リスキルラボ QCDSとは?Sは「サービス」?「安全性」?具体的な改善策とその評価方法を分かりやすく解説

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製品やサービスを提供する企業や組織にとって、顧客の期待に応えることは最も重要な目標だ。そのための基本的な指標として「QCDS」という言葉がよく用いられる。

QCDSとは何か、その背後にある考え方は何か、そして実際の現場での利用例はどのようなものか。本稿では、これらの疑問に答える形で、QCDSの基本から応用までを解説していく。

この記事を通じて、QCDSの考え方やその重要性、さらには実際の改善活動での活用方法についての理解を深める手助けができれば嬉しい。

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QCDSとは?

QCDSは、企業や組織が提供する製品やサービスの品質を評価・改善する際の基本的な要素を指す。具体的には、以下のような要素が含まれる。

QCDSの定義

QCDSは、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)、サービス(Service)/ 安全性(Safety)の頭文字を取って名付けられたものである。これらの要素は、製品やサービスの改善において欠かせない基本的な要因とされる。

それぞれの要素の簡単な説明

品質(Quality)

製品やサービスが持つ性能や特性を指し、それがどれだけ顧客の期待や要求を満たしているかを示す。例として、コンピュータの処理速度や、衣服の耐久性がある。

コスト(Cost)

製品の生産やサービスの提供に関する経費。低コストで高品質な製品を提供することは、競争優位性を得る上で重要だ。製造コストや運営費などがこれに該当する。

納期(Delivery)

製品やサービスを顧客に提供するまでの時間。顧客が求める時期に適切に届けることで、信頼を得ることができる。

サービス(Service)/ 安全性(Safety)

顧客へのサポートやアフターケア、製品の安全性など、製品の使用過程での体験を指す。

QCDSは、これらの要素を総合的に管理・改善することで、顧客の満足度を高め、企業や組織の競争力を維持・向上させるための鍵となる。

「品質・コスト・納期」を表す「QCD」の派生語の一つだ。QCDについて先に理解を深めておきたい場合は、こちらのページでも詳しく説明しているので、合わせて読んでみてほしい。
QCDとは?QCTとの違いは?基礎からわかりやすく解説!【改善の具体例や評価方法も解説】
中堅社員向け クリティカルシンキング研修【QCDの質を上げる】

  • このQCDに「S」の要素を加えたものが「QCDS」です。

  • 「S」については次の章でも詳しく解説します。

Sは「サービス(Service)」か?「安全(Safety)」か?

QCDSの中で「S」は、多くの場合「サービス(Service)」を指すが、「安全性(Safety)」として解釈されることもある。では、この2つの違いとは何か。

サービス(Service)

製品やサービスが提供された後、顧客が体験するサポートやアフターケアを意味する。サービスは、顧客の満足度やリピート購入の意欲に大きく影響する要素だ。

・製品の不具合に対する対応
・使用方法に関する問い合わせへの対応
・出発・到着の時間の正確性
・清潔さ、スタッフの対応
・料金プランの柔軟性
・料理の提供時間
などがこれに該当する。

安全性(Safety)

製品やサービスの使用中における安全性を指す。特に工業製品や医薬品など、安全性が求められる分野での重要性は高い。

・自動車の安全装置
・食品の添加物に関する情報開示
・化学物質の取り扱いや廃棄の際の安全対策
・患者の治療や手術の際の衛生管理
・医薬品の正確な投与
・作業員の安全を確保するためのヘルメットの着用
などが挙げられる。

  • 企業や組織によって、Sが「サービス」を強調するか「安全性」を強調するかは異なります。

  • しかし、どちらも顧客の信頼を得るための非常に重要な要素であり、適切に管理・改善する必要があります。

Service サービスの評価方法

サービスとは、製品とは異なり、触れることのできない非物質的な提供物だ。この非物質性のため、その品質を評価するのは一筋縄ではいかない。顧客が感じる満足度や期待、実際の経験とのギャップなど、主観的な要素が強く影響する。

顧客満足度調査

顧客からの直接的なフィードバックを収集するための手法として顧客満足度調査がある。アンケートの質問内容には、サービス提供時のスタッフの対応や、施設の清潔感、応答速度などの具体的な項目を設ける。

