リスキルラボ ティール組織を実現させる方法【社員達が自らの意思で動く状況をつくる】

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世の中には様々な組織が存在する。そんな中、マッキンゼーでの勤務経験を持つ著者「フレデリック・ラルー」が提唱した「ティール組織」が注目されている。ティール組織の考え方を取り入れて、利益アップにつながったケースもある。しかし、ティール組織について分からない方もいるだろう。

そこで今回は、ティール組織の概要を解説しつつ実現させる方法を紹介する。

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ティール組織とは

ティール組織とは目的を達成させるために、各メンバーが自己決定をしていく組織のことだ。マネージャーやリーダーなど、社員を管理する役職はいない。そのため各社員が自主的に動くことが求められる。

ティール組織と従来組織の違い

従来組織では株主や顧客など外部からの印象が良くなるように、代表取締役社長やCEOなどのトップが中心となり意思決定をしている。さらに、各社員の働く目的は役職によって異なる。代表取締役社長が「会社の規模を大きくする」という目標を掲げても、社員の場合「給料を上げるために出世する」というように、組織の目標と乖離しているケースも多い。

しかしティール組織では、自身の道徳観や組織に良い影響を与えるかを軸にして、各社員が組織の内部事情を考慮しながら意思決定をしていく。しかも全社員、企業を成長させることが働く目的となっているため、個人と組織の目標はリンクする。そのため、従来組織と比べると社内にまとまりが生まれやすいと言えるだろう。

ティール組織のメリット

ティール組織のメリットは以下の通りだ。

変化に対応しやすい

各メンバーが自己決定する組織であるため変化に対応しやすい。時代に取り残されない状況ができるため、生き残れる確率も高くなる。

様々な働き方ができる

ティール組織では、働き方も自身のライフスタイルに応じて決めてもらう。よって、様々な働き方が可能だ。自身の会社で働きたい社員には出社させてもいいし、子育てをしながら働きたい社員には在宅ワークを行ってもらってもいい。

働き方の幅が広がれば、家庭の事情で退職を迫られる状況は減る。したがって、人材を確保する意味でもティール組織は役立つはずだ。

メンバーの主体性が高まる

各メンバーに自己決定させる場面が多いため、主体性が高まるメリットも期待できる。主体性が高まれば、人の指示を仰がなくても決められる能力が身につくため、指示があるまで動かない社員を生み出さずに済む。

ティール組織を実現させるには

ティール組織を実現させるには、以下の手順で進めていくといい。

⓵全社員に会社のビジョンを共有する

ティール組織では、会社を成長させていく目標を考えてもらわなければならない。そのため、全社員に会社のビジョンを共有する所から始まる。共有するときは、以下のことを意識しながら伝えるといいだろう。

メンバー全員で組織を変えていくことを伝える

ティール組織では、各メンバーが組織を変えていこうとする志を持たなければ物事は進まない。したがって、メンバー全員で組織を変えることは共有すべきだ。

多様性を受け入れる組織になることを伝える

固定観念に縛られず多様性を受け入れる組織になることを伝えるのも重要だ。前例ばかり気にすると、新たな取り組みができなくなり、ティール組織の構築に支障をきたすためだ。時代に取り残されない組織にするため必要だ。

⓶目標を決めてもらい、仕事の進め方を考えてもらう

会社のビジョンを共有した後は、各社員に目標を決めさせる。その後、目標を達成させるために、どのようなスケジュールで仕事を進めていくか考えてもらう。

⓷実践させる

スケジュールに沿って、仕事を進めてもらう。各メンバーに任せるのが基本だが、社員の中には行き詰ってしまう恐れがある。その状況になったら、周囲の社員がサポートしてあげるといい。

⓸定期的にミーティングの時間を設ける

仕事の進捗状況を確認するため、定期的にミーティングの時間を設けた方がいい。なお、ミーティングでは以下のことを意識すると良い。

社員の意見を一旦受け入れる

今までに聞いたことがないアイデアや、自分の中にはない価値観の意見だったとしても、全てを拒否してはいけない。会社に恩恵をもたらす場合もあるため、社員の意見は最後まで聞くべきだ。

