キャリアをスムーズに積み上げるには、会社のサポートが必要だ。今回紹介する「キャリアラダー」を導入すれば、社員たちのキャリア形成に役立つ。本記事ではキャリアラダーの概要を紹介しつつ、メリットや導入時のコツを解説する。
目次
キャリアラダー(Career Ladder)とは、従業員がはしご(ラダー)を一段ずつ登るようにキャリアアップしていくための、人生制度や能力開発制度のことを指す。
各階層ごとに求められる知識・スキルなどが具体的に定義されており、従業員はこれを目安に「自身が今どこにいるか」「次のステップに進むために何をすれば良いのか」が明確に理解できるようになる。
キャリアラダーは、業務で必要な専門性を身につけることを目的としている。仕事のスキルアップを実現させるために行われる。
一方キャリアパスとは、昇進のために用意されたルートのことだ。社内での出世や異動に役立ててもらうことを目的としており、コミュニケーションスキルやマネジメントスキルなどの知識を身に着けていく。よって両者は別物だと言える。
キャリアラダーを導入する理由は以下の通りだ
次のステップに進むために必要なスキルや役割が明確に示さるため「何をすれば良いかわからない」という漠然とした不安が解消される。また、目標が明確になることで、主体的にスキルアップに取り組みやすい環境を作りやすくなる。
加えて、評価基準が明確になるため、従業員側としても「キャリアラダーに従った公平な評価がされている」と納得しやすいこともメリットだ。
求められるスキルや行動が明確になっていることは、育成担当者にとってもメリットがある。指導内容にばらつきが出にくく、成長を支援することができる。また、従業員一人ひとりの状態が見えるようになるため、個々の能力に合わせた業務分担もやりやすくなる。
ここからは、キャリアラダーを導入するときの流れを紹介していく。
キャリアを階層化することで、ステップを歩みやすい状態を作る。役職や入社年数など、様々なものを考慮しながら階層化していく。
キャリアを階層化すれば、対象者は自分がどの立ち位置にいるか分かる。結果、キャリアを歩むのが楽になる。なおキャリアの階層化では、下記のことを意識すると良い。
レベル間に大きな差があると、次のステージへ行くためのハードルが高く見える。すると社員たちのモチベーションの低下し、現状維持で満足する社員が増えてしまう。それを解消する意味でも、レベル間の差は小さくした方がいい。
階層化しても、会社に役立つ人材が育たなければ意味がない。それを防ぐ意味でも、キャリアラダーの目的を意識しながら階層化すべきだ。
たとえば「営業スキルを磨いてほしい」という目的があれば、営業スキルを磨くための階層化を心掛けるといい。すると、会社に役立つキャリアラダーが出来上がる。
階層化した内容を頻繁に変更すべきではない理由は、講師や上司の負担を増やさないためだ。内容を変更すると指導方法が変わるため、講師や上司に負担をかけてしまう。その結果、社員の人材育成に支障をきたす。
また、受講者にも負担を与える。階層化した内容が変わると、ゴールを変えなければいけないからだ。目標が変わると進むべき方向も変わるため受講者は戸惑う。その結果、受講者の興味・関心が薄れていき、スキルアップを目指さなくなる。
その状態になると、社員たちは現状維持を求めやすくなる。社員が成長する流れを止めないためにも、階層化した内容を頻繁に変更すべきではない。
明確な評価基準がないと、正確な評価がつけられない。するとキャリアラダーの運営に支障をきたす。それが当たり前になると、適当に評価をつける習慣ができて、出来の良い社員がキャリアを築けなくなる恐れがある。結果、キャリアラダーの質が落ちてしまう。それを防ぐためにも、評価システムの構築は行うべきだ。
なお評価システムの構築では、以下のことに気を付けると良い。
受講者に分かりやすい基準を設ける理由は、自身がとるべき行動を明確にさせるためだ。たとえば良い評価を得るための基準が分かれば、受講者は正しい方向を目掛けて努力できる。すると社員の成長スピードが上がっていく。会社の戦力となる社員を、短期間で生み出すのに役立つ。
評価システムを適切に運用するには、誰が評価しても同じ基準でスコアを付けられる仕組みを作ることも大切だ。
たとえば「主観で評価できない仕組みを作る」「どの評価者が見ても理解できる評価項目にする」といった形で評価基準を設ければ、評価者によるスコアの誤差が小さくなる。結果、誰でも同じ基準で評価できる体制になっていく。
特定の社員に有利となる評価基準を設けると、不平不満を持つ社員が増える。その結果、社員は会社への信頼をなくす。キャリアを積むことに対して消極的な社員が増えて、人材が育たなくなる。その状態を防ぐ意味で、平等な評価基準にすべきだ。
評価基準が平等になれば、実力のある社員がキャリアアップできる。その結果、社員たちの不平不満は減り、社内の士気が高まる状態を作れる。