これにより、詳細な意見を引き出すことが可能となる。また、定期的にこれを実施することで、長期的なトレンドや変化する顧客のニーズを捉えることができる。

ミステリーショッパー

第三者が店舗やサービス施設を訪問し、普通の顧客として振る舞うことでサービスを評価する方法としてミステリーショッパーが用いられる。

この方法では、客観的な視点での評価が可能であり、スタッフの対応やサービスの流れ、設備の状態などを詳細にチェックすることができる。

そして、ミステリーショッパーの報告を基に、スタッフのトレーニングや業務の見直しを行うことで、サービスの質を向上させる手がかりとすることができる。

KPI(Key Performance Indicator)の設定

サービスの品質を具体的な数値で示すことは、改善活動の方向性を明確にし、組織の目標と合わせる上で極めて有効だ。

ここで重要となるのがKPI、すなわち主要業績評価指標の設定である。

KPIは、サービスの品質を示す指標として、例えば「対応時間」や「解決率」、「再発率」などが挙げられる。これらの指標を定期的に計測し、目標値との差を確認することで、サービスの品質向上の方向性や改善の進捗を把握することができる。

フィードバックの収集と分析

近年、SNSやレビューサイトの普及により、顧客の声をダイレクトに収集することが容易となってきた。

これらのフィードバックを日常的に収集し、定量的・定性的に分析することで、サービスの弱点や新たなニーズを早期に捉えることが可能だ。具体的なクレームや賞賛、提案など、多岐にわたる意見は、サービス改善の貴重な手がかりとなる。

サービスの評価は、その非物質性から複雑な側面を持つが、上記の方法を組み合わせることで、より客観的かつ継続的な評価が実現する。重要なのは、組織全体での取り組みと、それを支える仕組み作りだ。

  • サービスの品質向上は終わりがない旅であるが、その旅を進める中で、常に顧客の期待を超えるサービスを提供することを目指すべきです。

Safety 安全性の評価方法

安全性は製造業や建設業など、多くの業界で非常に重要な要素として取り上げられる。特に製造業の場面では、工場や現場での事故を未然に防ぐことが求められる。安全性の評価は、事故やトラブルを予防し、作業者や利用者の安全を確保するための基盤となる。

リスクアセスメント

リスクアセスメントは、現場の潜在的な危険やリスクを特定し、それらのリスクの大きさや頻度を評価する手法だ。評価の結果をもとに、必要な安全対策を計画・実施する。

事故発生率と事故頻度率

事故発生率は、ある期間内に発生した事故の数を労働者数で割ったもの。事故頻度率は、ある期間内に発生した事故の数を労働時間で割ったものだ。これらの数値を通じて、安全性の向上や問題点を把握する。

安全教育の実施状況

安全教育の内容や頻度、参加者の数などを評価することで、組織内の安全意識の高さや教育の有効性を判断する。

安全対策の適用度

設備や機器の安全装置の有無、または使用状況をチェックし、適切に安全対策が適用されているかを評価する。

安全監査

外部の専門家や内部の安全担当者が、現場を訪問し、安全管理の状況や実際の作業状況を確認。評価結果をもとに、必要な改善点や新しい安全対策を提案する。

安全性の評価は、日々の作業の中での継続的な取り組みが必要だ。

  • 組織全体での安全意識の向上や、具体的な安全対策の実施を通じて、事故やトラブルのリスクを低減させることを目指すべきです。

QCDS改善の具体例

QCDSの考え方を深く理解するために、具体的なシチュエーションを元に考えてみよう。

例①製造業シチュエーション

企業Aは自動車部品の製造を行っている。近年、品質の問題や納期の遅れ、コストの増加に悩んでいる

品質(Quality)

製造ラインのボトルネックを特定し、改善活動を行うことで、不良率を低減する取り組みを考える。

コスト(Cost)

部品の発注を見直し、効率的な生産ラインの構築を試みることで、製造コストの削減を目指す。

納期(Delivery)

生産計画の最適化を進め、外部の物流業者との連携を強化することで、納期遅延を防ぐ策を練る。

安全性(Safety)

製造ラインでの事故やトラブルが発生しないように、定期的な安全教育や設備の点検を実施。作業者の安全を最優先する取り組みを強化する。

例②飲食業シチュエーション

レストランBは、地元での評価は高いものの、効率的な運営や安定したサービス提供に課題を感じている。

品質(Quality)

メニューの一部を見直し、使用する食材の品質を向上させる。また、料理の提供スピードと味の一貫性を保つためのトレーニングを行う。

コスト(Cost)

無駄な在庫を減らすため、発注の最適化を行う。また、エネルギー消費を抑えるための設備投資を検討する。

納期(Delivery)

予約システムの見直しを行い、ピーク時でも待ち時間を減少させる方策を考える。また、テイクアウトやデリバリーの効率化も視野に入れる。

サービス(Service)

