テレワークでは、オフィスにいた頃と比べて仕事のスピードやモチベーションを保ちづらくなっている社員もいるだろう。さらに、メールやチャットだけのやりとりでコミュニケーションがとりづらい人もいると思う。
本記事では、テレワーク環境でも信頼される働き方を実現するために、進捗の見える化のコツとオンラインコミュニケーションの基本を紹介する。
まず、テレワークで起こりやすい悩みを解説する。
テレワークでは、上司やチームメンバーから「どこまで進んでいるのか」「思ったより進みが遅いように見える」と指摘されることがある。本人は働いているつもりでも、作業の途中経過が共有されていなければ「本当に仕事をしているのか」「締切が間に合うのか」と思われる場合がある。
複数のタスクを並行して進めている場合や、調査・資料の読み込みなど「目に見えにくい仕事」をしている場合は、進捗が不透明に感じられやすい。
自宅でのテレワークは、仕事と生活の境目が曖昧になりやすい。「スマートフォンを触ってしまう」「何となく作業に集中できず気づくと時間だけが過ぎている」状態に陥ると、仕事のスピードや質の低下を招く。
また、オフィスのように同僚の動きが見えないため、良くも悪くも周囲の空気感に引っ張られにくくなり、モチベーションの波を自分で管理する必要が高まる。自己管理が苦手な人ほど「テレワークになってから成果を出しづらい」と感じる傾向にある。
テレワークでは、社員同士のコミュニケーションの大半が「画面越し」もしくは「文字のみ」となる。対面と異なり表情や声色が伝わりにくいため「きつい言い方」に受け取られてしまったり、丁寧に書いたつもりが要点のわかりにくい長文になってしまったりする。
次に、テレワークで働く社員が気を付けておきたいことを見てみよう。
テレワークを円滑に進めるには、会社や上司の運用の工夫に加えて、「社員側の働き方の工夫」も重要だ。前提として「自分の会社・上司のルールや期待値を把握する」は抑えたい。「最低限の報告で良い」上司もいれば「細かく状況を知りたい」上司もいる。テレワークを始める前は、報告の頻度を確認してから業務に取り掛かりたい。
進捗状況をチームメンバーに伝える「見える化」も大切だ。お互いの業務や進捗を見える化(視覚化)することにより、現状の把握がしやすくなる。また、情報の透明性も増すため、チーム内の信頼関係も作りやすくなるというメリットがある(誰が何をしているかわかる)。具体的な方法は以下の通りだ。
テレワークでは「予定」と「実績」のセットでの共有が大切だ。例えば始業開始の時点で「今日はA資料の構成案作成とB企画のリサーチを終える」と宣言し、夕方には「A資料構成案は9割まで完了、B企画リサーチは参考資料10本中7本の確認まで進行。残りは明日の午前中で完了予定」と報告するイメージだ。完了したタスクと残処理を具体的にすると、上司の不安は軽減される。
業務当日の振り返りだけでなく、明日の予定もあわせて伝えるとタスクの抜け漏れや認識のズレを防ぎやすい。例えば「明日は午前中にA案件の修正対応、午後にB案件の資料作成を進め、17時までにドラフトを共有する」と伝えれば、チームメンバーに予定が共有されるため、お互いにスケジュール調整をしやすくなる。
チームでタスク管理システムやプロジェクト管理ツールを利用している場合は、「自分のタスク」「期限」「進捗状況」の更新が重要だ。ツールがなくても共有スプレッドシートや簡易な一覧表などを用意し、「タスク名」「担当者」「期限」「進捗(未着手/作業中/完了)」を記録するだけで、メンバー同士がお互いの状況を把握しやすくなる。
業務を遂行するには、テレワークで業務効率や生産性を落とさない仕組みをつくることも大切だ。ポイントは次の通りだ。
1日の予定を何も決めずにテレワークすると、生産性が低下しかねない。目標達成するためには「今日終わらせる3つのタスク」を決めておくことを推奨する。あわせてチャットやメールの通知を一時的にオフにして、作業に没頭できる集中タイムをつくることも効果的だ。
