原則論を繰り返すタイプ、思いつきで話を蒸し返すタイプなど、さまざまな参加者がいます。それぞれのタイプの特徴を理解しておくと、感情的にならず落ち着いて対応できます。
議論が煮詰まった際は、質を求めない、批判をしない、他の意見への上乗せを歓迎するといったルールを追加すると、発言のハードルが下がります。オンラインならではの工夫として、チャットに一定時間アイディアを書き出してもらう方法も効果的です。口頭とは異なるアウトプットの形にすることで、発言しにくい参加者からも意見が集まりやすくなります。
会議は終わった時点で成果が決まるわけではありません。会議後のフォローまでを含めて、はじめてファシリテーションの効果が発揮されます。
会議の議事録はできるだけ早く共有します。すべてを記録することが難しい場合でも、最低限「決定事項」と「タスク」は参加メンバーに共有しましょう。タスクには必ず担当者と期日を記載し、次回の会議冒頭で前回のタスクの進捗を確認することを徹底すると、会議が積み上がっていく実感を持てるようになります。
フォローを徹底した場合
フォローを省いた場合
準備の内容と実際の議事録を見比べて、自身の進行を振り返る時間を持つと、次回以降の会議の精度が上がっていきます。可能であれば、参加者からも会議についての率直な感想をもらい、進行やルール、データの共有方法などを見直す材料にすることをおすすめします。
自社でオンラインファシリテーション研修の導入を検討する際は、実践的な内容になっているか、対象は合っているかを確認・調整することが求められます。
実践ワークの有無
実際にオンライン会議を行うロールプレイが含まれているかを確認します
対象者との適合
新入社員から管理職まで、受講対象に合わせた内容になっているかを確認します
Web会議での進行に特化した研修であれば、事前準備からオンラインならではの環境整備、進行のスキルまで体系的に学ぶことができます。目的や対象者に応じて、以下のような研修も候補になります。
対面での実施が難しい場合には、eラーニング形式で学べる研修もあります。が、実践が重要度が高い研修でもあるので、可能であればリアルタイムで開催するほうが良いでしょう。
オンラインファシリテーション研修は、対面会議で求められるファシリテーションの基本に加えて、Web会議ならではの準備、環境整備、進行の工夫を身に付けるための研修です。出発点と到達点を明確にする準備、グランドルールの設定、発言を引き出し方向づける進行スキル、そして会議後のフォローまでを一連の流れとして押さえておくことで、Web会議を「成果を出せる場」に変えていくことができます。研修の導入を検討する際は、自社の課題や対象者に合わせて、実践ワークを含む研修を選ぶことをおすすめします。
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設立:2022年5月2日
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