スタッフの接客トレーニングを強化し、顧客の声をもっと取り入れるフィードバックシステムを構築する。

例③IT業界シチュエーション

IT企業Cは、クラウドベースのソフトウェアサービスを提供しているが、競合との差別化や顧客満足度の向上を求められている。

品質(Quality)

ソフトウェアのバグを早急に修正し、ユーザビリティを向上させるための改善を行う。

コスト(Cost)

インフラストラクチャのコストを削減するため、最新のクラウド技術を採用し、効率的な運用方法を模索する。

納期(Delivery)

アップデートや新機能のリリーススケジュールを明確にし、顧客に適切な期間を通知する。

サービス(Service)

顧客サポートの体制を強化し、ユーザーからのフィードバックを迅速に反映させるメカニズムを作る。

QCDSの派生語

QCDSの基本的な概念を理解した上で、この考え方がさらに発展して、いくつかの派生語や関連する概念が生まれてきたことを知ると役立つだろう。ここでは、主な派生語について紹介する。

QCDSE

・品質(Quality)
・コスト(Cost)
・納期(Delivery)
・サービス(Service)
・環境(Environment):環境に対する配慮や取り組み。環境保護、持続可能性、エコフレンドリーなどの概念が関わる。

こちらのコラムでも詳しく解説している。→QCDSEとは何か?「環境」要素:施工管理での具体的なアプローチ

QCDSM

・品質(Quality)
・コスト(Cost)
・納期(Delivery)
・サービス(Service)
・道徳(Morality):ビジネス倫理や道徳的な態度、経営の公正さなどが含まれる。

こちらのコラムでも詳しく解説している。→QCDSMとは?モラル(Moral)の視点を加えた具体的な改善策と、その評価方法を分かりやすく解説

PQCDSME

この概念は、さらに拡張されている。

・人(People):従業員の満足度や福利厚生、教育研修などの人的要素。
・品質(Quality)
・コスト(Cost)
・納期(Delivery)
・サービス(Service)
・道徳(Morality)
・環境(Environment)

こちらのコラムでも詳しく解説している。→PQCDSMEとは?生産管理の管理指標として必要となる、重要な視点

  • これらの派生語や拡張概念は、QCDSだけでは表現しきれない多様なビジネスニーズや企業の価値観を示すために使用されます。

  • それぞれの企業や業界によって、重視する要素や取り組むべき課題が異なるため、これらの概念が生まれた背景には、そのような多様性やニーズの変化があります。

まとめ

QCDSはビジネスの現場で頻繁に取り上げられるコンセプトであり、品質、コスト、納期、サービス(あるいは安全性)の4つの要素を基盤として、組織の運営や品質向上の取り組みに使用される。

本記事を通じて、QCDSの基本的な考え方やその派生語、さらには具体的な改善の例や評価方法を学んだ。これらの情報をもとに、読者自身が所属する組織やチームの取り組みに役立てることができるだろう。

QCDSは単なるフレームワークや方法論にとどまらない。それは組織の文化や価値観を形成する要素ともなっている。実際の現場での応用や実践を通じて、より深い理解や効果的な活用法を追求することが重要だ。

これからも、組織やチームの目標達成、問題解決、そして継続的な成長を目指すために、QCDSの考え方を胸に、日々の業務に取り組んでいただきたい。

この記事の監修者
リスキル事務局
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Q&A
  • QCDSは、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)、サービス(Service)または安全性(Safety)の頭文字を取ったものです。これらの要素は、製品やサービスを提供する際の基本的な考慮ポイントとなります。
  • QCDSの中で「最も重要」と一概に言うのは難しいです。企業やプロジェクト、状況によって重視するポイントは異なります。ただし、全ての要素は相互に関連しており、バランスよく取り組むことが大切です。
  • はい、QCDSの考え方は基本ですが、それを更に拡張した派生語も存在します。例えば、QCDSEは「環境(Environment)」を加えたものや、QCDSMは「道徳(Morality)」を取り入れたものです。
  • どちらをSとして取り入れるかは、業種や目的によって異なります。製造業であれば「安全性」を重視することが多いですが、小売業やサービス業では「サービス」の品質を指すことが一般的です。
  • QCDSの考え方を取り入れる第一歩は、まず自社の製品やサービスにおいて、品質、コスト、納期、サービスの各要素がどのように関係しているのかを理解することです。それを踏まえ、具体的な改善策や目標を設定し、継続的に取り組むことが大切です。
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