社会人として身に付けておきたいスキルの一つにビジネスマナーがある。ビジネスマナーはただ学ぶだけではなく、実行できるかどうか(行動に移せるか)が重要だ。
本記事では、ビジネスマナーに関する4つのポイントを解説していく。企業の研修担当や人事の方については「自社のビジネスマナーに関する教育体制に、これらが含まれているか」をチェックしてもらう意味でも活用してほしい。
目次
ビジネスマナーとは、「ビジネスシーンで関わる人が、お互い気持ちよく円滑に仕事を進めるための礼儀作法」のことだ。
挨拶や正しい敬語・お辞儀の角度・お茶の運び方・上座下座を覚えるもの、と間違って捉えられてしまいがちだが、スキル取得を優先することは本質的ではない。
マナーの前提には「相手への思いやり」「相手の立場に立った対応をすること」があり、その上でスキルを積み重ねていく。ということを研修冒頭で理解してもらうことが良いだろう。
そうすることで、基本のマナーは理解しつつもその場・その相手に対して適したマナーで行動や発言をすることができるようになる。
社内で研修を実施する場合も、外部に研修を依頼する場合もこの前提について研修冒頭で触れられているかどうかをチェックしたい。
ビジネスマナーを習得させるためには、研修を実施することが効果的だ。
そこで、ビジネスマナー研修として、扱いたい内容を一つずつ紹介していく。社内・社外どちらで研修を実施する際にも押さえておきたいポイントだ。
どの業種や職種であっても外せないものがマナーの五原則だ。マナーの五原則とは以下の5つのことだ。これらについて一つずつ説明を行い、ワークやロールプレイを通して実践していくことでスキルを身に付けるような内容が望ましい。若手~中堅社員などに実施する場合も「今の自分ができているか」を振り返るよい場となるため、飛ばすことなく実施していきたい。
挨拶をすること、というと当たり前のように聞こえるが「毎日挨拶をし続けること」「仕事に追われていたとしても、来客や上司に対してきちんと挨拶をすること」を継続し続けるためには意識が必要だ。特に、ここ2~3年の新入社員については大学生活の半分以上をリモートで過ごした方も多くいる。目を見て挨拶をすることや、毎日継続すること、相手に届くような声の大きさで行うことなどを伝えていくことが効果的だろう。
身だしなみとおしゃれは異なり、ビジネスシーンに合わせた身だしなみが求められることをここでマインドセットする。
また、初めのうちはリクルートスーツだった新入社員も、5月以降になるとビジネスカジュアルな格好が許可される企業も多い。「ビジネスシーンにおいて適切な身だしなみは何か」を理解しておくことで、その時になって慌てることがない。チェックリストなどを活用して、ペアでチェックし合うようなワークがあると良いだろう。
なお、年次が上がるに連れて指摘しづらいのも身だしなみだ。指摘したくてもハラスメントと受け取られるのではということを危惧する管理職も少なくない。研修やセミナーという場で身だしなみチェックを取り扱うことで、本人に身だしなみを正すよう間接的に伝える効果が期待できるため、扱いたい内容だ。
新入社員研修で「何を学びたいか」「何が苦手と感じているか」を研修冒頭でヒアリングすると、本人たちから言われる上位が「正しい敬語の使い方を覚えたい」というものだ。
学生時代はなんとなくで使ってきた敬語が社会で通用するのかを不安に覚える方も多い。
そのため、研修内で扱いある程度の練習をしておくことが望ましいだろう。
ただし、敬語については研修を1回受けただけでマスターするということは難しいものであり、職場や社外の相手との会話で使っていくことで磨かれていくものである。そのあたりも話しつつ基礎を学べるような内容が良い。
敬語や言葉遣いの中でも特に扱ってほしいものは以下の項目だ
ビジネスマナーとして、社内・社外問わず相手への態度が適切である必要がある。それは自身がいくら忙しくしていても同じだ。職場での態度を正すという基本的なことも扱っていきたい。
