チームとしての成果を挙げるには、社員に様々なスキルを習得させる必要がある。スキルを習得させる方法は様々だが、なかでも「ビジネススキル研修」は多くの企業で実施されている。
しかしコツを抑えなければ、効果を挙げるのは難しい。そこで今回はビジネススキル研修の概要を解説しながら、目的や手順・ポイントについて紹介する。
ビジネススキル研修とは、仕事上で必要となるスキルを習得させることだ。様々な種類の研修が存在するため、ケースバイケースで内容を変えていく。たとえば、以下のような研修がある。
新入社員向けに行う研修で、会社員として必要なスキルを習得させる。社会人として必要なマインドや会社の存在意義、業務の進め方や会議に参加するときの心構えなど、働く上で必要なことを教え込む。
コミュニケーションスキルを高める研修だ。相手との信頼関係を構築する方法や、上手に主張する方法など、コミュニケーションに関するスキルを習得させる。
こちらも社会人基礎研修と同じく新入社員向けに行う研修で、ホウレンソウの概要や重要さを伝える。ホウレンソウを怠った状態で業務を進めると、失敗を引き起こす原因になってしまう。よって実施すべき研修だと言える。
自身の伝えたい内容が相手に理解してもらえるよう、プレゼンテーションの仕方を習得させる。組織で働いていると、上司に業務の進捗状況を報告したり、プロジェクトの概要を話したりする場面は多い。プレゼンテーション能力が劣っていると、相手へ上手く伝えられず、仕事に支障をきたしてしまう。意思疎通をスムーズに行う意味で、多くの社員に必要な研修だと言える。
物事を論理的に考えるスキルを習得させる。物事の本質が分かったり、問題を解決できたりする力が身につく。
自身が抱えるストレスと上手に付き合うスキルを習得させる。ストレスを解消できない状況だと、精神的に滅入ってしまい仕事に支障をきたす。その状況をつくらないために必要だ。
一部の社員にのみ有効な研修もあれば、全社員に行った方が良い研修も存在する。そのため、勢いで研修の内容を決めてはいけない。
ビジネススキル研修を実施する目的は以下の通りだ。
ビジネススキル研修を実施すれば、仕事の考え方を見直すきっかけになる。それが仕事のモチベーションを高めることになり、仕事の精度を上げるのにもつながっていく。
ビジネススキルを習得すれば、習得したスキルを活かしながら業務を進められる。それによって戦力アップとなり、ロジカルでかつ効率的に仕事を進める力が身につく。この能力が手に入れば、今までと比べて業務が短時間で終わったり、要領よく仕事を進めたりできる。
万が一仕事上のトラブルが発生しても、解決に至るまでの時間が短縮されるため、イレギュラーに割く時間も減る。そのため、余分な人件費をカットするのに役立つ。
ビジネスにおいて、必要なコミュニケーションスキルを磨く目的もある。仕事では取引先の担当者・顧客など、人と関わるケースが多い。コミュニケーションのとり方が上手ければスムーズに仕事が進むが、下手だと仕事はストップしてしまう。営業職はもちろんのこと、それ以外の職種の社員にもビジネススキル研修は必要だ。
ビジネススキル研修を行うと言っても、正しい手順で行わなければ効果は発揮されない。以下の手順で行うと良いだろう。
社員に習得させるスキルを決めていく。その理由は、社員によって必要なスキルが異なるためだ。スキルを決めるときは、以下のことを考慮するといい。
仮に事務職であれば「エクセルやワードのスキル」。技術職であれば「製品を組み立てるスキル」と言うように、仕事上必要となるスキルを考えていく。
社歴も大事な要素となる。同じ業務内容の社員でも、入社1年目と5年目の方では身についているスキルの状況は違う。よって、社員の経験も考慮しながら習得させるスキルを決めた方がいい。
時間は有限であるため、全てのスキルを研修で身につけさせるのは難しい。スキルに優先順位をつけることで、研修のカリキュラムを組みやすくする。緊急性と重要性が高い内容であれば優先順位を高くし、低い内容については優先順位も低くすると良い。すると、どのスキルを習得させるべきか、自然と浮かび上がるはずだ。
カリキュラムに沿って研修を実施する。研修を実施するときは、以下のことに注意すると良い。
短時間で研修を終わらせたいからと言って、1回の研修で様々な内容のスキルを習得させようとするケースがある。しかし詰め込み型の研修を実施しても、受講者が吸収できるキャパは限られている。よって、詰め込み型の研修を行うのは良くない。
実施したい内容が多い場合は、いくつかのセッションに分けて行うと吸収しやすくなるだろう。
講師のペースで研修を進めても、社員が理解できていなければ意味がない。したがって社員が理解できているか、様子を見ながら実施することが大事だ。
「分からない箇所がないか定期的に聞いてみる」「社員の反応を見ながら進めるペースを変える」といった形で講師から声をかけてあげると、社員の意思表示が分かりやすくなっていいだろう。
