コンプライアンス研修は様々な企業で実施されているものの、研修のテーマは企業によって異なる。コンプライアンスの大枠に焦点をあてるケースもあれば、特定のジャンルを取り上げて研修を行うケースもある。そのため、コンプライアンス研修を実施するときのテーマ決めは大切だ。
そこで今回はコンプライアンス研修の概要を解説しながら、テーマ例を紹介する。
目次
コンプライアンス研修とは、ルールを守る大切さを教える研修だ。そもそもコンプライアンスとは、日本語で「法令順守」と訳される言葉である。法律や法令、社内で独自に定めている社内規則や社会通念上必要とされる倫理観などを守ることを指す。
実際、企業の中にはコンプライアンス違反が横行しているケースもあるので、コンプライアンスを学ぶことは大切だ。しかし、コンプライアンスには様々な項目があるため、独学で勉強するのは厳しい。研修を受講した方が、効率的に学ぶことができる。
コンプライアンス研修を行うメリットを4つ紹介する。
社会人として何のルールを守るべきか分かるようになる。仕事をする場合、様々なルールを守らなければならない。しかし社員の中には、ルールを知らなかったがためにコンプライアンス違反をしてしまう場合がある。
リスクを意識できるようになれば、慎重に行動することができる。計画性を持って行動したり、攻めと守りどちらに軸を置くか考えたりなど、物事を慎重に判断することを覚えていくきっかけになる。
コンプライアンスは毎年更新されるものの、企業の中には世間の流れについていけず、数年前の常識で止まっているケースがある。この状況になってしまうと、会社内外で価値観が合わなくなる可能性がある。
しかしコンプライアンス研修を受講させれば、今現在のコンプライアンスに対する見方が分かる。よって世間とのズレを確認するツールとしても活用できるのだ。
コンプライアンス違反による、企業のブランドダウンを防げるのもメリットだ。コンプライアンスを守れば、企業ブランドは下がりにくい。
世間の大半はコンプライアンスを守っていれば肯定的に見てくれる。自社評価を下げないためにも、コンプライアンス研修を受講させるのは大事だ。
ここではコンプライアンス研修の「テーマ決めから実施するまで」のステップを3つに分けて紹介する。
社内で話題性のあるテーマを書き出す所からスタートだ。社内の問題点や勤務体制・業種や規模感などを考慮して、テーマを決めていく。
会社にとってプラスとなるテーマで研修を実施しなければ、コストと時間の無駄になってしまう。効果的な研修にするためにも、社内にとって必要なテーマを書き出すべきだ。
全社員に、同じテーマのコンプライアンス研修を受講させるのは控えた方がいい。人によって立ち位置や役職が異なるためだ。したがって、テーマごとに参加対象者を決めるべきだ。
たとえば部下を抱えていない社員が、部下にコンプライアンスを守らせる研修を受講させても、業務上必要となる場面は少ない。この状況を引き起こさないためにも、テーマごとに参加対象者を決めた方が良いのだ。
どのような形式で実施するか決めるのも大事な工程だ。
上記のように決める内容は、いくつも存在する。ちなみに最適な形式は研修のテーマによって異なるため、慎重に決めた方がいい。
コンプライアンス研修のテーマを決めるときのポイントや注意点を4つ紹介する。
自治体によっては、コンプライアンスに関する情報が発信されている場合がある。たとえば法律の変更点や新たにできた条例などだ。これらを把握していないと、古いデータのまま研修を行ったり、新しい情報を何も共有せずに研修を行ったりしてしまう。常にデータを更新し続けることで、新鮮味のある研修を提供できるのだ。
様々な媒体の資料を参考にするのも大切だ。多くの媒体の情報を参考にすると、情報量がたくさん集まってくる。万が一同じ情報が載っていたとしても、内容を見比べることでフェイクニュースを見極めるのが楽になるかもしれない。偏った情報収集をしない意味でも、大切だ。
仮に内容が同じであっても、参加対象者によってテーマを変えるのも大事だ。「新入社員向けに実施するときは、言葉を簡単にしてテーマを分かりやすくする」、「横文字が苦手な方が多かったら、日本人に聞き馴染みのある言葉を使う」といった形だ。
テーマ名だけで研修に対する印象が決まってしまうこともあるため、名称の付け方には気を付けるのがいい。
レベルが高い内容をテーマにすると、参加者が苦痛に感じてしまうため注意すべきだ。仮に難易度が高いものをテーマ設定するにしても、かみ砕いて分かりやすい名称にした方がいい。ハードルが下がって、参加しやすくなるはずだ。
コンプライアンス研修のテーマと言っても様々だ。最後にテーマ例を紹介する。
ハラスメントの種類や起こる理由、起こさないためのポイントなどを紹介する研修だ。数年前までは何も注意されなかった言動や行動でも、ハラスメント認定されることもある。気が付かないうちにハラスメントの加害者になる場合もあるため注意が必要だ。
