新入社員の中には、入社間もないのにも関わらず会社を辞めたいと思うケースがある。その理由として、新入社員と会社側のミスマッチが挙げられる。
たとえば入社前に描いていた理想が、入社後に崩れてしまうと新入社員は辞めたい気持ちになってしまう。ミスマッチを防げれば入社前後のギャップが減るため、退職率の低下につながる。
そこで今回は新入社員が辞めたいと思う理由を紹介したあとで、ミスマッチを防ぐ方法について解説する。
目次
はじめに、新入社員が辞めたいと思う主な理由を4つ紹介する。
人間関係への不満は、新入社員が辞めたいと思う理由の中で上位だ。同じ部署の上司や同僚との仲が悪くなるケースもあれば、違う部署内の従業員と関係性が悪くなるケースもある。人間関係のストレスが起こる理由は主に以下の2通りだ。
パワハラやセクハラなど、ハラスメントの被害に遭って不満が起こるケースだ。悪気がなくハラスメント行為が行われており、社内でハラスメントの相談をしても取り合ってくれない場合もある。
また、ハラスメントの被害に遭った方の中には、自分が被害に遭っていることを知られたり、周囲に迷惑をかけたりしたくないという理由で、誰にも言えないストレスを抱え込むケースもある。
社内に相談できる人がいないのも、不満が起こる原因になる。「自分の仕事が忙しくて、相談の時間をとってもらえない」、「面倒だから話を聞いてくれない」という状況だ。
社内で孤立した状態に陥り、ストレスを抱え込む原因になってしまう。
事前に提示された勤務内容と実態が異なることで、新入社員が辞めたいと思う場合もある。既存の社員では当たり前のことでも、新入社員にとってみれば想定外であることを認識すべきである。確認も意味もふまえ、3つの例を紹介する。
残業は0~5時間と説明を受けたのに、入社してみると数10時間の残業があるといった状況だ。
毎週2日休日があると聞いていたのに、入社してみると休日出勤や研修などによって休日を確保できないケースもある。ワークライフバランスを大事にしている新入社員は、辞めたいと思ってしまう。
在宅ワークができると思い入社したのに、蓋を開けてみると出社ばかりになっていたケースもある。満員電車に乗ったり自宅から通勤したくないと思ったりしていた新入社員だと、会社を辞めたい気持ちが高くなってしまう。
昔は求人票と実態が異なっていても、耐えるのが当たり前だったかもしれないが、新入社員には通用しない。改めて認識を変える必要がある。
たとえば求人票に載っている給与額が手取り額と同じだと勘違いしていた場合、給与が思っていたよりも低かったと新入社員は思ってしまう。
求人票に載っている給与支給総額は、あくまで社会保険などの税金が控除される前の金額だ。これを知らずに入社してしまうと辞めたいと思ってしまう。
一生懸命仕事をしているにも関わらず、上達しないという理由で辞めたいと思うケースもある。理想と現実のギャップに苦しんで、気持ちに余裕がなくなってしまう新入社員も存在する。このような新入社員は仕事を続けるのが苦しくなり、辞めたいと思ってしまう。
ここまで説明したように新入社員が辞めたくなる原因は人・働き方・お金のいずれかに当てはまることが多い。冒頭説明したように新入社員を辞めさせないためには、会社とのミスマッチを防ぐことが大切だ。新入社員とのミスマッチを防げれば、入社後に理想と現実のギャップが小さくなり、辞めようと思う気持ちは減る。以下の5つの方法を紹介する。
社内の事情や業務に関することを聞ける機会が増えて、ミスマッチを防ぎやすくなる。質問や相談をしやすい環境を作ってあげると、より話しやすくなる。
仮に新型コロナウイルスの影響で場所を借りられない場合は、オンライン上で懇親会を開く方法がある。Zoomやskypeなどを利用すれば、同じ場所に集まっていなくても懇親会を開催できる。会場代も発生しないため、費用を抑えたいときにおすすめだ。
ただしオンラインでは、通信環境が悪かったり盛り上がりにくかったりして、懇親会としてのできが悪くなってしまう恐れがある。そのため、準備に時間をかけた方がいい。
インターンシップ制度とは会社に対して興味を持っている大学生などを対象に、仕事をしてもらうことだ。参加者はインターン生と呼ばれ、社内の仕事をこなしていく。インターン生は入社前に社内の状況を見たり、社員と話したりできるため、ミスマッチを防ぐのに役立つ。
インターンシップの期間は、数日間の場合もあれば数カ月間継続することも可能だ。それもあり、学生側もインターン先は慎重に決めているため、長期インターン採用のサービスを利用してみることもいいだろう。
なおインターンシップ制度を活用するときは以下3つのことを意識すると、より充実したものになる。
インターンシップを開催した意図を、会社の理念や状況を盛り込みながら参加者に伝えるといい。その内容を聞いて興味がある方は入社をしたいと思うし、そうでない方は入社をしようと思わなくなる確率が高くなる。よって入社後のミスマッチを防ぐうえで効果的だ。
積極的にコミュニケーションをとるようにするのも大切だ。インターンシップは、参加者に仕事をしてもらえばいいわけではない。社員と交流し自分の理想と合っている会社か、判断をしてもらう場でもある。
単に1人で作業をさせるだけではなく、社員の話を聴く時間を設けて、社内の情報を知ってもらう機会を作るといい。1日の過ごし方や業務スケジュールなど普段の様子を話してもらう時間を作り、働き方をイメージしてもらえば、より一層ミスマッチを防げる。
インターンシップの参加者の中には、社会経験をしたことがない人もいる。参加者の中には、強い口調で言われたり、大きな声を出されたりすると驚く場合がある。社内の中では当たり前のように行われていることでも、インターン生にとっては不快に感じるケースもあるため注意が必要だ。