相手に考えさせる機会を与える

社員に自ら動いてもらうには、相手に考えさせることが大事だ。相手に質問したり自分の話をさせたりしながら、考える時間を与えていく。

対話を大事にする

ティール組織では上司が部下に指示を出すのではなく、社員と話し合いながら業務を進めていく。そのため、対話を大事にしながらミーティングすることも大事だ。

ティール組織は、段階を経てできあがっていく

ティール組織は上記で紹介した方法を実践することで、様々な組織を経ながらできあがっていく。ここでは、どのような組織を経ながら進化していくか紹介する。

第一段階:レッド(衝動型)組織

リーダーが圧倒的な力を発揮することで、成り立っている組織のことだ。個人に依存しているため、再現性はない。組織を維持させることに注力しており、力を持っていない社員は活躍できないだろう。

第二段階:琥珀(順応型)組織

権力や階級が組み込まれている組織のことだ。役職によって社員間の力が決まるのが特徴で、年功序列もこのパターンに当てはまる。長期的に運用することが意識されており、特定の社員に力が偏りすぎない体制になっているのが特徴だ。

しかし組織のメンバーが何十年も変わらない状況を生み出しやすいため、時代に取り残される恐れがある。結果、時代に取り残される確率が高くなるだろう。

第三段階:オレンジ(達成型)組織

成果を出した方が出世できる組織のことで「完全実力主義」の組織と言える。勤続年数は関係なく、成果を挙げれば誰でも出世できる。若手社員が出世するケースもあるため、第一・第二段階と比べると、新陳代謝が起こりやすい。

ただし成果を求めるあまり、人間らしさが失われてしまう危険性がある。

第四段階:グリーン(多元型)組織

メンバー達の個性を意識して、管理者が業務を与えていく組織のことだ。管理者は各社員の個性を発揮させる方法を考えていく。

ティール組織と似ているものの決定権は管理者側にある。組織によっては権限を社員に全く与えないケースもあるため、全社員が主体性を持って動ける体制とは言えない。

ティール組織を実現させるポイント

ここではティール組織を実現させる上で、大事なポイントを紹介する。

セルフマネジメント

セルフマネジメントとは自己管理のことだ。時間やタスク、心身の健康維持などの管理が求められる。社員達が自主的な行動をとらなければならないため、各社員にセルフマネジメントを身につけさせることは必須だ。セルフマネジメントでは、以下のことを意識するといい。

パフォーマンスの上昇・低下する場面を把握する

パフォーマンスが上昇したり、低下したりする場面を把握しておけば、どのように仕事を進めるべきか分かる。自分の状況に合わせながら仕事を進めていけるようになり、セルフマネジメントの向上につながっていく。

心身ともに健やかな状態を維持できる環境をつくる

心身の状態が悪くなると、セルフマネジメントの低下につながる。その状態をつくらないための環境をつくることが大事だ。睡眠時間を削らなくて良い働き方や精神的に安定した形で働ける労働環境など、様々な取り組みができる。

ホールネス

ホールネスとは、噓偽りのない状態で働くことを指す。大抵の場合、組織で仕事をしているときはプライベートの自分に仮面を被せた状態で働いている。社員として恰好をつけたり自分の想いとは違うことをやったりなど、無理をしていることが多い。

しかしその状況だと自身が抑えられてしまい、自主的に動けなくなってしまう。結果、ティール組織の運用が難しくなる。その状況をつくらないためには、ホールネスを周知させることが大事だ。

社員に攻撃されずに働ける環境(心理的安全性)をつくったり、社員が自分らしさを見つけるためのサークルをつくったりするといいだろう。建前で会話を進める機会が減り、社員同士が本音で話せるようになるため、スムーズなコミュニケーションをとるのにつながるはずだ。