ハラスメントの常識は日々変わる。加害者・被害者ともに減らす意味でも、大事なテーマだと言える。
SNSの扱い方や投稿内容などに関する研修もある。現代ではSNS投稿で自社のアピールを行う場所も増えてきている。しかしルール違反した状態で投稿し拡散されてしまうと、会社の価値が落ち、仕事に支障をきたす。SNSをPRのツールとして使用する企業は、覚えておいた方がいい。
個人情報保護や、社内情報の漏洩防止などの情報セキュリティに関する研修だ。時々、会社で保管していた個人情報が漏れたというニュースが流れている。会社で管理している情報が漏れてしまうと、対象の顧客に連絡をする業務が発生したり、会社の信頼を失ったりなど、様々な面で影響が出てしまう。
それを防ぐために、個人情報の取り扱い方やセキュリティソフトの知識など、情報セキュリティ関連の知識を習得する研修となっている。
コンプライアンスを守りながら働く方法について考える研修もある。会社員の場合、労働基準法と呼ばれる法律が定められているものの、無視する企業も存在する。
たとえばサービス残業をさせたり、違法な休日出勤をさせたりするのはコンプライアンス違反の代表例だ。会社の中には常態化していて、コンプライアンス違反だと気付かないケースもある。その状況をつくらせない意味でも、必要な研修だと言える。
著作権や肖像権など、権利に関する研修も存在する。たとえば他社が撮影した写真を、無許可で自社のホームページに載せると、著作権法違反で訴えられる可能性がある。事例によっては、数百万円~数千万円の賠償金を命じられてしまう。権利を侵害しないためにも、大事な研修と言える。
社内で不祥事を起こさないための研修も準備されており、不祥事が起こるメカニズムや予防の仕方などを教わる。
とくに管理職は複数の部下がいるため、覚えておいた方がいい。部下との関係性のつくり方やミーティングの仕方も理解していくため、コミュニケーションをとることが苦手な方にも最適な研修だ。
コンプライアンスを違反しない社風づくりに関する研修だ。社風とは企業の価値観や文化などをテキストベースで示したものだ。社風のつくり方や盛り込む内容・重要性などを理解していく。
仮にコンプライアンス違反が多い企業だった場合、社風をつくり変えることで社内改革が起こりコンプライアンスに力を入れる企業になるかもしれない。企業の体制を一新する意味でも必要だ。
リスクマネジメントを中心に進めていく研修だ。リスクマネジメントとは、前もって起こり得るリスクを予想し、そのときに起こる損失を回避したり減らしたりするための行動を指す。
たとえば「法律が変わるため事業転換しなければならない」、「コンプライアンスを守れていなかったため、いち早く謝罪をしてダメージを抑える必要がある」といった内容が、リスクマネジメントに該当する。会社を守る意味でも、必要なテーマだと言える。
ルールを守る職場にするための研修もある。これは各社員にコンプライアンスの意識を持たせて、それを実践に活かしてもらうための研修だ。コンプライアンスが必要な理由や、守らなかったときに想定されるリスク・人間がルールを守れない理由などについて理解していく。
不祥事を起こさないための仕組みづくりや、上司の接し方などについても知れるため、コンプライアンスを犯さない会社にするのに最適だ。
社内通報とは、従業員が社内の不正を通報することだ。このテーマでは社内通報が大事な理由や、社内通報専用の窓口を社内に設ける注意点などについて知れる。社内で不正が起こっても周囲の圧力で言えないケースもあるが、それによって会社が暴走する恐れがある。
放置してしまうと会社の経営が良からぬ方向にいき、経営が傾いてしまうかもしれない。「気付いたときには遅かった」という状況にしないためにも、社内通報に関するテーマの研修も大事だと言える。
適当にコンプライアンス研修のカリキュラムを組んでしまうと、研修の質が下がってしまう。その状況を回避するためにも「テーマ決めから実施」までのステップは、以下の3つの手順で踏むといい。
1.コンプライアンス関連で話題性のあるテーマを書き出していく
2.テーマごとに参加対象者を決めていく
3.実施形式を決める
手順をしっかりと踏めば、コンプライアンス研修の質を落とさずに済む。ただし、ひと口にコンプライアンス研修と言っても、様々なテーマが用意されている。
1.ハラスメントに関するテーマ
2.SNSに関するテーマ
3.情報セキュリティに関するテーマ
4.働き方に関するテーマ
5.権利に関するテーマ
6.社内で不祥事を起こさないためのテーマ
7.社風づくりに関するテーマ
8.リスクマネジメントに関するテーマ
9.ルールを守る職場づくりに関するテーマ
10.社内通報に関するテーマ
テーマは様々だが、参加者の立ち位置や社内の状況によって最適なテーマは異なる。役に立たないテーマを選んでコンプライアンス研修を行っても意味がない。
企業が抱えている課題を解消したり、社員を成長させたりするテーマを選ぶべきだ。ぜひテーマを吟味して、コンプライアンス研修を実施していただければと思う。