長時間同じ作業を続けると集中力が低下しやすいため「90分作業+短い休憩」のサイクルで区切ることを推奨する。また、仕事の進め方や判断に迷った場合は、1人で悩み過ぎてはいけない。「15分考えても方向性が定まらない場合は上司や先輩に相談する」とルール化しておけば、手戻りやムダな時間の発生を抑えられる。
なお、このルールを独自で実行して良いかは会社やチームのルールにもよる。「自身で考えても迷ったら、即時チャットをしてよいか」などはチーム内の先輩社員や上司への確認も忘れずに行いたい。
テレワークでは、上司が仕事の途中経過を目で確認しづらい。仮に業務が全て終わってからまとめて報告する形だと、修正が必要になったときの手戻りが大きくなりがちだ。防ぐには、工程ごとに進捗状況を見せることが大切だ。工程ごとに共有できる状態をつくれば、1回あたりの修正負荷を小さくできる。
しかし、工程ごとに細かく報告されることを好まない上司もいる。その場合は、報告の頻度やタイミングをあらかじめ相談すると良いだろう。
」もしくは「文字のみ」となる。対面と異なり表情や声色が伝わりにくいため「きつい言い方」に受け取られてしまったり、丁寧に書いたつもりが要点のわかりにくい長文になってしまったりする。
テレワークで仕事をしている際に起こりがちな、仕事のゆるみや集中力の維持が難しい点についても、自身で対応していく必要がある。ポイントは次の通りだ。
長時間座りっぱなしで作業を続けると姿勢が崩れやすく、身体の疲れやだるさにつながる。集中力を取り戻すには1〜2時間おきに椅子から立ち上がり、背筋を伸ばしたり肩や首を軽く回したりすると良い。頭の冴え方も変わり、業務効率アップが期待できる。
作業の切り替えやオンライン会議の前後に「1分間の深呼吸」を取り入れることも効果的だ。ゆっくりと息を吸って吐くことに意識を向けることで、緊張やイライラが和らぎ、次のタスクに集中しやすくなる。
同じ画面を見続けていると、目だけでなく心も疲労する。コーヒーを淹れに行く、水を飲む、ベランダに出て外気に触れるなど、数分間席を離れることが望ましい。リフレッシュとなり、仕事のスピードや質が高まるはずだ。
コミュニケーションのとり方も工夫しなくてはならない。ポイントは次の通りだ。
メールやチャットでは、「簡潔さ」と「わかりやすさ」のバランスが重要だ。メッセージの中に話題を詰め込み過ぎると、どの内容に返答すべきか不明瞭になる。また、感情的なニュアンスは相手に伝わりにくいため、受け手に配慮した言葉選びが欠かせない。結論→理由→補足の順に整理し、期限や希望タイミングを明確にしよう。
オンライン会議では、リアクションが分かりにくい。表情やうなずきなどの「ノンバーバル・コミュニケーション」をとれば、相手は「話を聞いてもらえている」と感じるだろう。一人で話し続ける時間が長くなり過ぎないようにして、相手も話せる環境にした方が良い。
チャットは気軽にやり取りできる一方で、「だらだら続いて何が決まったのか不明」な状況に陥る場合がある。一段落したタイミングで「〇〇の内容で進める」など締めの一言が入っていると、履歴を振り返った際に結果が分かる。
チーム全体でコミュニケーションの基準を揃えなければ「自分だけが努力している」「部署ごとにやり方がバラバラ」などの不公平感が生まれやすくなる。そこで効果的なことが「テレワーク研修」だ。テレワーク下でのコミュニケーションや自己管理などを体系的に学ぶことで、メンバー間で認識を擦り合わせやすくなり、スムーズに働けるようになる。
最後に、テレワーク環境で起こりやすい「オンラインハラスメント」にも触れておきたい。
オンラインハラスメントとは、メール・チャット・オンライン会議など、デジタル上のコミュニケーションを通じて行われるハラスメントの総称だ。パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントがオンラインに形を変えて現れるケースも含まれる。
