ほとんどの企業では、クレーム対応が発生する。とくに電話でのクレーム対応は、顧客の表情が見えない分、正しい手順を踏まないと、新たなクレームを生み出す。また、正しい対応ができていないと、いくら頑張って対応していても、いつまでも解決できず、疲弊する一方だ。
そこで今回は、電話でのクレーム対応の流れとポイントを中心に紹介する。
目次
クレーム対応を適当に行うと顧客を怒らせる。悪い印象を持たれると、顧客離れを引き起こす原因になってしまう。
クレーム対応の仕方を間違えると、企業に余計な作業が増える。その状態をつくらないためにも、クレーム対応のスキルは習得した方が良い。
ここでは、電話でクレーム対応を受けるときの流れを6つのステップに分けて紹介する。
クレーム対応では、ほとんどの顧客が怒りの感情を持った状態で電話をしてくる。その状態を悪化させないために有効な手段が「謝罪」だ。謝罪をするときは、以下のことを意識すると良い。
感情がこもっていないように聞こえるため、とりあえず謝るのはNGだ。その印象を持たれないためには「部分謝罪」と呼ばれる方法を使うと良い。
部分謝罪とは、何に対する謝罪か明確にしながら謝ることを指す。なぜ謝っているのか顧客に伝わるため、渋々謝っている感じが伝わらずに済む。
言い訳をすると自社が正当化しているように見えて、顧客の気分を害する。その結果、自社への印象が悪くなる。不満を感じても、我慢してやり過ごすことが大事だ。
感情的な態度をとりながら謝ると、気持ちがこもっていない謝罪になる。仕方なく謝っている感じが伝わると、顧客の怒りを増幅させてしまう。場を取り乱さないためにも、感情的になってはいけない。
聞き取りづらい声で謝罪すると、顧客の不満を溜めてしまう。何を言っているのか分からず、余計イライラさせる。声が小さい方は、少し大きめの声を出して謝罪した方が良い。
謝罪が済んだら、顧客の話を聴く。ステップ2では、以下のことを意識すると良い。
顧客が話している最中に割り込むと、会話が遮断される。顧客は伝えたいことが言えなくなり、不満が溜まってしまう。その結果、顧客の怒りが大きくなる。
言いたいことを全て吐かせないと、顧客の怒りは収まらない。心をスッキリさせるためにも、顧客が話し終えてから発言すべきだ。
相手が話している最中は、適度に相槌を打つことも大事だ。電話でのクレーム対応だと、顧客に声しか伝わらない。聴いていることをアピールする意味でも、適度に相槌を打つことが重要だ。
しかし相槌がワンパターンだと、適当に応対していると思われる。そのため、様々なバリエーションの相槌の仕方を習得した方が良い。
顧客が言った言葉を返す「オウム返し」も行った方が良い。たとえば顧客から「〇〇の商品を使って不快だった」と言われたら、「〇〇の商品を使用されて不快になられたんですね」といった形で返す。これも顧客の話を聴いているアピールとして効果的だ。
しかしオウム返しの回数が多いと、顧客は舐められていると感じる場合がある。よって、適度に使うことが大事だ。
顧客が話し終えたら要点をまとめて、話の内容に間違いがないか確認する。この作業を怠ると話を進める中で認識の違いが起こりやすくなり、クレーム対応の手間がかかってしまう。
お互いの間で誤解が生じると、クレーム対応が前へ進まなくなる。その状態をつくらないためにも、怠ってはならない。
話を聴いた後は、顧客の気持ちを理解し、寄り添う姿勢をとっていく。理解するときは、以下のことを意識すると良い。
顧客が言ったことに共感することが大事だ。顧客は「自分の想いを分かってもらえている」と感じ、担当者への信頼度がアップする。その結果、新たなクレームを生み出さずに済む。
適当なことを言うと、話についていけなくなる恐れがある。たとえば、何も理解していない状態で「そうですね」と返事をしてしまうと、それが原因で後々トラブルに巻き込まれるかもしれない。
適当な返事をしたことが発覚すると「自分事として捉えていない」「適当に聴いている」と顧客に思われてしまう。顧客と噛み合う会話をするためにも、適当に発言すべきではない。
顧客が話した内容をもとに、事実確認をしていく。顧客に色々と質問しながら、事実を把握する。ステップ4では、以下のことに気を付けると良い。
相応しくない質問をすると、顧客を怒らせる場合がある。地雷を踏まないためにも、適切な質問をすべきだ。
聞き取りの時間が長くなると、顧客をイライラさせてしまう。早く終えたい顧客もいるため、短時間で済ませた方が良い。
顧客の話を聴いたからと言って、全ての内容を記憶できるわけではない。顧客が言った内容を忘れないためには、メモをとることが大事だ。ちなみにメモをとるときは、以下のことを意識すると良い。
言われたことを全てメモしようとすると、聞き逃しが発生したり、大事な箇所のメモがとれなかったりする。そのため、必要な箇所のみメモする習慣をつけた方が良い。内容や顧客の口調など様々なことを参考にしながら、書き記す内容を決めるといいだろう。