また、接客をメインとする業種においては「お客様に常に見られていることを意識して働く」といった面でも学びを深めていくと良いだろう。
新入社員の中には、受話器のある電話機の操作に慣れていない方もいる。
そのため、研修で「電話の受け方」「かけ方」を扱うことを推奨する。
ただ電話を取って話すだけではなく以下のようなポイントを確認しながら行うことが良いだろう。
また、場合によってはクレーム電話への対応方法についても扱うことがある。特に電話業務を多く行う部署などでは実施したい部分だ。
新入社員については、LINEやInstagramのDMなど短文でのやり取りに慣れている方が多い。
ビジネスメールのように文章を構造的に相手にわかりやすく書くということには苦手意識を持っている場合もあるため、基本を学んだ後はワークで実際にメールを作ってもらい、添削をするなどが良いだろう。
メールの添削は講師が行うことが理想だが、受講者が多い場合はペアになってお互いのメールを添削し合うなどで対応したい。
来社されたお客様への対応が適切にできるかどうか、お客様を待たせないように対応ができるかなどを学んでいくことが良いだろう。
企業の方針にもよるが、基本的には来客が優先だ。せっかく自社に足を運んでくださった方に対して、目的の方や会議等に参加するまでの間を気持ちよく過ごしてもらうことが良い。そのために相手の立場に立った対応をマナーを踏まえて学んでいく。
また、営業など訪問・商談を行う業種の方に対しては、訪問時のマナーについても扱うことをおすすめする。営業新人研修の中に一部取り入れる形でも良いだろう。いきなり一人で訪問させることは少ないだろうが、同席する先輩社員にイチから教えてもらうことは負担にもなる。訪問時に注意したいことについても扱いたい。
ビジネスマナー研修を依頼される企業様のほとんどが、特に新人に向けて「名刺交換を実施してほしい」というニーズが多い。
自社で研修をされる場合も、外部研修会社に依頼する場合も名刺交換については研修で一度触れておくことが良いだろう。もちろん、1回の研修や研修内のロールプレイをしたからスムーズにできるかといったら難しいものがある。ただし、これも上司と同じで「基礎をある程度学んでいることで、現場の先輩社員がイチから教える負担を軽減できる」という効果がある。
実際の名刺が用意できていない場合は、白紙のカードを配って実施することも良いだろう。数人と名刺交換をしてもらうワークを取り入れることで、やり取りの流れや複数人との交換についてもある程度慣れてくる。
ビジネスマナーは研修を通して学ぶことがほとんどだ。もちろん独学で学ぶことも問題はないが、名刺交換や電話応対の練習などは一人では対応できない。また、接遇マナーは「自身でできている」と思っていても、それが伝わっていなかったり不十分である場合も多い。そのため、社内外問わず研修という場でロールプレイングやワークを交えながら学ぶことがおすすめだ。
ビジネスマナー研修以外にも、接客業に特化している場合は接遇マナー研修やホスピタリティ研修を受講してもらうことも良いだろう。本記事を作成しているリスキルでも研修を提供している。ぜひリンク先より内容を確認してほしい。
ビジネスマナー研修で扱ってほしい内容を紹介してきた。上記全てを実施することが理想だが、時間的に難しい場合は以下の対応などが良いだろう。
特に新入社員に向けての研修では「内定者時代の様子をよく観察しておく」「内定者やインターン時を振り返り、研修として実施すべき内容を選ぶ」など前もっての準備が必要だ。直前になって慌てることがないよう、内定式をすぎたあたりにはある程度来年度の新入社員に向けて行うビジネスマナー研修の内容を精査しておきたい。
また、内定者にはあらかじめ、ビジネスマナー研修を学んでおいてもらうのも良い。例えば以下のようなビジネスマナーをまとめたページなども有効だろう。
※参考:これで安心、社会に出てから役に立つビジネスマナー