VUCAとは、Volatility（変動性）、Uncertainty（不確実性）、Complexity（複雑性）、Ambiguity（曖昧性）の頭文字を取った言葉だ。この４つの要素は、現代社会の不確実な状況を網羅している。
このような状況が進む中で、キャリアデザインはますます重要になってくる。昔なら、「一つの会社で長く働く」ことが安定の証だった。しかし、今は違う。
キャリアをデザインする際には、これらの不安定な要素をどう乗り越えるか、どう対処するかが鍵となる。この記事では、VUCAの各要素を理解し、それに対応するためのキャリアデザインのポイントについて考えていく。
変動性とは、状況や要素が急速に変わる特性を指す。
例えば、スマートフォンが一般化したことで、写真を撮る方法、情報を検索する方法、人々とコミュニケーションを取る手段など、日常生活の多くの面が一変した。
このような急激な変化は、ビジネスにおいても同様で、新しいテクノロジーが登場することで、従来のビジネスモデルが崩れるケースがある。
不確実性は、未来の出来事や状況が確実でない、予測が難しい状態を指す。
新型ウイルスの影響で、多くの企業がリモートワークに急遽移行したり、規制が厳しくなったりすることで、これまでの働き方やビジネスプロセスが大きく変更された。
そうした変更は、ウイルスが流行る１年前にはほとんど予測できなかったことだろう。
複雑性とは、多くの要素や変数が関連し合い、単純な解決策が見つからない状態である。
気候変動はその典型例だ。この問題には、政治、経済、科学、さらには文化や個々人の行動まで、多くの要素が関与している。
各要素も自体が複雑であり、すべてが相互に影響を与えているため、簡単な解決策は存在しない。
曖昧性とは、事実や状況が一義的でなく、複数の解釈が可能な状態である。
例として、健康に良いとされる食品や運動方法も挙げられる。
研究が進むにつれて、その評価は変わることが多い。一つの研究が「コーヒーは健康に良い」と結論づけたとしても、次の研究でその逆が示されることは少なくない。
VUCAというのは変動性、不確実性、複雑性、曖昧性が絶えず働いている状況を指す。このような不確かな環境では、硬直した考え方やスキルセットでは対応しきれない。
一昔前までは、特定のスキルに磨きをかけて専門家になるというキャリアが多かった。しかし、今はその専門性もあまりにも突然変わることがある。たとえば、テクノロジーの進化によって昨年まで有用だったスキルが、今年はもう陳腐化しているケースもある。
そういった不確実性に対処するには、自身のスキルや知識を多角的に展開する柔軟性が必要である。一つの分野に縛られず、多様なフィールドで活躍できるように自分を磨く。
例えば、マーケティングの専門家であれば、データ分析やプログラミングにも手を広げる。これにより、何が起きても自分自身が価値を持つ存在であり続けられる。
プランニングと柔軟性は一見矛盾するように思えるが、VUCAの世界ではこれが重要なバランスである。未来は不確実だが、それを理由に全く計画を立てないわけにはいかない。プランニングによって目的や方向性を明確にし、そこに到達するための行動計画を作る。
しかしその計画も石刻みではない。外部環境の変化、自分自身の成長や気づきによって、プランは柔軟に修正されるべきである。
例を挙げると、5年後にマネージメントのポジションを目指すというプランがあったとする。
しかし、その道のりで新たなテクノロジーや市場のニーズが変わる可能性もある。こういった変化に即座に対応できるように、プランには柔軟性を持たせる必要がある。中期・長期の目標は明確にしつつ、その達成方法は柔軟に調整していく。
常に学び続け、自分のスキルや視点をアップデートする姿勢が求められます。
この状況で参考になるのが「Will・Can・Must」のフレームワークだ。この簡単なフレームワークを用いることで、目指す方向や必要なスキル、果たすべき責任が明確になる。
このフレームワークについてはこちらのコラムでも詳しく紹介しているので、合わせて読んでほしい。
VUCAの世界で成功するためには、情報やスキルだけでは不足である。人々との良好な関係性が極めて重要な要素となる。特に、キャリアを形成する上で「ネットワーキング」と「メンタリング」は切り離せない関係にある。
ネットワーキングとは、自分が目指すキャリアに役立つ人々との関係を築く行為である。この関係性は、新しい仕事やプロジェクト、さらには未来のキャリアチャンスに繋がる可能性がある。具体的には、SNSで業界の先輩や同僚と繋がる、セミナーに参加して興味を持つ分野の専門家と話をするなどが考えられる。
メンタリングとは、より経験豊富な人物から学び、アドバイスを受ける関係を意味する。メンターがいると、自分一人では気づかない視点やアプローチ、対処方法を教えてもらえる。これはVUCAの世界で非常に有用であり、メンターから得た知識や経験は直接的なスキルセットの向上にも寄与する。
VUCAの時代において、静かに同じ場所にいるわけにはいかない。常に自己啓発とスキルの向上が求められる。何を学び、どのようにスキルを高めるかは、自分自身の目的と市場のニーズに応じて変わる場合もある。
自己啓発とは、自分自身の成長のために知識やスキルを磨く行為である。具体的な方法としては、本を読む、研修やセミナーに参加する、または専門家のセミナーや講演を聞くなど多岐にわたる。特に研修については、テーマ別研修や階層別研修など、自己啓発したい内容に合わせて選ぶことも可能だ。
このような活動によって、自分の見識を広げ、思考の幅を増やすことができる。
スキルセットとは、自分が持っている能力のことである。一般的なビジネススキル（コミュニケーション、プロジェクトマネジメントなど）から、特定の業界で求められるテクニカルスキル（プログラミング、データ分析など）まで、多くのスキルが存在する。VUCA環境で生き抜くには、バランスの取れたスキルセットが必要であり、それを維持・向上させるためには、自己啓発が不可欠である。
VUCA時代は誰もが直面する厳しい現実であるが、その中で成功するためには柔軟性、適応力、明確なビジョンが必要である。これは個々の人にも企業にも当てはまる言葉だ。そして、成功するためには、常に自らを高め、状況に適応する能力を育むことが求められる。
企業もまた、VUCAに対応できる人材をしっかりと育て上げる必要がある。そのためには、多角的思考や柔軟な戦略設計、コミュニケーション力を強化する教育が必要である。
※参考：時代に適応し生き残る企業に！VUCA時代の人財育成とマネジメントの重要性
最後に、VUCAの要素は確かに挑戦であり、不安を感じさせるかもしれない。しかし、これらの要素は同時に新しいチャンスや可能性も生む。だからこそ、VUCA時代においては、前向きな姿勢で、持続的に自己啓発と挑戦を続けることが重要である。
