社員のプレゼンテーション力を高める研修では、話し方と資料作成を一通り入れれば十分だと考えがちです。しかし、必要な研修内容は現場の問題によって変わります。「話の構成がまとまらない」のか、「資料が読みにくい」のかで、扱うべき内容が異なるためです。
この記事では、プレゼンテーション研修を企画する手順を6つの観点で整理しています。現場の課題・対象者・研修目的・研修内容・時間と実施形式・振り返りの順に、自社に合った研修の形を考えていきましょう。
目次
研修を企画するとき、「どの研修プログラムにするか」から考え始めると、現場の課題と研修内容がずれやすくなります。先に整理したいのは、何のために研修を実施するのか、そして現場でどのような問題が起きているのかです。
プレゼンテーション研修の企画は、研修内容ではなく現場の課題から考え始めることが基本です。課題が明確になれば、対象者や目的、扱う内容も絞り込めるようになります。企画では、現場の課題から始めて、対象者、研修目的、必要なスキル、研修内容の順に決めていきます。最後に時間と実施形式を決め、研修後の振り返りまで設計すると、企画の全体像がそろいます。
「社員がプレゼンテーションを苦手としている」という認識だけでは、研修で何を扱えばよいかが決まりません。まずは、業務の中で実際に起きている問題に置き換えてみましょう。たとえば、次のような状況が考えられます。
現場の課題を把握する際は、研修担当者の印象だけで判断しないようにしましょう。受講者の上司や同僚などの意見も聞いておくと、実態に近い課題をつかめます。
業務上の課題が見えてきたら、それがプレゼンテーションのどの場面で生じているのかを整理します。目安として、次の3つの場面に分けると判断の手がかりになります。
同じ「伝わらない」という課題でも、原因が構想にあれば聞き手の整理から手を付けます。話し方に原因があるなら、発表の練習が必要です。場面ごとに原因を切り分けておくと、研修内容の検討がスムーズに進みます。
研修内容を最初に決めてしまうと、課題に合わない内容まで盛り込みがちです。「どのような問題が、どの段階で起きているか」を言葉にしてから、研修の中身を検討しましょう。
課題が整理できたら、次は誰を対象に、何を身につけてもらう研修にするのかを決めます。同じプレゼンテーション研修でも、新入社員と管理職では求められる内容が大きく異なります。そのため、対象者と研修目的はセットで考えることが大切です。
対象者を「プレゼンテーションに課題がある社員」と広く設定すると、研修内容を絞り込めません。次のような観点で対象者を具体的にしていきます。
たとえば、発表経験の少ない新入社員であれば、構想から実践までの基本を一通り押さえる内容が合います。一方、顧客への提案を日常的に行う営業担当者には、相手の判断を後押しする伝え方に重点を置くほうが効果を期待できます。
経験や業務が大きく異なる社員を1つの研修にまとめる場合は注意が必要です。内容が易しすぎると感じる人と、難しすぎると感じる人が混在しやすくなります。
研修目的を「プレゼンテーション力を向上させる」とするだけでは、何ができるようになれば成功なのかが分かりません。研修目的は、研修後に受講者がどのような行動をとれるようになってほしいかという形で定めます。
「プレゼンテーション力を高める」という目的であれば、もう一段具体化が必要です。たとえば「若手社員が、社内会議で提案内容を簡潔に説明できるようにする」といった形です。目的が行動レベルで決まっていれば、研修内容の優先順位をつけやすくなります。研修後の振り返りで何を確認すればよいかも明確になるでしょう。
対象者と目的が決まったら、目的の実現に必要なスキルを洗い出し、研修内容を決めていきます。一般的なプレゼンテーション研修の内容をそのまま取り入れるのではなく、目的から逆算して必要な要素を選びます。
必要なスキルは、課題の整理で使った「構想」「準備」「実施」の3段階に沿って洗い出すと漏れを防げます。各段階で求められる主なスキルは次のとおりです。
ここで押さえておきたいのは、3段階を均等に扱う必要はないということです。目的の達成に足りないスキルが構想に集中していれば、聞き手の分析や目的の設定に時間を割きます。実施に課題があるなら、話し方の練習や発表演習を厚くします。不足しているスキルがどの段階に多いかによって、研修の重心を決めましょう。
洗い出したスキルをもとに、研修で扱う内容を決めます。限られた時間で多くの内容を同じ比重で扱うと、一つひとつが浅くなり、課題の解決につながりにくくなります。研修内容は、現場の課題と研修目的に直結するものから優先的に選ぶことが大切です。
課題と強化を検討する内容の対応関係は、次のように整理できます。
| 現場の課題 | 主な段階 | 強化を検討する内容 |
|---|---|---|
| 相手に合わせた説明ができない | 構想 | 聞き手の分析・目的の設定 |
| 話がまとまらない | 準備 | 話の構成・論理的な話し方 |
| 資料がわかりにくい | 準備 | 資料構成・スライド作成 |
| 本番になると伝わらない | 実施 | 話し方・実践演習 |
| プレゼンテーションの経験が少ない | 全段階 | 基礎知識と実践演習 |