例えば、次のケースがオンラインハラスメントに該当しやすい。
相手に強いストレスや精神的負担を与えると、自分が加害者とみなされる可能性も出てくる。
ポイントは、感情的・攻撃的なメッセージを送らないことだ。テキストコミュニケーションは、表情や声色が伝わらない分、相手にとっては予想以上にきつく受け止められやすい。自分の感情を文章に反映させるのではなく、一度読み返してから送信したい。
また、連絡時間帯や頻度の配慮も重要だ。深夜・早朝のメッセージ送受信は、心理的な負担につながるかもしれない。緊急の場合を除いて基本的に送らないことが大切だ。急ぎでもないのにメールが届くと、上司はチェックしないといけないと思う可能性がある。送り忘れを防ぎたい場合は、自動で指定された時間に送信してくれる「予約送信機能」を使うと便利だ。
万が一オンラインハラスメントを受けていると感じた場合「自分が悪い」と思い込まないことが大切だ。相手が上司や取引先であっても、人格を否定するような言動や、生活リズムを乱す過度な連絡は許されるものではない。感情的に反論する前に、事実関係を冷静に整理して相談したい。
具体的には、チャットやメールの履歴、オンライン会議での発言内容など、客観的な記録を残しておくことが有効だ。一人で抱え込まず、社内のハラスメント相談窓口や人事部門、信頼できる上司・先輩に状況を共有すると良いだろう。直属の上司が加害者である場合は、別系統の相談ルートを選ぶことも重要だ。
テレワークを円滑に進めるには、社員の努力だけでなく、企業や上司が環境やルールを整えることも重要だ。ここでは、企業や上司側で配慮したいポイントを整理する。
テレワーク下では、対面で働いていた際には読み取れた「上司からの暗黙の期待」を部下は読み取りづらい状況になる。上司側が業務の優先順位や成果物のイメージを具体的に言語化して伝えることが望ましい。
例えば「A案件はスピード重視のため、精度が60%くらいでも明日に一回確認させてほしい」など、判断基準を明確にすることで、社員は迷いを減らしやすくなる。部下としても何度も上司に確認しづらいため、できるだけ具体的かつ期限などは数字で伝えよう。
報告の仕方や頻度の目安を示しておくことも必要だ。ルールをチームで統一しておけば、部下も「いつ、どこまで報告すればよいか」がわかりやすくなり、過不足のないコミュニケーションにつながる。なお、具体的なルール設定は、業務内容やチーム内・社内のルールに沿って伝えつつ、部下がやりづらそうなら調整することも良いだろう。
テレワークでは、用件があるときだけ連絡する「用件ベース」のコミュニケーションに偏りやすい。そのため、相談のハードルが上がり、社員が一人で抱え込んでしまうリスクも高まる。企業や上司は、あえて相談しやすい場を用意することが大切だ。
オンラインでも「話しかけてよい雰囲気」や「相談してよい時間帯」が見えるようにしておくことで、ミスコミュニケーションの防止につながる。
プロセスの内容を確認しながら、フィードバックする姿勢が大切だ。オンラインでフィードバックを行う際は、感情的な言い回しや人格に踏み込んだ表現を避け、「事実」と「影響」と「期待する行動」を整理して伝えるとよいだろう。
テレワークでは、「進捗が見えにくい」「スピードやモチベーションが落ちやすい」「文章だけで誤解が生まれやすい」など特有の課題が生じる。取り組める内容は次の通りだ。
さらにテレワーク研修を活用し、組織としての共通ルールや共通言語を整えれば、成果を挙げやすくなる。個人の工夫と組織の仕組みづくりの両面から、テレワークをより良い働き方へ築き上げることが、今後求められるだろう。
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