定年延長や70歳までの就業機会の確保が進み、50代社員が会社で働く期間は長くなっています。そのため企業には、50代以降の社員に長く活躍してもらうための取り組みが求められています。
一方で、役職を外れた社員の意欲が下がる、ベテランが新しい取り組みに前向きでないといった悩みを抱える企業もあるでしょう。こうした悩みへの対策として、50代向けのキャリアデザイン研修を実施する方法があります。
この記事では、研修が必要とされる背景や目的、扱う内容とワーク例を紹介します。受講者への案内や経営層への説明など、人事・研修担当者が直面しやすい課題と対策もまとめました。
目次
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企業が50代向けの研修を検討する背景には、主に次の4つがあります。
高年齢者雇用安定法により、企業には65歳までの雇用確保が義務付けられています。2021年4月からは、70歳までの就業機会の確保も努力義務となりました。(参考:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正の概要」)
実際に、働く高齢者も増えています。内閣府の「令和8年版高齢社会白書」によると、令和7年の労働力人口に占める65歳以上の割合は13.7%です。この割合は長期的に上昇傾向にあります。
働く期間が延びるほど、社員全体に占める50代以降の社員の割合は高くなります。また、50代は給与水準が比較的高い層でもあります。そのため企業にとっては、定年前後まで給与に見合う成果を発揮し続けてもらうことが重要です。
役職定年などで役職を外れると、肩書きや給与、仕事の範囲が変わります。そのタイミングで目標を見失い、指示を待つだけの働き方になってしまうケースもあります。
ベテラン社員の意欲の低下は、周囲のメンバーの士気にも影響しかねません。役職を外れる前に、新しい役割でのやりがいを考える機会をつくることが大切です。
50代は、長く同じ会社で働いてきた人も多い世代です。会社が用意した異動や昇進に沿って、キャリアを築いてきた人もいるでしょう。
しかし、人生100年時代と言われる今、学校を出て就職し、定年で引退するという一本道の人生ではなくなるとされています。定年後も働き方を変えながら、長く働き続ける人が増えていくでしょう。
会社が決める異動や昇進に任せたままでは、定年後まで見据えたキャリアは考えにくいでしょう。これからは、自分でスキルを磨き、長く活躍し続けようとする意識が求められます。
50代社員は、職場で大きな影響力を持つ存在です。経験豊富なベテランが前向きに動けば、若手・中堅の育成や業務改善も進みやすくなります。
反対に、ベテランが変化に後ろ向きだと、DXや業務効率化などの新しい施策が進みにくくなることもあります。若手とは仕事への価値観が異なる場合もあり、お互いを理解して協力する姿勢も欠かせません。50代社員が自分の役割を見直すことは、若手・中堅の育成や新しい施策を進める後押しにもなります。
50代向けのキャリアデザイン研修の目的は、これまでの経験を土台に、定年前後まで自分の意思で組織に貢献し続けられる状態をつくることです。
若手向けのキャリアデザイン研修は、将来の目標を描き、キャリアアップを目指す内容が中心です。一方、50代向けの研修では、これまでの経験や強みを振り返り、今後の役割や定年後の働き方につなげて考えます。本人のキャリアを考えることが、そのまま組織への貢献を引き出すことにつながります。
50代向けの研修で扱われる主なテーマは、次の4つです。研修では講義だけでなく、受講者が自分の経験や考えを書き出す「ワーク」にも取り組みます。
| テーマ | 主な内容 | ワーク例 |
|---|---|---|
| キャリアの棚卸しと強みの再確認 | これまでの経験を振り返り、強みと価値観を整理する | ライフラインチャートの作成/強みの書き出し |
| 今後の役割の見直し | 組織から期待される役割と、自分ができる貢献を考える | 会社に貢献できることの書き出し |
| モチベーションの維持 | 役割が変わっても意欲を持って働くための考え方を身に付ける | キャリア・アンカーの確認/現在の仕事の見直し |
| ライフプラン・マネープランの作成 | 定年後の働き方・生活・お金の見通しを立てる | 行動計画の作成 |
まずは、これまでの経験を振り返ります。担当した業務や成果だけでなく、やりがいを感じた場面や苦労した経験も対象です。
振り返りの方法の一つに、ライフラインチャートを作成するワークがあります。社会人になってからの出来事を時系列で書き出し、そのときの充実度を曲線で表すものです。人生の転機や、考え方が変わるきっかけになった出来事も書き入れます。
充実度が上がった時期と下がった時期を見比べると、自分が何にやりがいを感じるのかが見えてきます。そのうえで、性格面とスキル面の強みをできるだけ多く書き出し、自分の強みを確かめます。
役割や雇用形態が変わったあとは、これまでとは違う形で組織に貢献することが求められます。50代社員が担える役割には、例えば次のようなものがあります。
このテーマのワークでは、50代の立場だからこそ会社に貢献できることを具体的に書き出します。
また、自分のキャリアを考えることからは少し離れますが、組織としてあわせて伝えておきたいのがノウハウの仕組み化です。
長年のノウハウは、本人の頭の中にあるだけでは異動や退職とともに失われます。業務の手順と「どの状態なら合格か」という基準を言葉にして仕組み化し、後輩に引き継ぐことは、ベテランにしか担えない大切な役割です。
50代後半以降は、昇給や昇格の機会が限られてきます。そのため、給与や役職だけを働く意欲の源にするのは難しくなります。仕事そのもののやりがいや成長など、自分の中から生まれる意欲を高めることが大切です。
こうした意欲を高めるには、次の3つが満たされているかがポイントです。