組織の存在目的

組織が存在する目的を明確にすることも大事だ。明確になっていないとメンバーたちは違う方向に進んでしまう。そのため、社員間でイノベーションを起こすことも難しくなる。化学反応によってイノベーションを起こさせる意味でも、組織の存在目的を社員間で共有させておくことが大事だ。

導入事例

ティール組織の理念を導入している企業も存在する。最後に導入している企業を3カ所紹介する。

ネットプロテクションズ(日本)

代金回収や入金確認などの作業をオートメーション化する事業を行っている。「Natura」と呼ばれる人事制度を設けて、ティール組織に変えた。Naturaの特徴はマネージャーの役職を廃止したことだ。役職に囚われることなく、全社員が積極的に取り組める流れをつくった。

その他に360度評価も取り入れて、様々な社員の意見を取り入れやすい制度もつくった。役職に関係なく様々な社員からの意見を聞けるため、自分を成長させるのに役立つ。このように組織の力を強くする制度を取り入れながら、ティール組織を運用している。

ザ・モーニング・スター・カンパニー(アメリカ)

アメリカ最大級のトマト加工会社だ。さきほど紹介した事例とは逆で、全社員にマネージャーの役職を与えた。それによって全社員が責任感を持ちながら働ける環境を生み出した。その他にもティール組織の特徴を生かした制度があるため紹介する。

給料や報酬の決定権は社員にある

給料や報酬の決定権は、社員に与えられている。ただし報酬については、他の社員の評価が反映されるようだ。

会社に役立つ取り組みは社員の判断で実行できる

会社に役立つ取り組みであれば、社員の判断で実行できるルールもある。他の社員の承認を得なくて良いため、スピーディーに行動できる。

ビュートソルフ(オランダ)

在宅介護を支援する団体だ。2006年に誕生した団体で、1万人以上の介護士が所属する団体として成長した。800以上のチームがあるものの、マネージャーは存在しない。各チームメンバーに決めさせて実行する流れになっている。しかもチームの議論が円滑に進むようコーチが在籍しているため、サポート面も抜群だ。

まとめ

ティール組織は、今後の時代において注目される組織形態だと言える。今まではリーダーに多くの権限を与えたり、役職によって権限が変わったりする組織が多かった。しかし昭和・平成の時代と比べて働き方やライフスタイルが変わった今、ティール組織の考え方は覚えておくべきだ。

ティール組織の考え方を取り入れると、変化に対応できたりメンバー達の主体性が高まったりする効果が期待できるため、社員だけではなく会社にとってもメリットになる。ただしティール組織を実現させるには、正しい運用が求められる。以下のことを意識するといいだろう。

  • ⓵全社員に会社のビジョンを共有する
  • ⓶目標を決めてもらい、仕事の進め方を考えてもらう
  • ⓷実践させる
  • ⓸定期的にミーティングの時間を設ける

これらの方法を実践すると、ティール組織として運営しやすくなるだろう。社員達が動きやすいよう環境を整えることが大事だと言える。その他にティール組織を運営するときは、以下のポイントも抑えておいた方がいい。

  • セルフマネジメント
  • ホールネス
  • 組織の存在目的

3つのポイントを抑えておくと、ティール組織の体制をつくりやすくなる。日本は労働生産人口が減るため、各社員が効率的に働くことが求められている。そのためには、自分で考えながら積極的に行動する力が必要だ。力を発揮する社員を生み出すためにも、ティール組織の考え方は覚えておくべきだ。

この記事の監修者
リスキル事務局
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Q&A
  • 会社の目的を達成させるために、各社員に仕事の進め方などを決めてもらう組織のことです。基本的に指示を出すリーダーや管理職は存在しません。
  • メンバー全員で組織を変えていく流れや多様性を受け入れる組織をつくることが大切です。そのためには固定観念に囚われず、新たな流れを取り入れることが大事になります。
  • 各メンバーにセルフマネジメントを習得や、偽りのない状態で働ける環境をつくること(ホールネス)が大事です。さらに組織の在り方を考え、共通の目的を持ってもらいながら仕事をしてもらうのも重要と言えます。
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