ただし、表の対応関係は目安です。たとえば「資料がわかりにくい」という課題でも、原因が「何を伝えるべきか決まっていない」ことにあるケースがあります。その場合は、スライド作成の前に構想の整理を扱うほうが効果的です。課題の原因に合わせて調整してください。
研修内容を検討する前に、プレゼンテーションの基本的な進め方を確認しておきたい場合は、次の記事も参考になります。
プレゼンテーションは、知識として理解するだけでは業務での行動が変わりにくいスキルです。講義で要点を押さえたうえで、実際に発表し、フィードバックを受ける機会を設けることが重要になります。
演習の入れ方は、研修目的によって変わります。基本の理解が目的なら、短い発表を1回行い、講義の内容を試す程度でも一定の効果が見込めます。発表に慣れることや弱点の克服が目的であれば、発表とフィードバックを複数回繰り返す構成が向いています。
フィードバックの方法も検討しておきましょう。講師からの指摘に加え、受講者同士で良かった点や改善点を伝え合う時間を設けると、他者の発表から気付きを得られます。発表のテーマを事前に伝え、自分の業務に関する題材を用意して臨んでもらう形にすれば、研修後の実務にもつなげやすくなります。
演習の比重を高めた研修の一例は、以下から確認できます。
研修時間と実施形式は、それだけを単独で決めるものではありません。研修内容、対象者、演習の量とのバランスを見ながら決めていきます。時間や形式を先に固定するのではなく、研修目的を達成できるかという視点で判断しましょう。
研修時間が限られている場合、すべての内容を扱おうとすると、講義を聞くだけで終わってしまいがちです。演習の時間が確保できなければ、受講者は発表を経験しないまま研修を終えることになります。
時間が短いほど、目的に直結する内容への絞り込みが欠かせません。たとえば2〜3時間程度であれば、扱う段階を1つか2つに絞り、短い発表演習を組み込む構成が考えられます。1日(6時間程度)を確保できる場合は、構想から実践までを通して扱えます。発表とフィードバックを繰り返す時間もとりやすいでしょう。
扱いたい内容が多い場合は、1回の研修にまとめず、複数回に分ける方法もあります。基本を扱う回と、演習を中心にする回を分けるといった設計です。
1回の研修にすべての内容を詰め込むと、演習やフィードバックの時間が削られます。時間内に収まらない内容は、別の回に分けるか、今回は扱わないと決めることも大切です。
実施形式には、主に対面、オンライン、両方を組み合わせたハイブリッド形式があります。どの形式が合うかは、次のような観点から判断します。
たとえば、顧客先での対面提案を想定しているなら、対面形式で立ち位置や身振りまで確認すると実践に近づきます。普段の会議がオンライン中心であれば、画面共有を使って発表を練習するほうが、実務に即した演習になります。
ここまでの手順で、課題、対象者、目的、内容、時間と形式を決めてきました。研修を実施する前に、それぞれが一貫しているかを確認しておきましょう。
企画内容に漏れや矛盾がないかは、次の5点で確認できます。
プレゼンテーション研修の企画チェックリスト
曖昧な項目が1つでもあれば見直します。特に「目的の達成に必要な内容」は企画を進めるうちに内容が増えやすいため、最後に改めて確認しておきたいところです。
研修は実施して終わりではありません。研修後に何を確認するかまで企画段階で決めておくと、研修の効果を次の施策につなげられます。振り返りでは、次のような点を確認します。
確認の方法としては、研修後に社内会議で発表する機会を設けるなどがよいでしょう。振り返りで見えた課題は、次回の研修内容やフォローアップの検討材料として活用できます。
企画内容が固まったら、その条件に合う研修を探す段階に進みます。社内で研修を実施する場合も、外部の研修サービスを利用する場合も、企画で整理した内容が判断の基準になります。
研修を選ぶ際は、評判や知名度だけで決めず、自社で整理した条件と研修内容が合っているかを確認しましょう。照らし合わせたい主な条件は次のとおりです。
企画段階で条件を言葉にしておくほど、研修を比較するときの判断がぶれにくくなります。予算もあわせて検討する場合は、実施形式ごとの費用の目安をまとめた次の記事を参考にしてください。
リスキルでは、構想から実践までを通して扱う基本の研修や、演習を中心にした研修を用意しています。論理的な話の組み立てに重点を置いた研修や、資料作成を強化する研修もあります。企画で整理した対象者や目的と照らし合わせながら、研修ラインナップを確認してみてください。
研修内容の選び方や、時間・形式の組み合わせなど、企画の段階で迷う点があればご相談ください。対象者や目的をうかがったうえで、最適な研修をご提案します。
リスキル事務局が記事の執筆・監修をしています。人材育成にまつわるお役立ち情報を分かりやすく解説します。
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■プロフィール
会社名:株式会社リスキル
(「リスキル」は株式会社リスキルの登録商標です。)
設立:2022年5月2日
上場市場:東京証券取引所グロース市場
■研修実績
・利用社数は年間3900社以上
・年間受講者数 前年比157%
・プロフェッショナルの講師陣300名以上在籍