講師が話している内容を受講者が聞くばかりだと、眠くなってしまう恐れがある。すると、研修の内容を聞き流すことにつながってしまう。しかし受講者参加型の研修を実施すれば、全参加者が発言したり考えたりするため、眠くならずに済む。
代表的なものとして「グループワーク」「グループディスカッション」「ロールプレイング」などが挙げられる。
運営側ではなく、受講者の満足度を高める研修を実施することも大事だ。「懇親会を入れて社員同士の交流を活発にする」「社員の意見をくみ取って、研修の進め方を変える」といった形で、受講者の立場を考えながら研修を行うといい。
事前に受講者が研修に対して何を期待しているか把握すれば、それを考慮しながら研修を進めていける。そのため、満足度を高めるのも楽になるはずだ。
研修が終わったら毎回、効果を測定するのも大事だ。効果を測定するときは、以下の方法が用いられる。
受講者全員にアンケートをとり、その内容をチェックしながら効果を測定する。アンケートに記入された内容を見れば「内容を理解できているか」「研修に対する印象が良いか」などが分かってくる。
なお設問を考える際は、選択式と記述式をバランスよく織り交ぜるといいだろう。
テストを実施して、効果を測定する方法もある。テストの正答率などによって、社員にどのくらいのスキルが身についているか分かる。筆記テストや実技テストなど様々な方式があるため、状況に応じて仕方を変えてみるといいだろう。
最後にビジネススキル研修のポイントを紹介する。
習得したスキルを、実践で活かしてもらわなければ意味がない。したがって、その場限りの研修にしないことが大事だ。その状況をつくるには、習得したスキルを活かせる場面を設けることが重要になってくる。
活かせる場があれば、必然的に研修で習得したスキルを活用することになるため、その場限りの研修にはならない。このように、研修で習得したスキルを使わざるを得ない場面をつくっておくことが重要だ。
OJTでは実務を通じて、マンツーマン指導で技能スキルを習得させていく。一方OFF-JTでは現場以外の場所で講義や座学を実施しながら、知識を習得させる。
この2種類の教育を織り交ぜることで、技能面・知識面ともにビジネススキルが身についていく。なお、この2つの教育方法を用いるときは、以下のことを意識すると良い。
OJTを実施するコツは、トレーナー選びだ。トレーナーを選ぶときは、2つのことを意識すると良い。
相性が悪いと、教わる側が素直に動かない恐れがある。トレーナーの指導方法が良くても、教わる側に受け入れてもらえなければ意味がない。教わる側が意欲的に学べる環境をつくる意味でも、相性をチェックしてからトレーナーを選ぶべきだ。
いくら相性が良くても、一定のスキルを持っていなければOJTは失敗する。そのため、トレーナーを採用するときの基準を設けて、それに達している方のみ採用すべきだ。
OFF-JTのコツは、短いサイクルで1コマのタイムスケジュールをつくることだ。なぜなら社員が集中できる時間が決まっているためだ。1日中同じ内容の研修を行ったとしても、集中してずっと聞いてくれるわけではない。睡魔が襲ったり、気が散ったりなど様々なことが起こる。
受講者の集中力が途切れた状態でOFF-JTを行うと、真剣に話を聞いてもらえなくなる。結果、聞き漏らす時間が増えてしまう。その状況をつくらないためにも、タイムスケジュールは細かく設定すべきだ。
特定のジャンルに偏ったスキルを習得させると、会社が不利益を被ってしまう恐れがある。たとえば「技能スキルばかり磨きすぎて、社会人として必要なスキルが全くない」「専門スキルを磨いたものの、基礎スキルを得ていないため仕事の要領が悪い」といった形だ。
この状況が起こると、狭いジャンルでしか活躍できない社員になってしまう。社員に様々な場面で活躍してもらいたいのであれば、様々なジャンルをバランスよく習得させた方がいい。
社内で通用する人間にならないと、会社員として成果を挙げるのは難しい。そのような社員を増やすにはビジネススキル研修を行って、必要なスキルを習得させる環境をつくることが重要だと言える。それによって仕事への考え方が変わったり、様々な部署で通用するスキルを習得できたりする社員が増えれば、チームとしての成果を挙げやすくなる。
しかしビジネススキル研修は、正しく実施しないと効果を発揮させるのは難しい。そのため、以下のように正しい手順で実施することが大事だ。
ひと口にビジネススキル研修と言っても、コミュニケーションやプレゼンテーション、ホウレンソウなど様々な種類の研修がある。したがって、その社員に必要なスキルを見極めて研修の内容を決めることが不可欠だ。
とは言っても手順に沿ってビジネススキル研修を行うだけでは不十分だ。ビジネススキル研修を成功させるポイントもあるため紹介する。
これらのポイントを抑えれば、ビジネススキル研修の効果は挙げやすくなるだろう。社会では様々なスキルが要求される。要求されるスキルに答えられる社員が多いか、答えられない社員が多いかでチームの成果が変わってくる。社員の戦力をアップさせるためにも、ビジネススキル研修に力を入れていただければと思う。