重要な箇所をメモしようと思っても、多すぎる場合もある。そのときは、キーワードをいくつか書くと良い。いくつもキーワードを書いておけば、点と点が線でつながり、話の内容を思い出しやすくなる。
大事な箇所が分かるようにメモするのも大切だ。言葉を赤字で書いたり、マーカーを引いたり、マークを付けたりなど様々な方法がある。
クレームによっては、顧客がウソをついていると思う場合があるかもしれない。しかし、顧客がウソをついていると思い込んで質問してはいけない。事実確認のときに失礼な発言をしたり、顧客を疑っている気持ちが伝わったりする恐れがあるからだ。
疑っていることが伝わると、顧客を余計怒らせてしまい、事実確認のときに手間がかかる。よって、顧客がウソをついている前提で質問をすべきではない。
顧客の話と事実をもとに、解決策を提示する。ステップ5では、以下のことを意識すると良い。
問題が全く解決されない解決策を提示しても意味がない。問題が解決できなければ顧客は納得しない。したがって今回の問題点が何だったか考えてから、提示することが大事だ。
たとえば難しい言葉を使うと、顧客にとって分かりづらい解決策になる。すると顧客の脳内に疑問が生まれて、不安な気持ちにさせてしまう。顧客に安心感を与えるためにも、分かりやすい解決策を提示すべきだ。
顧客によっては、解決策を提示してもNoと言われる場合もある。そうなった場合、解決策をいくつか用意しておくと代替え案を提示することができて、交渉を進めやすくなる。
たとえばA案がダメだからB案というパターンや、断られた理由が〇〇だからC案というパターンなど、様々なバリエーションで解決策を提示できる。自社にとって有利な状況をつくる意味でも重要だ。
顧客に迷惑をかけたことに対する「お詫び」と、クレームを言ってくれたことに対する「感謝の言葉」を述べる。最後のステップでホッとするかもしれないが、ここで顧客を怒らせると新たなクレームを引き起こしてしまうため、電話を切るまでは気を抜いてはいけない。
なお、ステップ6では以下のことを抑えておくと良い。
たとえ顧客に原因があったとしても、責めてはいけない。責めると顧客の気分を害する恐れがあるからだ。会社にも何かしらの非があったというスタンスで、接することが大事だ。
お詫びや感謝の言葉を述べるときに、余計なことを言うのもNGだ。ハッピーエンドに持っていくためにも、顧客の感情を逆なでしてはいけない。
お詫びをするときは、顧客の状況によって仕方を変える。商品のクレームであれば「このたびは商品に関してご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした」。会社に非がなかった場合は「このたびは〇〇様にお手間おかけしまして、申し訳ございませんでした」といった形でお詫びをすると良い。
最後に電話でのクレーム対応のポイントを紹介する。
クレームを言ってくる顧客が全てクレーマーだと決めつけてはいけない。なぜなら、自社の不備によって連絡されるケースもあるからだ。その状態でクレーマー認定して顧客を雑に扱うと、事態を収拾させるのが難しくなる。よって決めつけは良くない。
自社の対応が悪いと顧客からの要求がエスカレートしていき、やがてモンスターと化してしまう。顧客がカスタマーセンターへ無理な要求をする「カスハラ」の被害を受けているケースもある。よって丁寧な対応をして、モンスター化させないことが大事だ。
基本的にクレーム対応は1人で行うものだ。しかし状況によっては、1人で対応できない場合もある。そのときは、上司に相談するのも1つの手だ。1人で長時間クレーム対応を行っていたり、一向に解決の目処がつかなかったりする場合は、上司に相談した方が良いだろう。
電話でのクレーム対応は表情が見えない分、声と話し方を意識しなければならない。対応を間違えると、顧客の怒りを大きくしてしまうため、雑にステップを踏んではいけない。ちなみにクレーム対応の流れは以下の通りだ。
上記のステップを手順通りに踏んでいけば、顧客に不快な気持ちを与えずにクレーム対応ができる。その他にクレーム対応を長引かせないポイントもあるため紹介する。
ポイントを意識すれば、クレーム対応の時間も減らせるはずだ。クレーム対応が長引くと、他の問い合わせを待たせることになる。取次までに時間がかかると、他の顧客の怒りを大きくしてしまう。
その状態が常態化すると、社員のモチベーションが削がれ、社内の士気が下がってしまう。顧客の不満を大きくしないためにも、電話応対研修やコールセンター向け電話応対研修、社内での勉強会などを実施し、正しい流れとポイントを抑えて、効率よくクレーム対応をしていただきたい。
基本的な対応は知っておくべきだが、会社としてさらにクレーム対応を効率化するために、IVR(自動音声応答サービス)も活用して専門の担当者にすぐにつなげる仕組みも有効だろう。そうすることで、「用件のたらい回し」を最小限にすることも可能だ。(参考:株式会社電話放送局)