メンターとは、新入社員(メンティー)に対してアドバイスをくれる助言者だ。基本的には新入社員と社歴が近い社員がメンターにつき、質問や相談に対して答えてくれる。直属の上司がメンターになることも少ないため、普段話しづらいことを相談したいときにも役立つ。ただしメンター制度を活用する場合、3つの注意点がある。
メンティーとの相性が良いメンターを用意しよう。相性が悪いと場の空気感が悪くなってしまい、コミュニケーションをとりづらくなる。それを防ぐためにも、メンティーと相性の良いメンターを用意すべきだ。
会社によっては相性の良い人材をメンターにするため、心理テストを実施させるケースもある。新入社員とメンターがうまく関わる確率を上げるためにも、実施すべきである。
メンターの質にバラツキがあると、新入社員の感じ方も変わってしまう。仕事に対するモチベーションを高めるメンターもいれば、そうではないメンターもいる。
そのようなバラツキを解消するためにも、メンターの質をそろえることが大切だ。社内でメンターに関する研修や勉強会をすれば、質を統一しやすくなる。
メンターによっては、会社の価値を落とす発言をするケースがある。たとえば「長く働く場所ではない」「退職したいと思っている社員が多い」といった形だ。
仮に冗談半分で言ったとしても、本気に受け取ってしまい退職する新入社員がいるかもしれない。その状況を防ぐためにも大切だ。
管理職のマネジメントスキルを向上させる理由は、新入社員の管理をしっかりと行うことで、退職する確率を下げられるためだ。
マネジメントでは新入社員の現状を把握したり、働きやすいようサポートしたりするが、これらはマネジメントスキルがないと難しい。ちなみにマネジメントスキルを上げる方法は以下の3通りだ。
新入社員と関わる機会があるため、コミュニケーション力を高めることが大切になる。以下のスキルを意識しよう。
自分が話したいことだけを伝えても、新入社員に理解してもらわなければ意味がない。よって相手へ分かりやすく伝えるスキルが必要となる。言葉をかみ砕いたり、別の言葉に置き換えたりすれば新入社員に理解してもらいやすくなるため、コミュニケーション力アップにつながる。
相手の話を聴くスキルを身につければ、相手の心情を知るときに便利だ。それに合わせて話すことを意識すれば、相手が求めている話題を提供しやすくなる。結果、会話が盛り上がってコミュニケーションをとるのが楽になる。
会話の中で新入社員に指示する場面もある。そのときに必要となるのが交渉するスキルだ。このスキルが低いと指示を出したときに、新入社員が言うことを聞いてくれなかったり、先輩社員に対して嫌な気分になったりする恐れがある。
逆に交渉するスキルが高ければ、嫌な気持ちを持たずに言うことを聞いてくれる可能性が上がる。結果、新入社員とのコミュニケーションも楽になるのだ。
意思決定力を高めれば、自分でマネジメントの方法を決められるようになる。たとえば新入社員が退職しないようにマネジメントをしたいと思っても、それに対する意思が決まっていなければ行動できない。自身のマネジメントをスムーズに進めるためにも、意思決定力は必要と言える。
問題解決力を高めれば、どのようなマネジメントで問題を解決すればいいか分かるようになる。一方問題解決力がないと、新入社員に対して起こった問題をどのようにマネジメントして解決すればいいか分からなくなるため、マネジメントに支障をきたしてしまう。
適正な労働時間になるよう見直すのも、新入社員を辞めさせないために大事だ。労働時間が長いと新入社員がやる気を失せてしまい、退職する方向へと進んでしまう。
たとえば厚生労働省では、「労働時間等見直しガイドライン」と呼ばれる資料を作っている。この資料には、労働時間を見直すときのポイントや注意点などが載っている。参考にしながら労働時間を見直すと、日本で理想とされている労働時間に近づけやすくなる。
入社後に研修するだけで、あとは配属先にお任せするのではなく、新入社員フォローアップ研修などで同期が一堂に会する機会を設けてあげることも良いだろう。
横のつながりを重要にすることで「自分ももっと頑張ろう」とモチベーションを高めることに繋がる。また、同じような問題をすでに解決している同期もいることが多く「どうしたら解決したか」などを話す良い機会となる。
新入社員が辞めたいと思う理由は人によって違う。相手がどんな理由で会社を辞めたいと思っているのか見極める必要がある。ちなみに新入社員が辞めたいと思う理由は、主に以下の4通りだ。
1.人間関係への不満
2.事前に提示された勤務内容と実態が異なる
3.給与が思っていたより低かった
4.仕事が上達しない
新入社員が辞めたいと思う理由は、上記のように人・働き方・お金のいずれかに当てはまることが多い。新入社員を辞めさせないためには、会社とのミスマッチを防ぐことが大切だ。以下の5つの方法を使うといい。
1.入社前に懇親会を開く
2.インターンシップ制度を利用する
3.メンターをつける
4.管理職のマネジメントスキルを向上させる
5.適正な労働時間になるよう見直す
6.フォローアップ研修など、定期的に学びの機会を設ける
このようにミスマッチを防ぐ機会を作っておけば、入社後に新入社員が辞める確率を減らせる。有能な人材を外に出さないためにも、ミスマッチを防いでもらえると幸いだ。
社員が仕事を辞めたいと思う理由や「辞めどき」と判断する基準について、こちらの記事でも詳しく紹介されているので、是非あわせて読んでみてほしい。
→ 仕事を辞めたいと思う理由TOP10とは?対処法と辞めどきの判断基準