評価の内容を給与に反映させるのも、社員のモチベーションを上げる意味で大事だ。仮に高評価を得た社員の給与がアップする仕組みを作っておけば、給与アップを目指してキャリアを積み上げる社員が増えていく。社員が積極的に取り組む流れができて、キャリアラダーの運用が楽になる。
高評価を得るためのハードルが高すぎると、社員たちのやる気を削ぐ。会社のエゴのみで基準を高くするのは良くない。それなりに頑張れば、クリアできる基準に設定するといいだろう。可能性を感じる社員が増えて、会社全体の成長スピードを上げるのに役立つ。
キャリア研修を導入する理由は、社員の成長度を加速化させるためだ。キャリア研修を受講させると、点と点が線になる瞬間が増える。その結果、知識を習得するスピードが速くなり、ステージをクリアするのも楽になる。社員を成長させるためにも、キャリア研修は導入すべきだ。
キャリア研修を導入する上で大事になるのが「研修内容」だ。適当な内容だと、導入しても効果を発揮しない。研修内容を決めるときは、以下のことを抑えると良いだろう。
受講対象者を明確にする理由は、受講者に役立つ研修を提供するためだ。たとえ同じテーマの研修でも、社員の立つステージによって、教えるべき内容は異なる。
応用スキルを中心にした方がいい場合もあれば、基礎スキルを中心に教えた方がいいケースもある。受講者に役立つ内容を提供するためにも、意識した方が良い。
社内の課題を調べる理由は、キャリア研修を会社の成長につなげるためだ。社内の課題を調べて、それを参考にしてキャリア研修の内容を決めれば、受講した社員が会社の課題を解決するためにキャリアを築ける状態が生まれる。結果、会社に利益を与える人材が育ちやすくなる。
キャリア研修を受講させても、期待していた成果が出ないのでは意味がない。想定通りの成果を挙げるには、ゴールを明確にした方がいい。
たとえば「個人の営業売上を2倍以上にする」とゴールを決めれば、それを実行するのに必要な研修を考えられる。結果、キャリアラダーに合う研修を提供できる。
教える順番を間違えると、キャリアラダーに支障をきたす。たとえば基本的な内容を抑えていないのに応用スキルを教える流れになると、基礎知識がない状況で教わる形になる。
その結果、研修の内容を理解できずステージをクリアするのに時間がかかってしまう。効率よくスキルを身に着けてもらうためにも、教える順番は意識した方が良い。
キャリア研修を受講している社員の中には、ついていけないケースがある。そのときに社員が困らないように、サポート体制を整えることも大事だ。
質問内容に回答したり補修を行ったり、社員自身でレベルアップできる環境を作ったりなど、社員に役立つサポートを実施すると良い。分からないままだと、次のステージへ行けない。分からないことを放置させないためにも、サポート体制はあった方が良い。
質の良いキャリア研修を実施するには、トレーナーの選び方も大切だ。トレーナーによって、指導スキルや得意分野が異なるからだ。たとえ経歴が立派でも、社員に役立たない話が多い講師だと、コストパフォーマンスが悪い。よって、会社に貢献してくれる講師を選ぶべきだ。
最後にキャリアラダーの導入事例を紹介する。
メルカリではエンジニアが段階ごとに成長できるよう、キャリアラダーを運用している。自社のバリューを参考にして、6つのステージに分けられた。
たとえばステージ1では基本的な作業ができることを目標としているが、ステージ6では前例のないことを取り組んだり、他部署とのやり取りをスムーズに行ったりできることを目標としている。各ステージにおいて必要な行動が具現化されているため、進むべき方向性が分かりやすい。
GAPは、キャリアラダーにいち早く取り組んだ会社と言われている。同社では、非正規雇用の採用を中心としている。これは正社員に至るまでのプロセスを、キャリアラダーによって築かせようとしているからだ。
この状態を作れば、非正規雇用の従業員はモチベーションを低下させずにキャリアを築ける。しかも会社が求める能力をクリアした従業員のみが正社員になれるため、優秀な人材を確保しやすい。それが、自社の成長につながっている。
キャリアラダーは、社員たちがキャリアを築きやすい状態を作るために必要な制度と言える。国内では医療施設を中心に導入されているが、それ以外の職種においても導入が可能だ。実際にメルカリやGAPなど、医療施設とは異なる企業においても導入されているため、人材教育プログラムとして活用するといいだろう。
なお、キャリア研修やキャリアデザイン研修なども同時に行うとより良いだろう。本記事を参考にしてキャリアラダーの導入に力を入れていただき、会社の成長を加速化していただければと思う。
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