加えて、自分が大切にしたい価値観を自覚することも、意欲を保つ助けになります。価値観を確かめるワークでは、キャリア・アンカーという考え方を使います。
キャリア・アンカーとは
仕事をするうえで最も大切にしたい価値観のことです。「専門・職能別能力」「保障・安定」「奉仕・社会貢献」など、8つに分類されます。
受講者は自分のキャリア・アンカーを確認したうえで、今の仕事に自分の価値観をどう活かせるかを考えます。
例えば、「社会貢献」を大切にする人が、再雇用で業務内容が変わったとします。その場合も「今の仕事でどうすれば社会に貢献できるか」と考え直すことで、新しい業務にもやりがいを見いだしやすくなります。
定年後も含めた長い視点で、今後の働き方や生活を考えます。定年後の選択肢は、再雇用だけでなく、副業や独立など多様になっています。
このテーマでは、今後の行動計画を作成するワークに取り組みます。まず、「仕事」「学び直し」「健康」の3つの観点で、今後どのように行動を変えるかを考えます。そのうえで、時期ごとの目標、必要なスキル、そのために取り組むことを計画に落とし込みます。
お金の面では、退職金や年金などを踏まえ、定年後の収入と支出の見通しを立てます。働き方とお金の両面から現実的な計画を立てると、定年後の不安をやわらげられます。
研修の内容を決める際に押さえておきたいポイントを2つ紹介します。
50代と一口に言っても、役職や雇用形態、本人の希望はさまざまです。全員に同じ内容の研修を実施するより、対象者の状況に合わせて、重点を置くテーマを変えるとよいでしょう。
例えば、定年後の再雇用を控えた社員に向けて実施する企業があります。制度変更で役職定年が延びた社員に、意欲向上をねらいとして受講してもらう企業もあります。
| 実施場面 | 主なねらい | 重点を置くテーマ |
|---|---|---|
| 役職を外れる前後 | 新しい役割を受け止め、意欲を保つ | 役割の見直し/モチベーションの維持 |
| 再雇用の前 | 定年後の役割や働き方を見通す | 役割の見直し/ライフプラン・マネープランの作成 |
| 役職定年の延長など制度変更時 | 延びた期間での役割や目標を考える | キャリアの棚卸しと強みの再確認/役割の見直し |
| 50歳などの節目の年齢 | 定年後の生活や資金の見通しを立てる | ライフプラン・マネープランの作成 |
50代向けの研修では、「今の会社での活躍」と「定年後の生活設計」の2つを扱うことがあります。どちらも大切ですが、扱う順序には工夫が必要です。
定年後のお金や生活の話から始めると、受講者が「会社からもう期待されていない」と受け取るおそれもあります。
今の仕事での活躍をねらいとする研修と、生活・資金計画をねらいとする研修は、分けて実施する方法もあります。1回で両方を扱う場合は、先に今後の活躍を考え、そのあとで定年後の生活設計に進むと前向きに取り組みやすくなります。
ここからは、研修の企画から実施後までに直面しやすい課題と、その対策を紹介します。
研修の案内を出すと、50代社員から警戒されることがあります。「今さら受けて意味があるのか」「退職を促されるのではないか」といった受け止め方です。
案内文では、研修の目的を「これからの活躍のため」と明確に伝えましょう。あわせて、一定の年齢の社員全員を対象にしていることも書いておきます。特定の人を選んだわけではないと伝わり、参加への不安を減らせます。
研修の結果を人事評価に使わない場合は、その旨も明記しておくとよいでしょう。研修名に「活躍」などの言葉を入れると、受講者に前向きな印象を持ってもらいやすくなります。
研修の予算を申請すると、経営層から研修の効果を問われることがあります。「自分探しで終わるのではないか」「仕事の成果にどうつながるのか」といった質問です。
説明する際は、研修の目的とあわせて、研修後に受講者がどのような状態になっているかを具体的に示しましょう。業務とのつながりが見えると、理解を得やすいでしょう。
研修後の報告では、目に見える成果物を示すのも効果的です。例えば、受講者が書き出した強みや貢献できること、作成した行動計画などです。
受講者を研修に送り出したきりになると、現場に戻ったあとのフォローが手薄になります。その結果、研修で立てた行動計画が実行されないまま終わってしまうこともあります。
上司に働きかけ、研修の前後で関わってもらう仕組みをつくりましょう。
上司と共有しておきたいこと
リスキルでは、50代社員の課題に合わせて次のような研修を提供しています。
| 課題 | 研修 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 今の仕事で活躍し続けてほしい | ミドル・シニア層活躍研修 | やりがいを持って働く準備、ノウハウの仕組み化、健康維持、行動計画 |
| 定年後のキャリアと生活を考えてほしい | セカンドキャリアを見据えたライフキャリアプラン研修 | 仕事・生活・お金の3側面から将来像を描き、行動計画を作成 |
| お金に関する判断基準を持ってほしい | セミナー型 50歳からのライフ&マネー研修 | 50歳以降のお金の変化を整理し、支出・収入への対応を考える |
働く期間が長くなるなか、50代社員に定年前後まで活躍してもらうことは、多くの企業の課題です。
50代向けのキャリアデザイン研修の目的は、これまでの経験を土台に、定年前後まで自分の意思で組織に貢献し続けられる状態をつくることです。研修では、キャリアの棚卸しや役割の見直し、モチベーションの維持、ライフプラン・マネープランの作成などを扱います。
テーマは実施場面に合わせて選びましょう。今の仕事での活躍を考えてから生活設計に進むと、受講者も前向きな気持ちで参加できます。
企画の際は、受講者への案内や経営層への説明、上司への働きかけまで含めて設計しておくと、研修の効果を高められるでしょう。自社の課題に合った研修を検討してみてください。
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